目次
第1章 「メタバース×地方創生」ビジネスの未来予想
1 「メタバース×地方創生」とは?
2 「メタバース×地方創生」の実例
3 「メタバース×地方創生」ビジネスの未来
第2章 「メタバース×地方創生」ビジネスと法律
第3章 「メタバース×地方創生」ビジネスに関連する法的課題
1 参加者同士のトラブルの問題
2 街並みの再現における著作権侵害の問題
3 メタバースにおけるプライバシーの問題
4 アバターの容姿を巡る問題
5 その他
第4章 ビジネスの成功のために弁護士ができること
第1章 「メタバース×地方創生」ビジネスの未来予想
1 「メタバース×地方創生」とは?
メタバースとは、「超越(meta)」と「世界(universe)」を組み合わせた造語で、「インターネット上に構築された3Dのバーチャル空間」のことです。自宅にいながら、バーチャル空間に入って、様々な世界を楽しむことができます。
メタバースは、地域の魅力を3D映像で発信したり、人と人との新たなつながりを生み出したりすることができ、「地方創生」との親和性が大きいです。
2 「メタバース×地方創生」の実例
メタバースを活用した地方創生の仕組みは、すでに様々な地域で実現に至っています。参考に、(すでに終了したものもありますが)いくつか事例をご紹介します。
(1) バーチャル埼玉(埼玉県)
「バーチャル埼玉」は、埼玉県が民間企業と提携して開設したWebサービスです。「バーチャル埼玉」では、さいたまスーパーアリーナや川越の街並みなど、埼玉県にまつわる施設が再現されています。バーチャル埼玉では、バーチャル交流会で他の人とコミュニケーションをしたり、イベントに参加したりすることができます。
(2) あきた移住・交流メタバース万博(秋田県)
「あきた移住・交流メタバース万博」では、メタバースで秋田に関する情報に触れたり、相談会にバーチャル参加したりすることができます。
「バーチャル埼玉」と共通した部分が多いですが、「移住」をコンセプトにしている点に特長があります。
(3) MIHON-ICHI-KANAZAWA(石川県)
「MIHON-ICHI-KANAZAWA」では、ひがし茶屋街などの街並みが再現され、実際に商品を購入することもできます。ARの活用によって、商品を購入する前に、購入したい商品を自宅に置いたときのイメージを、映像で確認することもできます。
(4) かずさメタ婚(千葉県)
「かずさメタ婚」は、千葉県の4市と地元企業が提携して、メタバースで開催された婚活イベントです。通常の婚活イベントとは異なり、アバターを利用して個人情報を公開せずに参加できるところに、大きな特長があります。
(5) めいわデジタルプロジェクト(三重県)
「めいわデジタルプロジェクト」は、三重県明和町が、民間企業と提携して、デジタル技術による地域活性化を目指すプロジェクトです。その中で注目すべき取組みが、「アバターワーカーの環境整備」です。メタバースでアバターとして仕事をしたい人をつなぎ、新たな雇用を生み出すものです。
3 「メタバース×地方創生」ビジネスの未来
現状は、メタバースを実生活で積極的に活用する人口が少ないこともあって、「メタバース×地方創生」の取組みも限定的なものにとどまっています。
ただ、今後、メタバースが身近なものになり、スマートフォンのようにVRゴーグルを1人1台は所有する時代が訪れれば、おそらく状況は大きく変わります。
メタバースがより身近になれば、家族みんなでVRゴーグルを付けてバーチャル旅行を楽しんだり、移住先を探すツールとして活用したり、応援したい地方でアバターワーカーとして活動をしたりと、「地方創生」に直結する需要が生まれます。
前述した実例からも明らかなように、「メタバース×地方創生」の取組みは、地方自治体と民間企業が提携して実施されるケースが多いです。「メタバース×地方創生」につながるアイデアと技術力があれば、たとえスタートアップの段階でも、地方自治体とつながりをもって、ビジネスを成功に導くことができます。
第2章 「メタバース×地方創生」ビジネスと法律
ここまで、「メタバース×地方創生」ビジネスの将来性について、「ビジネス視点」でご紹介しました。ここからは、弁護士視点で、「メタバース×地方創生」ビジネスの法的課題についてご説明します。
地方創生ビジネスにおいて、法的課題への対応を欠くことは、致命的です。なぜなら、法的リスクをはらんだビジネスは、地方自治体との提携が難しいからです。
地方自治体の懸念を払拭して、提携を実現するためには、「メタバースの法的課題」に対して、正確な理解が求められます。
次章では、「メタバース×地方創生」ビジネスに関連する法的課題について、具体的に解説します。
第3章 「メタバース×地方創生」ビジネスに関連する法的課題
1 参加者同士のトラブルの問題
メタバースにおいて最も重要な法的課題は、参加者同士のトラブルをどのように予防し、万が一発生した場合にどのように解決するかです。
メタバース空間では、参加者同士の交流を伴うことが一般的ですので、ユーザー同士での衝突が発生するおそれがあります。現実世界であれば、トラブルが起きれば警察に通報すればよいですが、メタバース空間ではそうはいきません。メタバース運営者が、いわば、警察に代わる役割を果たさなければなりません。
このようなトラブルを予防し、あるいは、迅速に解決にするために、メタバース上の参加者同士の会話を一定期間記録しておくことが考えられます。
ただし、参加者が限定された交流会などでの会話をメタバース運営者が無断で記録することは、電気通信事業法に抵触します。
また、このような参加者が限定された空間でなかったとしても、参加者の会話をメタバース運営者が無断で記録することは、後述するプライバシー上の問題を生じさせます。
仮に、参加者同士の会話を記録するのであれば、あらかじめ、参加者から承諾を得ておくことが適切です。
また、問題のある参加者を迅速にメタバース空間上から退出させられるように、利用規約などで強制退出のルールを明確化することも、参加者同士のトラブルを予防し、あるいは、迅速に解決にするために有効です。
この問題に関連して、メタバース運営者が、参加者の個人情報をどこまで収集するかという悩ましい課題があります。参加者の個人情報を詳細に収集すれば、トラブルの予防・解決につながりやすいですが、他方で、幅広く参加者を募りたいのであれば、できる限り個人情報を収集しないほうが望ましいです。この課題への答えは一様ではなく、メタバース運営者が何を重視したいかによります。
2 街並みの再現における著作権侵害の問題
メタバース空間で現実の街並みを再現する場合、著作権侵害が問題になり得ます。
建築物については、「建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合」(著作権法46条)を除いて、複製行為による著作権侵害は成立しません。メタバース空間での建築物の再現は、これには該当しませんので、著作権侵害は成立しません。
ただし、建築物に芸術性のある絵が描かれているようなケースでは、そのままメタバース空間でその建築物を再現すると、絵画について著作権侵害は成立するおそれがあります。
メタバース空間で現実の街並みを再現する場合は、著作権侵害が問題になり得る部分を削除するなどの配慮が必要です。
3 メタバースにおけるプライバシーの問題
メタバース空間では、参加者の行動を監視することが技術的に可能であるため、プライバシーの問題が生じます。
個人情報保護法の関係でいえば、メタバース運営者が参加者の行動履歴を保持しても、その利用目的が特定され、公表されるなどしていれば、違法とはなりません。
ただ、参加者の行動をメタバース運営者が過剰に追跡することは、プライバシー上の問題を生じさせたり、参加者に心理的な不安を生じさせたりする要因となります。
厳密にいえば、「そもそもメタバース空間と現実世界とで同列にプライバシーの問題を論じてよいか?」という悩ましい議論はありますが、両者を同列に扱うならば、メタバース空間上での行動追跡は、メタバースの運営上必要な限度に留めることが望ましいです。
また、運営上の必要から参加者の行動追跡をする場合には、その利用目的を具体的に分かりやすく示したり、あらかじめ同意を得たうえで収集するような配慮をすることも、望ましい対応です。
4 アバターの容姿を巡る問題
参加者に対してアバターの自由な創作を認める場合、肖像権やパブリシティ権、著作権の侵害が問題になります。
例えば、承諾なく第三者の容姿に似せたアバターを創作して利用すれば、肖像権やパブリシティ権の侵害が成立し得ます。また、キャラクターと類似したアバターを創作して利用すれば、著作権侵害が成立し得ます。
このような問題への対策として、メタバース運営者としては、利用規約を整備して、このような行為を禁止するとともに、問題のあるアバターを運営者判断で削除できるようにしておくことが適切です。
5 その他
その他にも、「メタバース×地方創生」ビジネスに関連する法的課題は様々です。
例えば、メタバース空間で参加者が商品やサービスを販売・有償提供することができる場合、その商品・サービスの問題について、メタバース運営者が「名板貸し責任」を問われるケースがあります。メタバース空間内のデザイン上、商品・サービスの提供者がメタバース運営者なのか、参加者なのかが不明瞭であれば、このような責任を問われやすくなりますので、注意が必要です。
また、アバターワーカーのマッチングを伴う場合は職業安定法が、婚活目的の交流を伴う場合はインターネット異性紹介事業規制法が問題になります。メタバース空間は、「現実世界を拡張した場」であるため、現実世界と同様に、様々な法規制が問題になるのです。
第4章 ビジネスの成功のために弁護士ができること
スタートアップ企業でも、地域の魅力を理解して、斬新なアイデアを存分に活かせば、「メタバース×地方創生」ビジネスの業界に参入することができます。
私たち弁護士は、ビジネスで成功する斬新なアイデアをご提供することはできませんが、お持ちのアイデアに対してどのような法的課題があるかを整理し、その課題を克服するためのご提案を差し上げることができます。
また、ビジネスの立ち上げにおいて必要な規約の整備や、トラブルへの対応、さらには、他企業・地方自治体と提携する際の契約書レビューなど、多方面でバックアップすることができます。
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