コラム

雇用調整助成金について

弁護士 倉田 壮介

はじめに

新型コロナウイルスは企業の経済活動に深刻な影響を与え続けています。埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県には、令和2年4月7日から1か月間の緊急事態宣言が発令され、外出自粛要請やすべての企業に対する職場の出勤者を最低7割減らす旨の要請が出されました(現在では、緊急事態宣言の対象は全都道府県となっています)。

このような状況下で、多くの企業が、施設の休館やイベントの中止、商業施設の休業をせざるをえず、社員を解雇しもしくは休業させざるをえない状況に陥っています。

かかる状況を受け、現在、多くの企業において雇用維持が困難になっています。

厚生労働省は、このような事態を踏まえ、雇用調整助成金の特例措置を設けました。本コラムにおいては、事業者の方に向けて、この雇用調整助成金について簡単に解説を行っています。

なお、政府による資金繰り支援、給付金、助成等に関しては、次々に新たな支援策が打ち出され、従前の制度が改められている状況にあります。本コラムはあくまで執筆時点(令和2年4月24日)での制度を念頭に、制度概要をわかりやすく説明することを目的としています。最新の情報については、政府機関において公表・更新される情報をご参照下さい(現在、経済産業省において公表されているパンフレットがよく整理されていると思います。雇用調整助成金については、厚生労働省ホームページに詳しい情報が記載されています)。

雇用調整助成金とは

雇用調整助成金とは、会社の業績が安定せず下がってしまい、事業活動の縮小をせざるを得なくなった事業主が、雇用維持のために、休業等を行ったときに休業手当等相当額の一部を支給してくれるものです。今般の「新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置」は、新型コロナの影響を受ける全業種の事業主が対象となっており、通常時に比し大幅に要件が緩和されています。なお、以下では特に申請が多くなると見られる休業の場合を念頭に置いて解説します。

次の表は、通常時と今回の特例措置を比較したものです。

※雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)をもとに作成(同ガイドブックは、上記厚生労働省HPからダウンロードできます)

助成金の要件について

本項では、受給要件の概要について解説します。

支給対象となる事業者は、①新型コロナウイルス感染症の影響により、②事業活動の縮小を余儀なくされた場合で、③対象労働者の雇用維持のために労使間の協定に基づき休業を実施する事業主です。

①新型コロナウイルス感染症の影響により、とは例えば相次ぐ観光客のキャンセルや市民活動の自粛により客数が減り売上が減少したり、行政からの営業自粛要請を受け自主的に休業を行ったため売上が減少した場合などをいうとされています。

②事業活動の縮小とは、事業活動の売上高や生産量を示す生産指数の最近1か月間の値が前年同月と比べて5%以上減少していることをいいます。

③に関し、休業とは、労働者がその事業所において、所定労働日に働く意思と能力があるにもかかわらず、労働することができない状態であるとされています。そして、本助成金は、休業実施について労使間で事前に協定し、その決定に沿って休業を行う必要があるとされています。
また、その他の要件として、事業主は雇用保険適用事業主であること、受給に必要な書類について、整備し、受給のための手続にあたって労働局等に提出するとともに、保管して提出を求められた場合に速やかに提出すること、労働局等の実地調査を受け入れることが必要とされています。

従業員については通常時であれば、6か月以上雇用保険に加入している被保険者が対象ですが、特例措置においては、その要件を撤廃し、新入社員、正社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど雇用形態を問わず、対象とされています。

助成額について

中小企業は4/5、大企業は2/3の助成率となっています。解雇を伴わない場合では、中小企業は9/10、大企業は3/4となります。

その助成率と休業手当に相当する額を乗じた額が助成額となります。ただし1人1日当たり8,330円が上限ですので、この点注意が必要です。

受給手続きの流れや提出書類について

手続きの流れは図のとおりです。

申請するにあたり、計画届と支給申請書類を提出する必要があります(計画届については今回の特例措置により事後提出が認められ、6月30日までに提出すれば良いとされています)。
※雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)を元に作成(上記厚生労働省HPからダウンロードできます)

≪計画届の提出に必要な書類≫
① 様式第1号(1)-休業等実施計画届
② 様式特第4号-雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書
    ⇒直近1か月と前年同月の売上高などを確認できる書類を添付すること
③ 休業協定書
ア 労働組合等との間で締結した協定書。所定の事項を記載することが必要。
イ 労働者代表の確認のための書類
労働組合がある場合‐組合員名簿
労働組合がない場合‐労働者代表選任書
④ 事業所の状況に関する書類-労働者名簿・役員名簿など。

≪支給申請に必要な書類≫
① 様式特第6号-支給要件確認申立書・役員等一覧
② 様式特第7号-(休業等)支給申請書
③ 様式特第8号-助成額算定書
④ 様式特第9号-休業・教育訓練実績一覧表
⑤ 労働・休日の実績に関する書類
ア 出勤簿やタイムカード、シフト表など
イ 就業規則や労働条件通知書など
⑥ 休業手当・賃金の実績に関する書類
ア 賃金台帳や給与明細書などの書類
イ 就業規則や給与規定、労働条件通知書など

 

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