コラム

専門学校とは何か~専門学校の法的位置付けについて~

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弁護士 倉田 壮介

はじめに

専門学校は、大学に次ぐ規模の学生をかかえる教育機関であると同時に、職業実践的な教育を提供し、実務教育・職業教育により、産業界からの要請に答える現代の社会に欠かせぬ存在です。現に、専門学校は高い就職率を確保していると言われています。

しかしながら、専門学校は、大学等に比しその法的な基盤についての情報が十分行き渡っておらず、法的に見てどのような存在なのかあまり知られていません。

そこで、本コラムでは、専門学校の法的位置づけについて簡単に解説します。

専門学校の学校教育法上の位置づけ

学校教育法は、我が国の学校教育制度を定める根幹をなす法律であり、実務上最も基本的な法律の一つであると言えます。この法律には、「学校」がいかなるものであるの規定があります。

学校教育法1条を見ると「この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。」とされています。この中に専門学校は含まれていません。

なお、ここには高等専門学校が規定されていますが、これはいわゆる「高専」と略される学校です。公立の学校がほとんどであり、本稿で論じようとしている専門学校とは全く別の教育機関です。

このとおり、専門学校は、学校教育法にいう「学校」ではありません(ちなみに学校教育法1条に定められた学校を「一条校」といいます。同条はいわゆる正系の学校体系の維持、管理を主眼としますが、正系以外の多様な学びの場を排斥する傾向もあるとの問題点が指摘されています)。

では、専門学校に関してはどこに規定されているかというと、「専修学校」と題された同法第11章です。専門学校はこの専修学校の一類型です。

専修学校は、高等課程、専門課程、一般課程を置くことができるとされていますが、このうち専門課程を置く場合に、専門学校と称することができます(同法126条第2項)。

専門学校とは、学校教育法上は、専門課程を置く専修学校と位置づけられることになります。

専門課程を置く専修学校以外の教育施設は専門学校の名称を用いてはならないとされています。

他方で専門学校は必ずしも校名として専門学校を名乗らなくても良いこととされています。

専修学校の名称は、専修学校として適当であるとともに、当該専修学校の目的にふさわしいものでなければならないとされていますが(専修学校設置基準52条)、この範囲で様々な名称が付されているため、名称からだけでは、当該教育施設が学校教育法上の専門学校かどうかが一見してわからないことがあります。

専門学校の設置、監督について

専門学校を含めた専修学校を設置しうる者は、学校法人に限定されていません(対象的に、いわゆる一条校においては国及び地方公共団体のほかは私学法に基づく学校法人のみです)。

このため、その他の法人(私立学校法第64条第4項による準学校法人、社団法人、財団法人、社会福祉法人、医療法人、宗教法人等)も個人も、設置者となることができます。

ただ、設置者は次のような要件を満たさなければならないものとされています。

①専修学校を経営するために必要な経済的基礎を有すること(必要な校地、校舎、校具その他の施設設備を備えているか、あるいはそれに要する資金があるか、相当期間に渡り教職員の人件費その他の経常的経費を支弁することのできる資金など安定経営に必要な財産を有しているか)
②専修学校を経営するために必要な知識(専修学校教育一般に対する識見、教育内容に関する学識など)または経験(一条校、専修学校及び各種学校の設置者またはその役員、校長、教員などの経歴などの経営または教育の経験)を有すること
③社会的信望を有すること

これらの者が専修学校を設置するにあたっては、監督庁の認可を受ける必要があります。専修学校の設置者の大半は私人ですが、私立の専修学校の場合は都道府県知事の認可を受ける必要があります。

専門学校の設置の認可にあたっては、申請の内容が、下記のような基準に適合するかどうかが審査されます。一条校と異なり、名称、位置の変更、分校の設置廃止、学則の変更等については届出事項とされています。

専門学校の設置要件について

専修学校の目的に合致すること

職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として次に該当する組織的な教育を行う施設であることが必要とされます(法124条)。

①修業年限が1年以上であること

②授業時数が専修学校設置基準で定める授業時数以上であること

③教育を受ける者が常時40人以上であること

設置者の要件に該当すること

上記に記した①経済的基礎②知識・経験③社会的信望を有することが必要となります。

設置基準に適合すること

専修学校は、教員の数、校地及び校舎の面積並びにその位置及び環境、設備が、目的、生徒の数または課程の種類に応じて文部科学大臣の定める基準に適合していなければならない、とされています。

また、教育課程及び編成の大綱が、その目的または課程の種類に応じて文部科学大臣の定める基準に適合していなければならないとされています。

これら文部科学大臣の定める基準の具体的内容については、専修学校設置基準で定められています。

校長及び教員に関する要件を満たすこと

校長となるべき者は教育に関する識見を有し、かつ、教育、学術又は文化に関する業務に従事した者であることを要します。

また、教員はその担当する教育に関する専門的な知識又は技能に関し、文部科学大臣の定める資格を有する者でなければなりません。この資格は専修学校設置基準に定められています。専修学校の教員については、教員免許状の所有は義務付けられていないですが、その担当する教育に関し、専門的な知識、技術、技能を有するものである必要があるとされています。
教員の人数についても同基準に定められています。

これらの者が法9条に定める欠格事由に該当しないことも必要とされています。

学校基本法上の位置づけ

教育基本法は、教育の基本を確立しその振興を図るための根幹的理念について規定した法律です。

本法でも、「法律に定める学校」(6条)などの表現が見られ、ここに言う「法律に定める学校」はいわゆる一条校を指すとされており、専門学校はここに含まれないとされています。

しかしながら、その理念に照らし、例えば1条(教育の目的)、2条(教育の目標)、4条(教育の機会均等)などについては、専門学校についても適用されるものとされています。

その他の法律上の位置づけ

その他の法律においても、学校について規定する場合、この一条校を指す場合がほとんどです。しかしながら、当該法律の趣旨に鑑み専修学校がその適用対象としてふさわしい場合、一般条項の解釈等において可能な限り専修学校においても実質的適用をなすことが考えられますし、法律の規定にまでなっていなくとも、衆議院や参議院で、専修学校においても同様の考慮をするべく付帯決議がなされていることがあります。

まとめ

以上の通り、専門学校は学校教育法上いわゆる一条校ではないものの、専門課程を置く専修学校として位置づけがされており、学校法人以外の私人によっても設立される教育施設とされています。また教育基本法上も、法律に定める学校には位置づけられていませんが、その理念に照らし種々の規定が適用される対象とされています。その他の法律においても、殆どの場合で学校と規定されている場合一条校をさすことがほとんどですが、解釈上、実質的にその規制が及ぶことがあります。

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