コラム

弁護士の契約書リーガルチェックを有効活用するためのノウハウ

目次

リーガルチェックを依頼するのは何のため?
リーガルチェックで得られる情報は?
リーガルチェックを有効活用するために
リーガルチェックに対する当事務所のスタンス
リーガルチェックのご依頼は当事務所まで

リーガルチェックを依頼するのは何のため?

ビジネスにとって重要な契約交渉

ビジネスを成功させるうえで重要なことの1つが、取引先との契約交渉をうまく進めることです。はじめの契約交渉で失敗すれば、取引先から不利なリスクを押しつけられたり、思わぬ場面で取引先とトラブルになったりして、ビジネスの継続に大きな支障を生じさせてしまいます。

ただ、法務の専門家を人材採用していない多くの企業様においては、取引相手から提示された契約書のどの部分が問題なのか、あるいは、自社で用いている契約書のひな形にどのようなリスクが含まれているかなどを的確に判断することが難しいです。そのせいで、取引相手から提示された契約書の問題点を把握しないままに契約締結に至ってしまったり、あるいは、自社に不利な契約書のひな形を長年使い続けていたりしているケースは少なくないと思います。

このような状況が続いていると、いつかそれが、思わぬ代償として返ってくることになります。たとえ契約書の中に問題のある条項が含まれていても、取引相手と良好な関係を築いている限り、その問題が明るみになることはほとんどありません。ただ、何らかのきっかけで取引相手とトラブルが起きてしまうと、契約書に含まれる不利な条件を取引相手から突かれ、痛手を負うことになります。

外部の弁護士にリーガルチェックを依頼するメリット

法務の専門家を人材採用することは難しいが、契約交渉で失敗することは避けたいという企業様のニーズにお応えするのが、弁護士の契約書リーガルチェックです。

法務の専門家を人材採用 外部の弁護士に依頼
毎月高額な給与・報酬を支払わなければならない。 (リーガルチェックを必要とする機会がそれほど多くない場合)経費の削減につながる。
専門的なチェックができる。 専門的なチェックができる。
社内の事情に精通している。 顧問弁護士の形で継続的に関係を築くことで、社内の事情も共有することができる。

中小企業様やフリーランスの方の場合、契約書のリーガルチェックを必要とする機会は毎月多くても数通程度に限られるケースが多いと思います。このような状況において、法務の専門家を人材採用することは現実的ではありません。外部の弁護士であれば、ニーズや予算に応じたプランを利用することで経費を必要最小限に抑えることができますので、経費の削減につながります。

社内の人材のほうが、外部の弁護士よりも社内の事情に精通しているメリットはあります。もっとも、外部の弁護士であっても、顧問契約を締結していただき、日頃から社内の事情を共有していただくことで、この課題も十分に補うことができます。

リーガルチェックで得られる情報は?

契約書のリーガルチェックにおいては、様々な観点から契約書の内容を審査して、法的な助言がされることが一般的です。いくつか例をご紹介します。

※説明の都合上、条項例は簡潔なものをお示ししています。実際の契約書においては、様々な問題点が複雑に絡んでいるケースが多いです。

意味の曖昧な用語は含まれていないか?

契約紛争の原因として多いものの1つが、契約書に含まれる用語の意味について当事者間の認識が異なっていたことです。

第※条 受注者は、発注者が成果物を納品してから10営業日以内に、当該成果物を検査し、その合否を発注者に通知しなければなりません。その期限までに受注者が当該通知しなかった場合は、受注者は、発注者に対して合格の通知を発したものとみなします。

このような条項が契約書に含まれる場合に、成果物の納品が8月10日に行われたとき、合否の通知はいつまでにしなければならないのでしょうか。発注者と受注者の夏期休業日が異なる場合、どちらの休業日を基準に営業日を考えればよいのでしょうか。発注者と受注者の認識にズレがある場合、期限までに不合格の通知をしたかどうかで大きなトラブルになってしまうおそれがあります。

このような問題は、契約書をさっと眺めただけでは気づくことが難しいです。発注者と受注者の認識にズレを生じさせるおそれのある曖昧な用語は、細やかにチェックし、必要に応じて用語の定義を置いたり、別の用語に改めたりする必要があります。

リーガルチェックにおいては、このような意味の曖昧な用語をチェックし、改善策を提案することが一般的です。

一方的に不利な条項を押しつけられていないか?

リーガルチェックにおいて特に重要なのが、一方的に不利な条項を押しつけられていないかどうかです。損害賠償の上限規定が取引相手側のみに設定されている、知的財産権が正当な対価なく取引相手側に帰属するようになっているなど、取引当事者の一方が不利な条項を押しつけられている契約書は世の中に多々あります。

中には、一方的に不利な条項を押しつけられていることが分かりづらいケースもあります。例えば、次のような例が挙げられます。

第※条 甲及び乙は、本プロジェクトの遂行過程において生じた発明に係る特許権は、甲及び乙の共有(持分はそれぞれ2分の1とする。)とする。

このような条項は、それぞれが特許権を「共有する」ことになっており、その持分も各2分の1であることから、もっともフェアな姿を採用しているように見えます。しかし、必ずしもそうとはいえません。例えば、プロジェクトにおいてマネジメントを甲、技術開発を乙が主に担う場合、多くのケースにおいて、 プロジェクトの遂行過程における発明は、乙の貢献のもとに生まれることになります。それにもかかわらず、特許権が甲乙に共有されれば、事実上、乙に対して一方的に不利な条項が押しつけられているといえます。

リーガルチェックにおいては、契約書の文言のみにとらわれるのではなく、契約当事者の関係や取引の背景など、個別の事情を踏まえた指摘をすることが一般的です。

大切な条項が欠落していないか?

リーガルチェックにおいては、自社を守るために必要な条項が欠落していないかどうかをチェックすることも重要な作業です。例えば、次のようなものが挙げられます。

・(業務継続が途中でできなくなるおそれがある場合)中途解約に関する条項
・(AIのように成果物の精度を保証することが難しい場合)成果物の精度の保証に関する制限条項
・(取引相手の競業行為によって業務に大きな支障が出るおそれがある場合)競業行為を制限する条項

リーガルチェックにおいては、クライアントの立場を踏まえて、取引相手の紛争になった際に「盾」となる条項を検討し、その欠落が見られる場合には指摘をすることが一般的です。

リーガルチェックで得られる情報は他にも様々

以上のほか、リーガルチェックで得られる情報は様々です。弁護士が契約書をリーガルチェックする際には、誤字がないか、引用条文を誤っていないか、条項間で矛盾を来していないかなど、条項が独禁法や消費者契約法などの法令に抵触していないかなど、様々な視点で審査を行います。

リーガルチェックを有効活用するために

リーガルチェックにおいて弁護士から的確な助言を受けるために、ご依頼の際に、次のような観点を意識していただくことをおすすめします。

取引相手との交渉の余地はどれくらいあるか?

当たり前のことですが、契約書は、取引相手が首を縦に振らない限りは成立しません。時間と費用をかけて綿密なリーガルチェックを依頼して、ドラフトの修正案を作成しても、それに対して取引相手から「このような修正は飲めません」と一蹴されてしまえば、何の意味もありません。仮に、取引相手との契約をどうしても成立させたいと考えていて、かつ、取引相手が強気な態度であれば、ドラフトの修正要求は必要最小限にとどめることが適切です。

リーガルチェックを依頼する際に、取引相手との交渉の余地がどれくらいあるかを弁護士に伝えておくと、弁護士において「不利な契約条項についてどこまで細かい指摘をすることが適切か」を見極めやすくなります。

取引相手との交渉の余地がどれくらいあるかを自社において見極めることが難しい場合には、これまでの取引相手とのやりとりの経緯や、過去の関係性などを弁護士に伝えていただくとよいかと思います。

譲れないポイントはどこか?

契約交渉においてどこを重視したいか(どこであれば譲歩できるか)は、ケースバイケースです。

例えば、委託者から納品を受ける成果物を様々な用途に転用することを想定したいのであれば、知的財産権の帰属やライセンスについて、積極的に交渉する必要があります。

また、例えば、医療目的で利用するソフトウェアのように、成果物に不備があった場合に生じる損害が多大になるリスクがあるケースは、損害賠償の範囲や、損害保険への加入に関連する条項について、積極的に交渉する必要があります。

一方、何よりも確実に、かつ、早期に契約関係を成立させることを重視したいのであれば、ドラフトの修正を最小限にとどめて、円滑に交渉を終わらせる必要があります。

リーガルチェックを依頼する際に、譲れないポイントがどこであるかを的確に弁護士に伝えておくと、適切なメリハリのついた報告を受けやすくなります。

リーガルチェック後のフォローも依頼したいか?


リーガルチェックは、基本的に、契約書案を弁護士がチェックして、その結果を回答することで終了します。ただ、複雑な契約交渉においては、リーガルチェック後においても、契約成立までの間、継続的に弁護士の助言が必要になるケースがあります。もし、このような形でのサポートも必要になりそうであれば、あらかじめ弁護士にお伝えいただくことをおすすめします。このようなご要望をあらかじめいただくと、適切な料金プラン設定をさせていただきやすくなります。

リーガルチェックに対する当事務所のスタンス

当事務所では、契約書のリーガルチェックについて、次のようなスタンスで対応しております。

個別のご事情に沿ったバランスのよい審査

ここまでご説明したように、高品質なリーガルチェックは、単に契約書の中身に目を通すだけでは実現できません。契約交渉がどのように進められているのか、取引相手とはどのような関係性か、クライアントが重視するポイントは何かなど、様々な事情を踏まえて、適切なバランス感覚を持った審査を行う必要があると考えています。

何よりも紛争予防の観点を重視した審査

契約交渉において重要なことは、後々に紛争を招いてしまうような契約条件を受け入れてしまわないことです。リーガルチェックの際には、実際に取引相手と深刻な紛争になってしまったケースをイメージしながら、現在の契約書で適切に解決することができるかを吟味しています。そのうえで、紛争予防の観点から不適切な条項については、前述したバランス感覚も意識しながら、修正交渉をおすすめするように心がけています。

分かりやすい情報提供

単に精度の高いリーガルチェックを行うことだけではなく、その結果を分かりやすくクライアントにお伝えする姿勢も重要であると考えています。リーガルチェックの結果、問題があるものと判断した条項については、「なぜ問題なのか」「どのようなスタンスで修正交渉をするのがよいか」「最終的な落としどころをどのように意識すればよいか」といったことを丁寧にお伝えして、クライアントにご理解いただきやすい情報提供を心がけています。

リーガルチェックのご依頼は当事務所まで

当事務所では、多数の企業様から日常的にリーガルチェックのご依頼を承っております。
取引相手から提示された契約書ドラフトの内容に不安がある場合、日常業務にご利用の契約書ひな形を見直したい場合など、ぜひ、当事務所にリーガルチェックをご依頼ください。

また、日常的にリーガルチェックをご依頼されたい場合には、顧問契約をおすすめしております。詳しくは、下記のバナーをクリックしてください。


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