コラム

戦略法務に強い弁護士を目指して(2024年抱負)

弁護士 石田 優一

戦略法務に強い弁護士を目指して

Web Lawyersでは、2024年、「戦略法務」に注力した法務サービスを積極的に展開して参ります。

「戦略法務」とは、単に紛争を予防するための法務や、紛争を解決するための法務を超えて、「経営戦略にかかわる法的課題の解決をサポートする法務」のことです。

従来型の弁護士業務は、紛争予防を通じて取引先との関係を維持したり(予防法務)、法的紛争を解決したりする活動(臨床法務)を通じて、いわば「間接的」にビジネスに関与することがメインでした。ただ、ビジネスの分野で弁護士ができることは、それだけではありません。例えば、新規事業のスタートアップであれば、次のような形でビジネスに関わることができます。

1.新規ビジネスを適法に進めるためのスキームのご提案
2.新規ビジネスを進めるための法務関連費用についてスキームごとの比較検討
3.他社と提携してビジネスを展開するために必要な法的交渉のサポート
4.新規ビジネスのサービス利用規約やプライバシーポリシ等の整備
5.新規ビジネスのスタートアップに有効な補助金に関する情報提供

以上はいずれも、新規ビジネスの開拓において弁護士が担うことのできる法務分野です。

また、ビジネス全体を拡大していく戦略に関連して、弁護士の立場からは、M&AやIPOを円滑に進めるためのコンプライアンス体制の整備や、ベンチャーキャピタルとの交渉に関する法的助言など、多方面から法務サービスをご提供することができます。

「経営戦略にかかわる法的課題の解決をサポートする法務」とは、このようなビジネスの開拓・拡大において重要な法的課題を、「経営の視点」を意識しながら、弁護士としての知識・経験を活かして解決することをイメージしています。

「戦略法務」に関する5つの目標

Web Lawyersでは、「戦略法務」に注力した法務サービスを積極的に展開するために、「5つの目標」を掲げています。

1.経営者の立場を理解すること

「戦略法務」においては、何よりも、経営者の立場を理解することが大切であると考えています。
例えば、次のようなケースを考えてみます。

・X社は、新規ビジネスAを新たにスタートしたいと考えています。
・新規ビジネスAを適法に進めるために、スキームαを採用するか、スキームβを採用するか、2つの選択肢があります。
・スキームαを採用するためには、法務対応に100万円の費用が必要なほか、新たな人材を3名採用しなければなりません。
・スキームβを採用する場合は、新たな人材を採用する必要はなく、法務対応も20万円で住みます。
・スキームαのほうが、スキームβよりも販路開拓をしやすいメリットがあります。また、スキームβについては、今後、法改正で規制が厳しくなり、ビジネスの継続が難しくなるおそれもあります。

このようなケースにおいて、スキームαを採用すべきか、スキームβを採用すべきかを考える際には、「経営者の視点」を理解する必要があります。経営理念や、予算の多寡、新規ビジネスへの注力度など、様々な事情を総合的に捉えて、どちらのスキームのほうが優れているかを検討しなければなりません。当然ながら、その答えは「法律書」には示されておらず、ご相談にいらっしゃった方と議論を交わしながら、「経営者の視点」に立った答えを導く必要があります

2.ビジネスについて理解すること

「戦略法務」においては、ご相談者のビジネスについて理解することも大切であると考えています。
例えば、次のようなケースを考えてみます。

X社は、中小企業と専門家をつなぐマッチングサービスをリリースしようとしています。弁護士に、利用規約の作成を依頼したいと考えています。

このようなご相談に際しては、中小企業と専門家との取引においてどのような法的トラブルが想定されるのか、決済やマージンを確保するスキームとして業界内で一般的なものは何か、その業種特有の法規制はないかなど、そのビジネスならではの法的問題を理解しておくことが求められます。また、オンラインサービスの場合は、Cookie規制への対応はできているか、(アプリを提供する場合)App StoreやGoogle Playへの登録上支障となるような事情はないかなど、ITサービス特有の課題への理解も求められます。

3.「すぐにあきらめない」こと

「法務戦略」においては、すぐに「このビジネスは違法だから実現不可能です」と断定してしまうのではなく、「どうすればそのビジネスを適法化できるのか?」を積極的に検討する姿勢も大切であると考えています。

斬新なビジネスのアイデアが、既存の業法規制に抵触してしまうことは珍しくありません。そのとき、すぐに「違法なのでやめたほうがよいです」と断じてしまうのではなく、「現在のスキームでは違法ですが、このようにスキームを変えれば適法です」「サービスの利用者層を限定することで解決できそうです」といった建設的なご提案を差し上げることも、法務のプロフェッショナルとして大切な役割であると考えています。

4.長期的な視点を大切にすること

「法務戦略」においては、今の法的課題を解決することだけではなく、「ビジネスの長期的な成長を見据えた法的サポート」が大切であると考えています。例えば、よりよい人材を育成するための人事制度づくりや、経営権を維持しながら投資家から積極的な支援を受けるための制度設計、さらには、M&AやIPOを意識したコンプライアンス体制の整備など、ビジネスを長期的に成長させるための法的サポートを継続的にご提供することが、法務戦略に強い弁護士の役割として挙げられます。

5.ビジネスパートナーになること

「法務戦略」においては、何よりも「ビジネスパートナー」としての役割を担うことが大切であると考えています。「ビジネスを成功させるためにはどうすればよいか」「もっとビジネスをよくするために何ができるのか」を、ご相談者(経営者)とともに模索していくことが、法務戦略に強い弁護士の役割として挙げられます。

さらなるサービス向上を目指して

Web Lawyersでは、新規ビジネスのスタートアップを主軸に、これまで多数の企業様のご相談をうかがって参りました。2024年は、新時代のビジネスを加速する「戦略法務」に強い法律事務所(弁護士)を目指して、さらなるサービス向上に努めます。今後とも、Web Lawyersをよろしくお願いいたします。

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