弁護士 石田 優一
目次
第1章 Webサービスの「ダークパターン」問題
第2章 スニーキング(sneaking、こっそり)
第3章 アージェンシー(urgency、緊急性)
第4章 ソーシャルプルーフ(social proof、社会的証明)
第5章 スケアシティ(scarcity、希少性)
第6章 オブストラクション(obstruction、妨害)
第7章 ミスディレクション(misdirection、誘導)
第8章 フォースドエンロールメント(forced enrollment、強制的な登録)
第9章 フォースドコンテニュイティ(forced continuity、強制的な継続)
第10章 Webデザインにおいて留意すべきこと
第1章 Webサービスの「ダークパターン」問題
最近、消費者事件に関連して、Webサービスの「ダークパターン」(Dark pattern)問題が、しばしば取り上げられるようになりました。ダークパターンとは、消費者の認知バイアスなどを利用して、ユーザーが無意識のうちに自分に不利な行動(事業者にとって有利な行動)を取るように設計されたデザインのことです。
ダークパターンという言葉からは、「詐欺師」「犯罪者」といった印象を持ちますが、実際は、そのような悪意がないままに、「集客効果を高めよう」「効率的な広告をしよう」という発想で採用したデザインがダークパターンに該当してしまうことは、決して珍しくありません。
特に、ダークパターンの事例は、Webサービスにおいてよく見られます。その理由は、いくつかあります。
第1に、インターネットの世界では、短時間でWebページへのアクセスと離脱と繰り返す多数のユーザーの中から顧客を獲得する必要があるからです。
第2に、Webサービスの場合、視覚的なデザインを活かして、ダークパターンの手法を講じやすいからです。
消費者の心理や行動を分析して、購買意欲を高める努力をすることは、ビジネスにおいて当然のことです。ただ、その手法が「行き過ぎた」もので、消費者の合理的な判断を妨げるおそれがあれば、ダークパターンの問題につながります。
Webサービスのデザインに関わるうえでは、ダークパターンの問題や法規制について正確に理解することが重要です。このコラムでは、(1)ダークパターンにはどのような手法があるか、(2)どのような法的問題があるのか、そして、(3)Webデザイナーが留意すべきことを、事例を交えながら解説しています。
第2章 スニーキング(sneaking、こっそり)
当社では、中古のPCやタブレットを販売するECサイトを運営しています。商品ページから「購入する」ボタンをクリックすると、購入内容の確認画面に遷移します。そして、確認画面で「購入する」ボタンをクリックすると、購入が確定する仕様になっています。
当社では、販売したPCやタブレットが3年以内に故障した際に、修理費用を負担する「3年保証」をオプションサービスとして提供しています。「3年保証」は、購入代金の10%の料金を支払うことで付加することができます。
確認画面の仕様は、以下のとおりです。
「3年保証」は、チェックボックスをクリックしない限り、自動的に付加される仕様になっています。
1 ダークパターンの問題
このケースでは、オプションサービスのチェックボックスをデフォルトで選択済みにすることで、ユーザーが意図せずにオプションサービスを申し込むおそれがあります。このように、ユーザーを欺いて取引を成立させる手法を、「スニーキング(sneaking、こっそり)」といいます。
消費者は、Webサイトを閲覧するときに、強調された表示や目立つデザイン以外を見逃してしまう傾向にあります。特に、縦長で画面の小さいスマートフォンの場合、このような傾向が顕著です。
また、ユーザーに配慮したサービスであれば、オプションサービスを付加するかどうかをユーザーに選択させる場合、デフォルトが「付加しない」(契約しない)になっていることが通常です。そのため、多くのユーザーは、「チェックしなければオプションサービスは付加されない」という思い込みを持っています。
スニーキングは、このような消費者の傾向を巧みに利用した手法であり、消費者が意図しない取引をしてしまうリスクを生じさせます。
2 どのような問題があるか
ユーザーがもっぱら事業のためにサービスを利用するようなケースを除き、このようなサービスには特定商取引法の「通信販売」規制が適用されます。
通信販売においては、最終確認画面において商品の価格やサービスの対価を表示することが義務づけられています(法12条の6第1項2号)。この表示において、「人を誤認させるような表示」をすることは禁止されています(同条第2項)。
このケースでは、「3年保証オプションサービス」のチェックボックスがデフォルトでオンになっているため、オプションも含めて「88,000円」で購入することができる誤解を生じさせるおそれがあります。
「詳細はこちら」をクリックすれば、オプションサービスを含めた価格(対価)が「88,000円」でないことが分かります。ただ、「88,000円」という価格が強調的に表示されているため、多くのユーザーが、価格(対価)を誤解したまま購入を完了させてしまうおそれがあります。
以上のような理由から、このケースは、「人を誤認させるような表示」に該当するとして、特定商取引法の通信販売規制に抵触しているおそれがあります。
また、チェックボックスをデフォルトオンにして取引を成立させた場合、そもそもユーザーがオプションサービスを申し込む意思があったどうかを巡り、法的紛争に発展するリスクもあります。
スニーキングの手法は、利用者の不信感を招き、利用者離れを生じさせるリスクもあり、ビジネス戦略の観点でも望ましいものではありません。
第3章 アージェンシー(urgency、緊急性)
当社では、中古のPCやタブレットを販売するECサイトを運営しています。売れ行きのよい商品に、「今だけのお買い得商品!」というキャッチコピーを表示して、購買意欲を促進する仕様を採用しています。
1 ダークパターンの問題
このケースでは、「今だけのお買い得」という表現によって、ユーザーに対して「すぐに購入するかどうかを決断しなければならない」という心理を生んでいます。普段は慎重な判断をする消費者であっても、迅速な判断を求められることで、本意ではない取引をしてしまうおそれがあります。このように、ユーザーに対して迅速な判断を求める手法を、「アージェンシー(urgency、緊急性)」といいます。
人間には、利益から得られる満足よりも、損失から生じる苦痛を大きく評価し、損失を避けようとする心理があります。これを、「損失回避性の法則」といいます。
2 どのような問題があるか
短期間に限定した割引価格を設定した場合に、「今だけのお買い得」という表記を用いることは、違法とはいえません。他方、そのような限定価格ではないにもかかわらず、このような表記を用いることは、景品表示法が禁止する「有利誤認表示」(不当表示)に該当します。
ガイドラインによれば、将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示について、表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでなければ、不当表示に該当しうるとされています。
このケースでは、短期間に限定した割引価格を設定している商品以外にも、「今だけのお買い得」という表記を用いていることが疑われます。仮に、このような表記を用いるのであれば、対象期間を明確にして割引価格を設定した商品に限定する必要があります。
また、法的問題がないケースでも、安易にアージェンシーの手法を用いると、利用者の不信感を招き、利用者離れを生じさせるリスクもあります。ビジネス戦略の観点から適切かどうかも、十分に留意する必要があります。
第4章 ソーシャルプルーフ(social proof、社会的証明)
当社では、中古のPCやタブレットを販売するECサイトを運営しています。商品の紹介ページに、「いま、このページを○○人の方が見ています!」と表示される仕様になっています。しかし、実際には、現時点でページを閲覧している人数ではなく、過去24時間以内にページを訪問した人数を表示しています。
1 ダークパターンの問題
このケースでは、多数のユーザーが同じ商品に関心を持っていることを示すことで、ユーザーがその商品を「よい商品に違いない」と感じる心理が利用されています。
消費者は、商品やサービスの善し悪しを判断するときに、自分ではなく、周囲の人の判断をもとに決定する傾向があります。このような消費者心理を、「ソーシャルプルーフ」(social proof、社会的証明)といいます。
このような消費者心理を巧みに利用して、商品やサービスを実際よりも優れたものであるかのように見せかける手法があります。このケースで採られている手法も、「過去24時間以内にページを訪問した人数」を「現時点でページを訪問している人数」であるかのように偽り、ユーザーの判断を誤らせるものです。
「ソーシャルプルーフ」(social proof、社会的証明)を悪用した手法には、他にも、クチコミの偽装や、ステルスマーケティング、根拠の不明瞭な「満足度No.1」表示などがあります。
2 どのような問題があるか
消費者が商品やサービスの善し悪しを判断するうえで有用な情報を印象的に伝えるために、ソーシャルプルーフの手法を用いることは、正当なビジネス戦略です。しかし、ユーザーに対して現実とは異なる他人の判断を伝えることは、景品表示法が禁止する不当表示に該当しえます。
「現時点でページを訪問している人数」を適切に表示しなければ、本来よりも人気・知名度のある商品・サービスであるように偽ることになります。このような手法は、現実の人数と表示された人数との乖離が大きい場合、優良誤認表示に該当するおそれがあります。
また、クチコミの偽装や、ステルスマーケティング、根拠の不明瞭な「満足度No.1」表示なども、景品表示法が禁止する不当表示に該当します。
ソーシャルプルーフを悪用した手法は、消費者庁や公正取引委員会も取締りを強化しており、社会的認知度も高まっています。ビジネス戦略の観点でも、このような手法は避けるべきものです。
第5章 スケアシティ(scarcity、希少性)
当社では、中古のPCやタブレットを販売するECサイトを運営しています。取扱い商品について、在庫数が100個未満になると、「もうすぐ売り切れ!お早めに!」と表示が出る仕様になっています。
1 ダークパターンの問題
このケースでは、「もうすぐ売り切れ!お早めに!」という表現によって、ユーザーに「すぐに購入しないと、商品が手に入らなくなる!」という気持ちを抱かせて、購買意欲を高める手法が採られています。
前述したように、人間には、利益から得られる満足よりも、損失から生じる苦痛を大きく評価し、損失を避けようとする心理があります(損失回避性の法則)。
「もうすぐ売り切れ!お早めに!」という表現を目にしたユーザーは、購入のチャンスを失う損失を避けたい気持ちになり、つい購入してしまうのです。
このような手法を利用したダークパターンを、「スケアシティ」(scarcity、希少性)といいます。
2 どのような問題があるか
消費者に対して商品の販売期限やサービスの提供期限が間近であることを喚起して、早期購入を促すことは、ユーザーにとっても有益であり、ビジネス戦略としても不当とはいえません。しかし、実際にはこのような状態にはないにもかかわらず、虚偽の情報を伝えて商品・サービスの希少性を強調することは、優良誤認表示に該当するおそれがあります。
また、法的問題がないケースでも、安易にスケアシティの手法を用いると、利用者の不信感を招き、利用者離れを生じさせるリスクもあります。ビジネス戦略の観点から適切かどうかも、十分に留意する必要があります。
第6章 オブストラクション(obstruction、妨害)
当社では、資格講座の動画をオンラインで視聴することができるサブスク型サービスを提供しています。有料会員登録は、登録フォームに個人情報を入力して「会員になる」ボタンをクリックすることで、簡単に完了することができます。一方、有料会員登録からの解約については、平日9時から17時までの間に電話をかける方法に限定されています。
1 ダークパターンの問題
このケースでは、有料会員登録が容易であるにもかかわらず、退会の方法が大きく制限されています。このような手法を、「オブストラクション」(obstruction、妨害)といいます。
このような手法が採られるオンラインサービスは、決して珍しくありません。大手企業のサービスでも、入会と比べて退会しづらい設計を採用していることはよくあります。簡単に入れて、簡単に抜けられない特徴が、「ゴキブリホイホイ」に例えられることもあります。
「オブストラクション」には、解約方法をオンライン以外の方法に限定するケースのほか、オンライン上での解約手続に複雑なプロセスを要求して、ユーザーに「疲れ」を起こさせて解約を断念させるケースがあります。
2 どのような問題があるか
このケースのように、ユーザーの解約方法を大きく限定する手法について、正面から禁止する法律はありません。
ただし、解約方法の限定は、解約権の行使に関する特約に当たりますので、消費者契約法や民法の規定に基づいて無効となるケースも考えられます。
特約がない場合と比べて消費者の権利を制限する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する特約は、消費者契約法10条により無効です。
また、利用規約において特約を定めた場合でも、取引の態様・実情や取引上の社会通念に照らして信義則に反して利用者の利益を一方的に害する特約は、有効な合意がなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。
サービスの利用者層などを踏まえて、解約方法が実質的にユーザーの解約を断念させるおそれの大きいものであれば、サービス運営事業者が解約方法の限定を主張することができないことがあります。
また、法的問題がないケースでも、オブストラクションの手法を用いると、利用者の不信感を招き、利用者離れを生じさせるリスクもあります。ビジネス戦略の観点から適切かどうかも、十分に留意する必要があります。
第7章 ミスディレクション(misdirection、誘導)
当社では、資格講座の動画をオンラインで視聴することができるサブスク型サービスを提供しています。解約率を下げるために、「解約する」ボタンをクリックしたときに、次のような表示が出るようにしました。
1 ダークパターンの問題
このケースには、2つの問題点があります。
第1に、「資格の勉強は、あきらめないことが大切です。もう少し勉強を続けてみませんか?」という表示によって、ユーザーに対して、解約に対する羞恥心や罪悪感を抱かせることです。ユーザーは、「ここで解約したら恥ずかしい」と感じ、サービスを継続すべきかどうかを合理的に判断することができなくなります。このような手法を、「コンファームシェイミング(confirmshaming、羞恥心の植え付け)」といいます。
第2に、「続けます」という選択肢が、解約手続を進めるのか、それとも、サービスの利用を継続するのか、まぎらわしいことです。ボタンの前に、「続ける」という趣旨の表現を2つの意味で用いることで、ユーザーが判断を誤るリスクを高めています。このような手法を、「ひっかけ質問(trick questions)」といいます。
このように、ユーザーの注意を惹きつけたり、逸らしたりすることで、事業者が意図する特定の選択へとユーザーを誘導する手法を、ミスディレクション(misdirection、誘導)といいます。
2 どのような問題があるか
ミスディレクションによってユーザーに解約手続を躊躇させる手法は、優良誤認表示や有利誤認表示には該当せず、内閣総理大臣が指定する不当表示(おとり広告やステルスマーケティングなど)にも該当しません。そのため、このような手法は、現行法上、景品表示法の禁止する不当表示には該当しないように思われます。
ただし、ミスディレクションにおいてユーザーに伝えた情報が事実と異なる場合、特定商取引法13条の2が禁止する「申込みの撤回・解除を妨げるための不実告知」に該当するおそれがあります。例えば、「サービスの利用を継続しないと資格試験に合格できない」といった根拠の不明瞭な情報を伝えることは、「申込みの撤回・解除を妨げるための不実告知」に該当しえます。
さらに、ミスディレクションによってユーザーに解約手続を躊躇させる手法は、将来的に、内閣総理大臣によって不当表示に指定される可能性があります。
景品表示法にいう「表示」(同法2条4項)は、「顧客を誘引するための手段」に限定されますが、ここにいう顧客の「誘引」は、新たな取引の勧誘だけではなく、既存の取引の継続を促すことも含まれるとされています。つまり、解約手続の場面における表示も、景品表示法にいう「表示」に含まれます。
例えば、このケースで用いられる手法は、サービスを継続しないことで資格の勉強に挫折するリスクが高まるような先入観を抱かせたり、解約と継続について混乱させたりするもので、「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示」に該当しえます。また、サービスを解約したい消費者に対して、事業者の誘導によって合理的な理由なく解約を躊躇させる効果があり、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれ」のある表示に該当しえます。
消費者庁は、2024年8月頃から、ダークパターンの実態調査を開始しました。今後、調査結果を踏まえて、一部のミスディレクションの手法が不当表示に指定されることも十分に想定されます。
ミスディレクションの手法は、利用者の不信感を招き、利用者離れを生じさせるリスクもあり、ビジネス戦略の観点でも望ましいものではありません。
第8章 フォースドエンロールメント(forced enrollment、強制的な登録)
当社では、資格講座の動画をオンラインで視聴することができるサブスク型サービスを提供しています。各資格の試験終了後に、解答速報を公開しています。解答速報のページを開くと、「解答速報を見るためには、無料会員登録が必要です。」というポップアップが表示されます。「無料会員登録を進める」のボタンをクリックすると、登録フォームに遷移し、氏名、住所、メールアドレスを入力するすることで、無料会員登録を完了することができます。無料会員登録を完了すると、ダイレクトメールやメルマガなどが、定期的に届くようになります。
1 ダークパターンの問題
このケースでは、テイク・アウェイ戦略が採られています。テイク・アウェイとは、ユーザーに対して、「利用したい」という感情を抱かせた後に、利用条件を示すことで、希少価値を高める手法です。このような手法を巧みに利用して、ユーザーに対して過剰に個人情報の入力を促すダークパターンが、「フォースドエンロールメント」(forced enrollment、強制的な登録)です。
2 どのような問題があるか
令和元年12月17日公正取引委員会「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」には、「利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を取得すること」が、独占禁止法の禁止する「優越的地位の濫用」(不公正な取引方法)に該当しうることが示されています。
そして、「消費者が、サービスを利用せざるを得ないことから、利用目的の達成に必要な範囲を超える個人情報の利用にやむを得ず同意した場合には、当該同意は消費者の意に反するものと判断される」場合があることが示されています。
ユーザーの「利用したい」という感情を悪用して過剰に個人情報を収集することは、(ただちに違法行為に該当するとはいえませんが)独占禁止法の観点から望ましくありません。
また、プライバシーに対する意識が高まっている昨今、フォースドエンロールメントの手法により過剰に個人情報を収集してマーケティングなどに利用することは、利用者の不信感につながります。たとえ違法とはいえなくても、ビジネス戦略の観点で望ましくはありません。
第9章 フォースドコンテニュイティ(forced continuity、強制的な継続)
当社では、資格講座の動画をオンラインで視聴することができるサブスク型サービスを提供しています。無料会員登録を完了すると、「有料会員登録後30日無料キャンペーン」の案内が表示されます。キャンペーンに申し込むと、30日限定で有料会員サービスを無料で利用することができます。30日を経過した後は、自動的に月額料金が請求されます。キャンペーン期間が終了する前の通知などは、特に行っていません。
1 ダークパターンの問題
このケースでは、無料キャンペーンへの登録を積極的に促したうえで、キャンペーン期間の終了についてユーザーが認識しづらい仕様にすることで、ユーザーが「解約忘れ」に陥りやすい状況にしています。このような手法を、「フォースドコンテニュイティ」(forced continuity、強制的な継続)といいます。
「フォースドコンテニュイティ」は、解約の方法をユーザーに分かりにくいものにして解約を阻止する「オブストラクション」と併用されることもあります。
2 どのような問題があるか
消費者の「解約忘れ」を利用したダークパターンについて、現行法で規制する法律はありません。
ただ、「解約忘れを悪用したサービス」というイメージが世の中に広まれば、利用者の不信感を招き、利用者離れにつながるおそれがあります。長期的なビジネス戦略の視点からは、このような手法を避けて、利用者の信頼を重視したサービスを目指すことが望ましいです。
第10章 Webデザインにおいて留意すべきこと
ここまで、具体例を挙げながら、代表的なダークパターンを紹介しました。
現状は、ダークパターンを正面から規制する法律はありません。しかし、特定商取引法・景品表示法などにおいて、ダークパターンに関連した規制が、段階的に強化されています。消費者庁は、2024年8月からダークパターンの実態調査を進めており、その結果を踏まえて、新法の制定や、関係法令の改正が進められることも十分に想定されます。
また、ダークパターンについては、報道でも取り上げられるなど、消費者からの関心が年々高まっています。ダークパターンに対する意識を欠いたサービスは、「信頼できない」とのレッテルを貼られ、利用者離れにつながるおそれがあります。
Webデザインにおいては、デザイナーと法務担当者が密に連携して、「ダークパターン」と評価されうる手法を回避することが重要です。
「ダークパターンに陥らないWebデザイン」において最も重要なことは、「消費者の視点」を常に忘れないことです。短期的な顧客の獲得・維持を重視するあまり、「消費者にとってよりよいサービスを目指す」視点をないがしろにすれば、ダークパターンに陥りやすくなります。
「ダークパターンに陥らないWebデザイン」を目指すうえでは、特定商取引法・景品表示法などの専門的な法的知識も必要です。これらの法的知識を有する専門的な人材を社内で確保することが難しい場合は、外部弁護士との連携をおすすめします。
当事務所では、オンラインサービスに関連した様々な問題を気軽に弁護士に相談することができる顧問弁護士サービス(月額1万円~[税別])をご提供しています。顧問弁護士をお探しの際は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。