コラム

ECモールの商標権侵害商品への対応策を弁護士が解説

ケーススタディでわかるオンラインサービスのスタート法務

弁護士 石田 優一

目次

第1章 はじめに
第2章 ECモールの運営事業者は商標権侵害の問題にどのように対応すべきか
1 運営事業者は板挟みの立場
2 運営事業者が商標権者から法的責任を問われるおそれがあるケース
3 出品停止措置に対して出品事業者から法的責任を問われるおそれがあるケース
4 運営事業者に求められる対応
第3章 ECモールの運営事業者が商標権侵害の問題を放置することの代償
1 商標権侵害の法的責任
2 賠償しなければならない損害額は
第4章 運営事業者は商標権を侵害している/侵害していないをどのように判断すべきか
1 商標権の侵害に該当する場合は
2 登録商標との類似/非類似をどうやって判断するか
3 指定商品との類似/非類似をどうやって判断するか
4 出店事業者が正規品の転売であることを主張する場合
第5章 利用規約にどのような規定を盛り込むべきか
1 商標権侵害のおそれがある場合に出品停止措置を講じることができる旨
2 商標権侵害の通報があった場合に出品事業者から合理的説明がない限りは出品停止措置を講じることができる旨
第6章 おわりに

第1章 はじめに

コロナ禍で対面での事業活動が大きく制約される中、飛躍的に進化を遂げたのが、EC(Electronic Commerce、電子商取引)の分野です。Amazonや楽天といったECモールのみならず、様々な創意工夫を凝らした多様な新規ビジネスが、ECの分野に進出しつつあります。

今回のコラムでは、ECモール上での商標権侵害の問題に焦点を当て、ECモールの運営事業者が取り組むべき課題を取り上げたいと思います。

第2章 ECモールの運営事業者は商標権侵害の問題にどのように対応すべきか

1 運営事業者は板挟みの立場

ECモールで販売されている商品が商標権を侵害しているとの通報があった場合、運営事業者としてはどのような対応をすべきでしょうか。

このような状況において、運営事業者は、商品を出品した出品事業者と商標権者との間で板挟みの立場になります。なぜなら、やみくもに出品停止措置を講じれば出品事業者からのクレーム(さらには損害賠償責任の追及)につながるおそれがありますし、かといって出品停止措置を講じなければ商標権者からのクレーム(さらには損害賠償責任の追及)につながるおそれがあるからです。

2 運営事業者が商標権者から法的責任を問われるおそれがあるケース

ECモールの運営事業者の立場からすれば、商品を販売する「場」を提供しているだけで商標権侵害の責任を問われるのはおかしいと思うかもしれません。しかし、裁判例によれば、商標権侵害商品の販売を放置したことに対して、運営事業者が法的責任を問われるおそれがあります。

ECモール上での商標権侵害をめぐって運営事業者の法的責任が問題になった裁判例としては、知財高裁平成24年2月14日判決事件(Chupa Chups事件)があります。

この事件では、「楽天市場」においてChupa Chupsの類似商標を付した商品が出品されたことについて、「楽天市場」を運営していた楽天(株)の商標権侵害への法的責任が争点になりました。判決では、楽天(株)の法的責任は否定されましたが、一般論として、次のような考え方が示されています。

「ウェブページの運営者が、・・・運営システムの提供・出店者からの出店申込みの許否・出店者へのサービスの一時停止や出店停止等の管理・支配を行い、出店者からの基本出店料やシステム利用料の受領等の利益を受けている者であって、その者が出店者による商標権侵害があることを知ったとき又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは、その後の合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り、・・・出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。」

つまり、運営事業者は、出品事業者から収益を得ていて、かつ、出品事業者を利用規約などで縛りをかけて管理・支配することのできる立場にあることから、出品事業者の違法行為について通報があれば速やかにその真否を調査すべきであり、そのような調査を怠ったのであれば、出品事業者とともに法的責任を負わなければならないということです。

ECモールで販売されている商品が商標権を侵害しているとの通報があった場合、運営事業者としては、その商品が本当に商標権を侵害しているのかどうかを調査しなければならず、そのような調査を怠って適切な対応をしなければ、出品事業者とともに法的責任を問われるおそれがあります。

3 出品停止措置に対して出品事業者から法的責任を問われるおそれがあるケース

ECモールの運営事業者は、契約上、出品事業者に対して、商品を販売する「場」を提供する義務を負っています。出品停止措置は、商品を販売する「場」を提供する義務を尽くさないことにほかなりませんので、出品事業者から契約違反を理由にした法的責任(債務不履行責任)を問われるおそれのある措置です。

ただし、出品停止措置を理由に法的責任を問われるケースは、あくまでも「契約上の義務」を尽くさない場合に限られます。商標権侵害が疑われる場合に運営事業者が出品停止措置を講じることができる旨が利用規約の中で適切に定められていれば、このような問題は生じません。詳しくは、第5章にて取り上げます。

4 運営事業者に求められる対応

ECモールで販売されている商品が商標権を侵害しているとの通報があった場合には、運営事業者としては、その商品が本当に商標権を侵害しているのかどうかを迅速に判断することが求められます。

とはいえ、商標権者からのクレームを過度におそれて、商品が商標権を侵害しているおそれがあるかどうかを検討することなくやみくもに出品停止措置を講じれば、出品事業者からのクレームにつながります。

このようなクレームを回避するために、利用規約に「商標権侵害の有無にかかわらず運営事業者の判断で自由に出品停止措置を講じられる」旨を定めることは理論上可能ではあります。ただ、このような恣意的運営を可能にする規定は、出品事業者からの不信感につながるうえに、独占禁止法の観点からも問題があります。

運営事業者には、出品されている商品が商標権を侵害するおそれのある場合/おそれのない場合の判断を、通報内容を踏まえて迅速かつ合理的に行える体制を整えておくことが求められます。

第3章 ECモールの運営事業者が商標権侵害の問題を放置することの代償

1 商標権侵害の法的責任

他人の商標権を侵害した場合、その侵害行為が故意又は過失によるものであれば、損害賠償責任を負わなければなりません(不法行為709条)。そして、商標権の侵害行為があれば、過失があったことが推定されます(商標法39条、特許法103条)。

前章で説明したように、ECモールの運営事業者の場合には、出品事業者が商標権侵害商品を出品していることを知ったとき/知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときから合理的期間内に出品停止措置をとらなかった場合に、損害賠償責任を負います。

商標権侵害商品が出品されている旨の通報を受けたにもかかわらず、その通報内容を踏まえて商標権侵害の有無を判断することを怠った場合、運営事業者が一般的に商標権侵害の有無を判断して出品停止措置を講じるために必要な期間を経過した後に商標権者に生じた損害を賠償しなければならない責任を負うことになります。

2 賠償しなければならない損害額は

(1) 商標権者が商品を販売している場合

商標権者が商品を販売している場合には、次の計算式で算定された金額が、損害の対象となります(商標法38条1項)。運営事業者が一般的に商標権侵害の有無を判断して出品停止措置を講じるために必要な期間を経過した後にECモールで販売された商品数が、損害算定において対象となります。

{【商標権侵害がなければ商標権者が販売することができた商品の単位数量当たりの利益額】×(【ECモールで販売された商標権侵害商品の数量】-【商標権者に販売能力がない数量】-【商標権者が販売することができない事情(商標権者と侵害者の市場が違う、侵害者の営業努力によって販売することができたなど)に相当する数量】)}

{(【商標権者に販売能力がない数量】+【商標権者が販売することができない事情に相当する数量】)×【登録商標の使用に対して受けるべき金銭の額に相当する額】}

「商標権侵害がなければ商標権者が販売することができた商品」かどうかは、商標権侵害商品と同一の商品であるかどうか、販売の態様はどうであったかなどの事情を踏まえて判断されます。商標権者が販売している商品と商標権侵害商品の品質が大きく異なっていたり、商標権者が商品をほとんど販売することができていなかったりする場合、「商標権侵害がなければ商標権者が販売することができた商品」とはいえません。

さらに、商標法には、侵害者が商標権侵害商品の販売によって利益を受けた額を商標権者の損害の額と推定する規定があります(商標権38条2項)。

ECモールでの商標権侵害行為は人気商品を対象に行われることが多いため、算定される損害の額が高額化する傾向にあります。運営事業者としては、商標権侵害行為に対して迅速に対応することが求められます。

また、「登録商標の使用に対して受けるべき金銭の額に相当する額」については、(2)で説明するとおりです。

(2) 商標権者が商品を販売していない場合

商標権者が商品を販売していない場合には、「登録商標の使用に対して受けるべき金銭の額に相当する額」が損害の対象となります(商標法38条3項)。損害算定に当たっては、商標権者と商標権侵害者とが和解的解決のために設定するライセンス料の額を考慮することができる(同条4項)ことから、通常のライセンス料より割高になることが通常です。

商標権者の商品の市場シェアが大きい場合、登録商標に独創性がある場合、登録商標の知名度が高い場合などは、「登録商標の使用に対して受けるべき金銭の額に相当する額」が高額になる可能性があります。

第4章 運営事業者は商標権を侵害している/侵害していないをどのように判断すべきか

1 商標権の侵害に該当する場合は

ECモールに出品された商品が商標権者の商標権の侵害に該当する場合は、(1)出品された商品が登録商標の指定商品と同一・類似であり、かつ、(2)出品された商品に使用された商標が登録商標と同一・類似である場合(商標権37条1号)です。

登録商標の内容やその指定商品は、「J-PlatPat」の検索機能で確認することができます。登録商標との類似/非類似や指定商品との類似/非類似を判断する際には、まずは、登録商標の内容やその指定商品を検索・確認しておくことが必要です。

そのうえで、商標権侵害商品の疑いがある旨の通報内容も踏まえて、登録商標との類似/非類似や指定商品との類似/非類似を判断しなければなりません。

2 登録商標との類似/非類似をどうやって判断するか

(1) 判断基準

登録商標との類似/非類似は、取引において、それぞれの商標が商品に使用されたときに、その商標を付された商品が出所混同を生じるほど紛らわしいことをいいます。出所混同とは、商標権者と出品事業者(あるいは出品された商品のメーカー)が同一人であると誤認することをいいます。

商標が紛らわしいかどうかは、(1)外観(見た目が紛らわしいかどうか)、(2)称呼(言葉で表現したときに聞こえ方が紛らわしいかどうか)、(3)観念(2つの商標から同じような意味のものを連想するかどうか)を中心に、それぞれの商標全体からユーザーがどのような印象を受けるか、どのような記憶が残るか、どのような連想をするかを総合的に判断します。

商標の紛らわしさは、2つの商標を並べた際に紛らわしいかどうかではなく、2つの商標に別の場面で触れた際に紛らわしいかどうかによって判断します。2つの商標を並べれば細かい違いにも気づくことができますが、2つの商標に別の場面で触れると特に印象・記憶・連想につながる部分の違いにしか気づくことができませんので、些細な違いから商標が非類似であると安易に判断しないように留意しなければなりません。商標の紛らわしさを判断する際には、商標全体を観察しつつも、その商標の中で印象・記憶・連想につながりやすい部分を重視しなければなりません。

また、商標の紛らわしさは、その商標が付されている商品のユーザー層も踏まえて判断します。大人向けの商品よりも子ども向けの商品のほうが出所混同のおそれは高くなりますし、専門家や特定の業界人しか使わない商品よりも一般人が使う商品のほうが出所混同のおそれは高くなります。

(2) 具体的にはどのようなプロセスで判断するか

ア 商標の外観が紛らわしいかを検討する

商標の類否判断の考え方は、特許庁のサイトで公開されている「商標審査基準」の「第4条第1項第11号」の説明が参考になります。

商標の外観を比較する際には、2つの商標を横に並べて見比べるのではなく、それぞれ時間をおいて交互に見比べて、同一人の商標であるかのような紛らわしさを感じるかどうかを検討することが重要です。両商標に些細な違いがあったとしても、印象・記憶・連想につながりやすい部分だけを比べると紛らわしさを感じるのであれば、商標の外観が紛らわしい可能性を疑わなければなりません。

また、商標の外観を比較する際には、取引の事情も考慮しなければなりません。例えば、日用品や消耗品であればユーザーが些細な違いに気づかない可能性は高くなりますが、高価品や長期間の使用が予定されている商品であればユーザーが細かい点まで注意を払って些細な違いに気づく可能性が高くなります。

イ 商標の称呼が紛らわしいかを検討する

商標の称呼とは、要するに、その商標を言葉で表現する際に、何と言うかという問題です。1つの商標であったとしても、言葉で表現すれば複数の言い方が考えられるケースもありますので、称呼は1商標に1つとは限りません。

「J-PlatPat」の検索機能で登録商標を検索すると「称呼」が記載されていますが、これはあくまでも参考情報にすぎませんので、絶対的に記載される「称呼」に拘束されるわけではありません。ただし、商標の称呼が紛らわしいかを検討するうえで、「J-PlatPat」において参考情報として記載された「称呼」を確認しておくこと自体は重要です。

商標の称呼についての判断方法は、「商標審査基準」の「第4条第1項第11号」の説明の中で詳しく取り上げられています。具体的には、商標の称呼に対する印象や記憶の残り方は、その称呼のアクセントや、語の切れ目、子音・母音の位置その他の様々な事情によって異なることから、そのような事情を踏まえて称呼の紛らわしさをどのように検討すべきか、特許庁の基本的な見解が示されています。

ウ 商標の観念が紛らわしいかを検討する

商標の外観や称呼が紛らわしいとまでは言いがたい場合でも、観念の紛らわしさまで考慮した結果、商標の類似が認定されるケースがあります。

例えば、「ともだち」と「フレンド」は、外観や称呼は全く異なりますが、その意味内容が共通していることはユーザーが容易に理解することができるため、観念の紛らわしさが認められます。また、「おさんぽペンギン」や「ペンギンのおさんぽ」のように、印象的な特徴があまりない2語を並べて1つの商標にしているケースでも、「ペンギン」「おさんぽ」のどちらが先であるかによって特に意味の違いを見出せないことから、観念の紛らわしさが認められます。

エ 容易に判断がつかない場合には

基本的な考え方は以上のとおりです(結合商標など発展的な問題は他にもあります)が、実際のケースにおいて商標の類否を判断することは容易ではありません。まずは自社の担当者レベルで検討したうえで、商標の類否を明確に判断することができないのであれば、出品事業者からの意見も聴いたうえで、弁護士などの専門家に相談することが望ましい対応です。

(3) ECモールの運営において重要な視点

登録商標との類似/非類似は、商標権侵害の成否が問題になった場合に主たる争点となることが多く、かつ、専門家でも正確な判断をすることが困難であることが多々あります。

ECモールの運営において重要なことは、商標権を侵害しているとの通報を受けて出品停止措置を講じるかどうかを決定する際に、適切なプロセスを経て合理的な判断を行うことです。絶対的に正確な判断はできないとしても、自社としてどのような理由づけ・論拠で判断したかを説明することができるように、プロセスを重視した判断を心がけることが重要です。

それに加え、出品停止措置を講じた場合でも、講じなかった場合でも、どのような事情を考慮して判断したかを、記録として残しておくことも重要です。商標権者又は出品事業者から万が一法的責任を問われた場合に、運営事業者として合理的な判断を行ったことを明らかにするための有力な資料になります。

3 指定商品との類似/非類似をどうやって判断するか

(1) 判断基準

指定商品との類似/非類似は、商品の製造・取引状況・品質・用途その他の事情を考慮したうえで、同じ商標を付した場合に混同が社会通念上生じるおそれがあるかどうかによって判断されます。混同が社会通念上生じるおそれがあるかどうかは、商標権者と出品事業者(あるいは出品された商品のメーカー)が同一人であると誤認するかどうかによって判断されます。

(2) 具体的にはどのようなプロセスで判断するか

ア 類似商品・役務審査基準を確認する

指定商品との類似/非類似を判断するうえでは、特許庁のサイトで公開されている「類似商品・役務審査基準」が特に参考になります。

例えば、「化粧品」は「第3類」に分類されますが、「類似商品・役務審査基準」の「各区分の代表的な商品・役務」「第3類」によれば、「化粧品」と頭髪の脱色剤、香水などは類似と推定される旨が記載されています。

ただし、「類似商品・役務審査基準」は絶対的な基準ではなく、あくまでも有力な参考情報として理解すべきです。

イ 指定商品と出品された商品を比較する

さらに、次のような事情を踏まえて、指定商品と出品された商品との間に、同じ商標が付されると商標権者と出品事業者(あるいは出品された商品のメーカー)が同一人であると誤認されるおそれがどれくらいあるかを検討します。

具体的には、次のような事情を踏まえる必要があります。

・一般に同じ企業が製造するような商品であるかどうか
・一般に同じ企業が販売するような商品であるかどうか
・商品の原材料や品質が一致しているかどうか
・商品の用途が一致しているかどうか
・商品のユーザーとして想定される範囲が一致しているかどうか
・両商品が完成品と部品の関係性にあるかどうか

(3) ECモールの運営において重要な視点

指定商品との類似/非類似は、商標権侵害の成否が問題になった場合に重要な争点となることも珍しくなく、正確な判断をすることが容易ではありません。

商標の類似/非類似の判断と同様に、適切なプロセスを経て合理的な判断を行うこと、そして、それがどのような事情を考慮した判断であるかを記録として残しておくことが重要です。

4 出店事業者が正規品の転売であることを主張する場合

(1) 正規品の転売は商標権侵害にならないか

ECモールにおいては、新品の販売ではなく、正規品としていったん市場に流通した商品を中古品としてECモール上で転売するケースがあります。

正規品としていったん市場に流通した商品を、そのままの形で転売するだけであれば、商標権侵害ではないものと考えられます。なぜなら、このようなケースでは、購入者は、商品に付された商標が、その商品をはじめに市場に流通させた販売業者やメーカーの商標であると理解することが通常ですし、正規品をそのままの形で転売している以上、正規品としての品質が害されることもないからです。

(2) 正規品の形を変えて転売する場合は商標権侵害にならないか

正規品としていったん市場に流通した商品を中古品として転売するのであれば、原則として商標権侵害にはなりません。ただし、次のようなケースでは、商標権侵害の問題が生じます。

・商品のパッケージを開封して小分けしたり詰め替えたりしたうえで再包装した場合
・商品の不良を修繕してから販売した場合
・使用済み商品を加工して販売した場合

このような場合には、当初のメーカーが商品の再包装・修繕・加工を施したものと誤認されるおそれがありますし、再包装・修繕・加工の過程の中で品質に影響が生じるおそれもあることから、商標権侵害になりうるとされています。

(3) 並行輸入品を販売する場合は商標権侵害にならないか

正規品であったとしても、日本国内と日本国外の双方で販売されている商品について、日本国外で販売されたものを日本国内に輸入して再販売する場合(並行輸入)には、商標法上の問題が生じます。

このようなケースでは、次のすべての要件を満たさない限り、商標権侵害となりえます。

(a) 出品した商品(日本国外で販売されていたものを輸入した商品)に付されている商標が適法に付されたものであること
(b) 日本国内の商品の商標権者と日本国外の商品の商標権者とが、同一であるか、法律上・経済上同一であると同視することができること(グループ関係・提携関係にある場合など)
(c) 日本国内の商品の商標権者が直接・間接に商品の品質管理ができ、日本国内と日本国外で販売されている商品の間に品質の実質的な差がないこと(ユーザーにとって日本国内の商品と日本国外の商品のいずれを購入しても大差ないと思えるような共通の品質管理がされていること)

運営事業者としては、出品事業者が正規品を日本国外から輸入したことを主張する場合、上記の要件を満たしていることをきちんと確認したうえで輸入したのかどうか、出品事業者に確認することが必要です。

第5章 利用規約にどのような規定を盛り込むべきか

本章では、商標権侵害商品にトラブルなく対応するために、利用規約にどのような規定を盛り込んでおくべきかを説明します。

1 商標権侵害のおそれがある場合に出品停止措置を講じることができる旨

利用規約において必ず規定しておかなければならないのが、出品事業者が出品した商品が商標権を侵害するおそれがある場合に、その商品の出品を運営事業者の判断で停止する(出品停止措置)ことができる旨の規定です。

ここで注意すべき点は、「商標権を侵害する場合」だけではなく、「商標権を侵害するおそれがある場合」も、出品停止措置を講じることができる旨を示しておくべきことです。前章で取り上げたように、商標権の侵害の有無を正確に判断することは困難を伴います。そのため、運営事業者が合理的に判断した結果、「商標権を侵害するおそれがある」と判断した場合にも、出品停止措置を講じることができる旨を明確にしておくことは重要です。

2 商標権侵害の通報があった場合に出品事業者から合理的説明がない限りは出品停止措置を講じることができる旨

商標権侵害の通報を受けた場合には、運営事業者としてはその真否を迅速に判断することが求められますが、実際には、出品事業者からの意見も聴かなければ、真否の判断ができないケースも珍しくありません。

そこで、(1)商標権侵害の通報があった場合には、その通報内容に明らかに理由がない場合を除いていったん出品停止措置を講じることができ、(2)出品事業者から商標権侵害に該当しない旨の合理的説明があった場合に限り、出品停止措置を解除する旨の規定を設けておくことをおすすめします。

第6章 おわりに

Web Lawyersでは、ECモールの運営事業者が法的責任を問われないための堅牢な利用規約を作成するサービスや、商標権侵害を理由にした出品停止措置の必要性を判断することができない場合に弁護士からアドバイスを受けられるサービスをご提供しています。

ECモールをこれから運営されようとしている事業者様、すでにECモールを運営していて堅牢な利用規約や商標権侵害の問題に迅速に対応できる体制のない事業者様には、Web Lawyersのサポートを利用されることをおすすめいたします。

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