コラム

前払式支払手段の「資金決済法に基づく表示」を弁護士が解説(令和2年改正対応)

目次

第1章 はじめに
第2章 資金決済法に基づく表示(令和2年改正で追加されるものを除く)の方法
1 利用者に商品券やプリペイドカードなどを提供するケース
2 紙やカードなどを交付することなくオンラインで提供するケース
3 利用者に利用IDが記載された紙を提供するケース
4 「資金決済法に基づく表示」のタイミング
第3章 資金決済法に基づく表示(令和2年改正で追加されるものを除く)の記載例
1 前払式支払手段の名称
2 発行者の氏名・商号・名称【法13条1項1号】
3 前払式支払手段の支払可能金額等【法13条1項2号】
4 有効期間・有効期限【法13条1項3号】
5 利用者からの苦情・相談に応じる窓口の所在地・連絡先【法13条1項4号】
6 利用可能な施設・場所の範囲【内閣府令22条2項1号】
7 利用上の注意【内閣府令22条2項2号】
8 未使用残高または未使用残高を確認する方法【内閣府令22条2項3号】
9 約款・利用規約があること【内閣府令22条2項4号】
第4章 利用者保護を図るための情報提供(令和2年改正で追加されるもの)
1 令和2年資金決済法改正
2 利用者保護を図るための情報提供の方法
3 利用者保護を図るための情報提供の記載例(改正内閣府令23条の2第1項)
第5章 おわりに

第1章 はじめに

これまで、3回にわたり、前払式支払手段を発行するために必要なノウハウを解説しました。過去のコラムについては、以下を参照してください。

前払式支払手段の資金決済法対応1-コンプライアンス編
前払式支払手段の資金決済法対応2-情報セキュリティ編
前払式支払手段の資金決済法対応3-発行保証金編

今回は、連載コラムの最終回として、「資金決済法に基づく表示」をテーマに取り上げます。資金決済法では、前払式支払手段の利用者のために、所定の事項について情報提供をしなければならないことが義務づけられています。また、令和2年の資金決済法改正により、新たに情報提供をしなければならない事項が追加されています。

今回のコラムでは、「資金決済法に基づく表示」をどのように作成すればよいかについて、具体例を挙げながら詳しく説明したいと思います。また、従来から義務づけられていた「資金決済法に基づく表示」のほか、令和2年の資金決済法改正に伴って新たに利用者保護を図るための情報提供義務が追加されることを受けて、従来の「資金決済法に基づく表示」以外の利用者保護を図るための情報提供の方法についても取り上げます。

第2章 資金決済法に基づく表示(令和2年改正で追加されるものを除く)の方法

1 利用者に商品券やプリペイドカードなどを提供するケース

利用者に紙やカードなどの有体物を交付することによって前払式支払手段を発行する場合で、前払式支払手段を利用する際にその有体物を提示・交付しなければならないものであれば、その有体物に対して「資金決済法に基づく表示」をしなければなりません(内閣府令21条1項)。

つまり、商品券であればその紙面上に、プリペイドカードであればそのカード上に、それぞれ「資金決済法に基づく表示」を印刷する必要があります。

2 紙やカードなどを交付することなくオンラインで提供するケース

前払式支払手段をオンラインで提供する場合は、次のいずれかの方法により、「資金決済法に基づく表示」をしなければなりません(内閣府令21条2項)。

(a) 前払式支払手段発行者の使用に係る電子機器と利用者の使用に係る電子機器とを接続する電気通信回線を通じて送信し、当該利用者の使用に係る電子機器に備えられたファイルに記録する方法(1号)

「資金決済法に基づく表示」を電子メールで送信する場合には、利用者側の受信用メールサーバー(利用者の使用に係る電子機器)にそのメールの内容が保存されることから、これに該当します。

(b) 前払式支払手段発行者の使用に係る電子機器に備えられたファイルに記録された情報の内容を電気通信回線を通じて利用者の閲覧に供し、当該利用者の使用に係る電子機器に備えられたファイルに当該情報を記録する方法(2号)

「資金決済法に基づく表示」を前払式支払手段を提供するサイト上に掲載する場合は、オンラインでその表示の掲載されたページを閲覧する方法であり、かつ、利用者の端末(PC・スマートフォン・タブレットなど)がそのページの情報をメモリ上に保存することから、これに該当します。

(c) 利用者の使用に係る電子機器に情報を記録するためのファイルが備えられていない場合に、前払式支払手段発行者の使用に係る電子機器に備えられたファイル(専ら利用者の用に供するものに限る。・・・)に記録された当該情報を電気通信回線を通じて利用者の閲覧に供する方法(3号)

(a)(b)いずれの方法によることもできない場合に、「資金決済法に基づく表示」を発行者のサーバーにアクセスして閲覧することができるようにする方法が、これに該当します。この場合は、発行者のサーバーに、「資金決済法に基づく表示」を3か月以上保存しなければなりません(内閣府令21条4項2号)。

3 利用者に利用IDが記載された紙を提供するケース

利用者に利用IDが記載された紙を提供するケースは、1と同様に有体物を交付するものですが、前払式支払手段を利用する際にその有体物を提示・交付しない(利用IDをサイトのフォームなどに入力して利用する)ことが一般的です。

このような場合には、その紙自体に「資金決済法に基づく表示」を印刷する必要はなく、2のオンラインで提供するケースと同様の方法で「資金決済法に基づく表示」をすればよいことになっています。

4 「資金決済法に基づく表示」のタイミング

「資金決済法に基づく表示」を有体物に印刷するのではなく、電子メールやサイト上などで提供するケースであれば、その表示のタイミングが問題になります。

ガイドラインによれば、電子メールやサイト上などで提供するケースにおいては、(1)前払式支払手段を購入させる段階で利用者に確認させるようになっていることと、(2)購入後も利用者が確認することができるようになっていることが必要です(Ⅱ-2-1-1)。

たとえサイト上で「資金決済法に基づく表示」を表示していたとしても、前払式支払手段の購入手続の際に「資金決済法に基づく表示」を確認させる仕様にしておくことが必要です。

具体的には、購入手続の際に、資金決済法に基づく表示を確認する画面を表示して、確認済ボタンをクリックしない限りは購入手続を完了することができない仕様にすることが考えられます。

第3章 資金決済法に基づく表示(令和2年改正で追加されるものを除く)の記載例

ここからは、オンラインサービスでプリペイドポイントを発行する場合の「資金決済法に基づく表示」の記載例に沿って、どのような事項について情報提供をしなければならないかを説明したいと思います。

内閣府令22条1項では、資金決済法に基づく表示について、「前払式支払手段を一般に購入し、又は使用する者が読みやすく、理解しやすいような用語により、正確に情報を提供しなければならない」と定められています。資金決済法に基づく表示では、難解な法律用語や業界用語を避けて、想定される利用者にとって分かりやすい記載をするように心がける必要があります。

1 前払式支払手段の名称

【前払式支払手段の名称】
○○○サービスポイント

前払式支払手段の名称を表示する義務はありませんが、前払式支払手段の種類ごとに名称をつけて、「資金決済法に基づく表示」を分ける形式にしたほうが、利用者に分かりやすく表記することができます。

2 発行者の氏名・商号・名称【法13条1項1号】

【発行者の氏名・商号・名称】
株式会社◇◇◇

法人であれば法人名、個人事業主であれば氏名を記載します。

3 前払式支払手段の支払可能金額等【法13条1項2号】

【支払可能金額等】
・1ポイントは、10円に相当します。
・お客様が保有することができる上限は、999万9999ポイントです。

前払式支払手段で支払に充てることができる金額や交換することができる物品の数量を表示しなければなりません。ただし、プリペイドポイントのような増減を伴う前払式支払手段については、上限を表示しておけばよいことになっています(内閣府令5条)。

利用規約上では購入可能額が無制限のプリペイドポイントであったとしても、システムの仕様上で購入額に限度が生じること(一定ポイントを超えるとシステムの仕様上処理することができないケースなど)がありますので、その点の確認も必要です。

また、利用者の年齢によって上限額が異なるケースでは、それぞれ表示が必要です。

4 有効期間・有効期限【法13条1項3号】

【有効期間】
ポイントは、お客様が本サービスを利用した最終日の翌日から起算して1年を経過した時点で失効します。

前払式支払手段に有効期間・有効期限がある場合には、具体的な期間・期限の表示が必要です。期限がない場合は、「無期限」などと表示しておくことが利用者にとって分かりやすい対応です。

5 利用者からの苦情・相談に応じる窓口の所在地・連絡先【法13条1項4号】

【お客様からの苦情・相談に応じる窓口】
営業所の所在地:
大阪府大阪市北区梅田○○○ABCビル1階○○○サービスお客様相談室
連絡先:
TEL:○○-※※※※-※※※※(平日9:00~17:00)
メール:abc@abc.ab

利用者からの苦情・相談に応じる窓口の所在地・連絡先の表示が必要です。

なお、設置した窓口は、コンプライアンス上の問題やシステムトラブルなどが発覚する端緒となりうる重要な機関や、コンプライアンスやシステムリスク管理に関する組織体制の中に組み入れる必要があります。この点については、前払式支払手段の資金決済法対応1-コンプライアンス編前払式支払手段の資金決済法対応2-情報セキュリティ編もご参照ください。

6 利用可能な施設・場所の範囲【内閣府令22条2項1号】

【利用可能な施設・場所の範囲】
○○○サービスのサイト内でのみ利用することができます。

前払式支払手段を利用することができるコンテンツやサービス、施設名などを特定する必要があります。

7 利用上の注意【内閣府令22条2項2号】

【利用上の注意】
○○○サービスポイントのご利用上の注意につきましては、○○○利用規約(URL・・・)及び○○○サービスサイト内の各販売画面に表示しております「注意事項」をご参照ください。

利用上の注意につきましては、資金決済法に基づく表示の中で具体的に表記する方式でも、記載されている箇所を明示する方法でも、いずれでも差し支えないです。

8 未使用残高または未使用残高を確認する方法【内閣府令22条2項3号】

【未使用残高を確認する方法】
未使用残高は、○○○サービスのサイト内のマイページ(URL・・・)にログインしていただきますと、同ページ内に「ポイント残高」として表示されます。

未使用残高の金額自体を「資金決済法に基づく表示」の中で明示する必要はなく、未使用残高を確認する方法を明らかにすることで足ります。

9 約款・利用規約があること【内閣府令22条2項4号】

【約款・利用規約】
○○○サービスポイントの利用規約につきましては、○○○利用規約(URL・・・)をご確認ください。

資金決済法に基づく表示には、最低限、利用者に適用される約款や利用規約の存否を明示しておかなければなりません。利用者への分かりやすさを考えると、約款や利用規約の掲載されるURLを表示しておくことが望ましいです。

第4章 利用者保護を図るための情報提供(令和2年改正で追加されるもの)

1 令和2年資金決済法改正

令和2年資金決済法改正により、内閣府令に定める「前払式支払手段の利用者の保護を図り、及び前払式支払手段の発行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要な措置」を講じなければならないことが義務づけられます(改正法13条3項)。

これを受けて、「前払式支払手段に関する内閣府令」改正案23条の2では、利用者保護を図るために、発行保証金に関する情報提供と、前払式支払手段の不正利用によって発生した利用者への対応方針に関する情報提供を義務づけています。

2 利用者保護を図るための情報提供の方法

利用者保護を図るための情報提供の方法は、「書面の交付その他の適切な方法」によらなければならないことは定められています(改正案23条の2第1項)が、それ以上に具体的な方法は定められていません。そのため、必ずしも、資金決済法に基づく表示と同様の方法で表示する必要はありません。

もっとも、ガイドライン改正案では、「利用者の正確な理解を妨げない範囲で、実務を踏まえた合理的な方法により、漏れなく・・・利用者に提供される」ようにしなければならないとされています(Ⅱ―2-1-1③)。

利用者に対する分かりやすさを考えると、利用者保護を図るための情報提供についても、資金決済法に基づく表示と同様の方法で表示することが望ましいものと考えられます。資金決済法に基づく表示の中に含めて表示することも許容されるものと考えられます。

3 利用者保護を図るための情報提供の記載例(改正内閣府令23条の2第1項)

(1) 資金決済法14条1項の趣旨及び同法31条1項に規定する権利の内容(1号)

弊社は、事業の破綻によって本サービスを利用することができなくなることによって生じるリスクから利用者の皆様を保護するために、資金決済法14条1項に基づいて、基準日未使用残高(毎年3月31日・9月30日時点における未使用残高で、資金決済法3条2項に定めるところにより算出したものをいいます。)の2分の1以上の金額を供託しています。
利用者の皆様には、こちらの供託金(発行保証金)から、前払式支払手段に係る債権に関して、弊社に対する他の債権者よりも優先して弁済を受ける権利がございます。

ガイドラインでは、具体的な記載方法については示されていません。上記はあくまでも参考例です。

なお、資金決済法14条1項については、「前払式支払手段の資金決済法対応3-発行保証金編」で解説していますので、詳しくはそちらをご参照ください。

(2) 発行保証金の保全の方法(2号)

弊社は、資金決済法14条1項に基づく発行保証金について、株式会社○○銀行との間で発行保証金保全契約を締結する方法によって保全しています。

発行保証金の保全として供託・発行保証金保全契約・発行保証金信託契約のいずれを選択するかを表示するとともに、発行保証金保全契約・発行保証金信託契約を選択した場合には、契約先の金融機関なども表示しなければなりません。

(3) 利用者の意思に反して権限を有しない者の指図が行われたことにより発生した利用者の損失の補償その他の対応に関する方針(3号)

・弊社は、本プリペイドポイントが、お客様以外の第三者によって、お客様の意思に反して権限なく利用されてしまった(以下「不正利用」といいます。)際におけるお客様への補償について、次のとおり対応いたします。
(a) 弊社は、(c)に掲げる方法によりお客様から不正利用の通報を受けた際は、速やかに事実関係を調査いたします。その結果、当該不正利用の原因が(b)に掲げる補償事由に該当することが明らかになった場合においては、当該不正利用によってお客様が利用することのできなくなった本プリペイドポイントの価額に相当する額を、お客様にご返金いたします。
(b) 不正利用の補償事由は、次のとおりとします。
・・・(省略)・・・
(c) 不正利用の通報につきましては、下記の窓口宛にお願いいたします。
・・・(省略)・・・
・不正利用に対するお客様への補償の手続について、詳しくは以下のページにご案内がございます。不正利用の被害に遭われたお客様は、当該ページもご参照ください。
・・・(省略)・・・

上記は、ガイドラインで示される要件に沿って、大まかな参考例を示したものです。実際に表示内容を検討する際には、不正利用に対する補償の方針について詳細に検討したうえで、利用者に提供することが有益な情報を漏れなく(できれば簡潔に)記載する必要があります。

第5章 おわりに

このコラムでは、前払式支払手段を発行するために必要な資金決済法対応のうち、「資金決済法に基づく表示」と令和2年改正で義務づけられる利用者保護を図るための情報提供について取り上げました。

Web Lawyersでは、弁護士が御社のビジネスをサポートする様々な顧問プランをご提供しています。資金決済法対応にお困りでしたら、ぜひ、顧問プランをご検討ください。

PAGE TOP