コラム

オンラインビジネスに必要な法律知識を弁護士が徹底解説

オンラインビジネスに必要な法律知識を弁護士が徹底解説

 

弁護士・登録情報セキュリティスペシャリスト 石田 優一

目次

第1章 はじめに
第2章 通信販売のルールを理解する
1 通信販売には特定商取引法が適用される
2 特定商取引法に基づく表記
3 電子メールでの広告をする際の注意点
4 代金前払制にする場合の注意点
5 誇大広告には要注意
6 申込み画面の仕様にも注意
7 オンラインビジネスを始める前に気をつけたいポイント
第3章 プリペイド制を導入するならば資金決済法に注意
1 オンラインサービスとプリペイド制
2 資金決済法が適用されるプリペイド制・適用されないプリペイド制
3 資金決済法が適用される場合
4 オンラインビジネスを始める前に気をつけたいポイント
第4章 業法規制
第5章 プライバシーポリシー作成のポイント
1 プライバシーポリシーを用意しましたか
2 個人情報の利用目的の特定
3 契約締結に伴う個人情報の取得
4 保有個人データに関する開示等の手続
5 Googleアナリティクスを導入する際の留意点
6 その他
第6章 利用規約作成のポイント
1 利用規約は何のために必要か
2 他社サイトの利用規約を参考にしてもよいのか
3 利用規約を作成する際に意識すべきポイント
第7章 おわりに

第1章 はじめに

新型コロナ禍のもとで、対面型ビジネスが大きく制約されることになり、それをきっかけに、オンラインでのビジネス(オンラインビジネス)に参入する企業が増えてきています。アフターコロナ時代においても、オンラインビジネスは、新時代を支えるビジネスモデルとして普及していくことが予想されます。

すでに対面型ビジネスを営業している方がオンラインビジネスに参入する場合には、ビジネスの法律問題について意識しないことが多いかもしれません。しかし、オンラインビジネスにおいては、対面型ビジネスにおいては問題にならない特定商取引法資金決済法、さらには業界特有の法規制が新たに適用されることが多々あります。また、オンラインビジネスにおいては、プライバシーポリシー利用規約を整備することも必要です。

このコラムでは、オンラインビジネスに参入する前に必ず知っておきたい法律知識を、弁護士が徹底解説します。

第2章 通信販売のルールを理解する

1 通信販売には特定商取引法が適用される

事業者がインターネット上で有償での商品やサービスを提供する契約を結ぶことは、特定商取引法にいう「通信販売」に該当します(法2条2項)。

通信販売という言葉から一般に連想されるのは、テレビショッピングやAmazonのようなショッピングサイトです。ただ、そのような典型的なものだけではなく、例えば、次のような事例も、通信販売に該当します。

(1) 中華料理店が、自社サイトで出前サービスの注文を受けること

(2) 有料のセミナーを開催するために、自社サイトで参加者を受け付けて、オンライン上で受講料を決済すること

(3) 個人が運営するサイト上でお悩み相談窓口を開設し、Zoomで申込者にアドバイスを行い、アドバイス料を徴収すること

このように、オンラインビジネスとして想定されるものの多くは、特定商取引法の通信販売に該当しますので、そのルールをきちんと守らなければなりません。

ここからは、特定商取引法が定める通信販売のルールについて、詳しく説明します。

※弁護士業務については、特定商取引法が適用除外とされていますので、後述する特定商取引法に基づく表記は本サイト上では行っておりません。ただし、日弁連が定めるルールや、特定商取引法の趣旨に鑑みて、必要な広告上の配慮を行っております。

2 特定商取引法に基づく表記

(1) 特定商取引法に基づく表記にはどのような意味があるか

通信販売において価格などの条件を広告する際には、特定の事項を表示すべきことが義務づけられています。通信販売においては、広告を頼りにしか商品やサービスの良し悪しを判断することができないため、「正しい判断」のために必要な事項を必ず表示することを事業者に義務づけて、事業者と顧客との間での消費者トラブルの発生を防ぐ目的があります。

法律上は、表示すべき項目や、契約解除・申込みの撤回の可否について認識しやすいように表示すべき旨のほか、表示方法について明確なルールはありません。もっとも、一般的なオンラインビジネスにおいては、必要な表示項目をまとめて記載した「特定商取引法に基づく表記」「特定商取引法に基づく表示」というタイトルが使用されることもあります。)を作成して、顧客が認識しやすいようにサイト上などに掲載することが一般的です。有名なショッピングサイトを検索していただけば、「特定商取引法に基づく表記」(「特定商取引法に基づく表示」)が必ず見つかります。

ここからは、「特定商取引法に基づく表記」の書き方と留意点を、表示項目ごとに説明したいと思います。

(2) 特定商取引法に基づく表記に記載すべき項目

 

特定商取引法に基づく表記(例)
(1) 販売業者の名称・住所・電話番号
名称 株式会社みお
住所 大阪府大阪市梅田・丁目・番・号・・ビル・階
電話 06-××××-××××
(2) 販売業者の責任者
株式会社みお 販売部門責任者 みお 太郎
(3) 商品の販売価格
各商品のご購入ページに表示しています。
(4) 商品の販売価格以外に必要となる負担
配送地域や商品の種類によって異なります。詳しくはこちらのページをご覧ください。
(5) 商品の販売価格の支払方法
銀行振込、クレジットカード又は下記の電子マネーによりお支払いいただけます。
・×××××
・×××××
・×××××
(6) 商品の販売価格の支払時期
【銀行振込】
商品の到達日の翌日から7日以内にお支払いください。
【クレジットカード】
ご利用のクレジットカードの締め日や契約内容によって支払時期が異なります。クレジットカード会社にお問い合わせください。
【電子マネー】
ご利用の電子マネーによって支払時期が異なります。詳細につきましては、次のリンク先の説明をご覧ください。
・××××× URL:https://・・・
・××××× URL:https://・・・
・××××× URL:https://・・・
(7) 商品の引渡時期
ご注文があった日から3営業日以内に発送いたします。なお、営業日とは、土日、祝日、1月2日、1月3日、12月31日以外の日をいいます。
(8) 返品・キャンセルに関する特約
商品のご購入手続が本サイト上で完了した場合には、(9)に掲げる場合を除くほかは、返品(ご購入契約の解除)やお申し込みのキャンセル(撤回)をお受けしておりません。
(9) 契約不適合責任に関する特約
当社は、商品に民法上の契約不適合があった場合における解除、損害賠償その他の契約不適合責任について、お客様が商品を受領した日の翌日から1年以内に限り、負うものとします。
(10) 商品がソフトウェア・CD・DVDである場合の仕様
商品がソフトウェア・CD・DVDである場合の仕様につきましては、各商品のご購入ページに表示しています。必ずご購入前にご確認ください。
(11) 販売業者(役務提供事業者)のメールアドレス
×××@××.××

 

特定商取引法に基づく表記に記載すべき項目は、次のとおりです。はじめに、各項目の記載例を示しています。

ア 販売業者(役務提供事業者)の氏名・名称と住所・電話番号

 

(1) 販売業者の名称・住所・電話番号
名称 株式会社みお
住所 大阪府大阪市梅田・丁目・番・号・・ビル・階
電話 06-××××-××××

商品の通信販売を行う事業者は「販売業者」、サービスの通信販売を行う事業者は「役務提供事業者」です。

(a) 氏名・名称

個人事業主の場合は、戸籍上の氏名を記載しなければなりません。また、法人の場合は、登記上の商号を記載しなければなりません。通称の表示では要件を満たしたことになりませんので、注意が必要です。

(b) 住所

個人事業主の場合は、実際に本拠としている住所を記載しなければなりませんので、転居して転出・転入手続などが未了である場合には、住民票上の住所の記載では足りないことに注意が必要です。個人事業主の場合、自宅と事業所の住所が異なるのであれば、事業所の住所を表示すれば足ります。

ただし、自宅で事業を行っていて、サイト上で住所を公開することに抵抗がある場合には、サイト上には「請求があった場合には遅滞なく電子メールで住所の情報を提供する」旨を表示し、実際にそのような対応をすることで、住所をサイト上で公開することを回避することができます。

(c) 電話番号

個人事業者・法人事業者ともに、電話番号を記載すべき義務があります。

ただし、いわゆる迷惑電話の被害に遭うことを防ぐために、サイト上で電話番号を公開したくない場合には、サイト上には「請求があった場合には遅滞なく電子メールで電話番号の情報を提供する」旨を表示し、実際にそのような対応をすることで、電話番号をサイト上で公開することを回避することができます。

イ (法人の場合)販売業者(役務提供事業者)の責任者(特に責任者を設けなければ代表者)の氏名

(2) 販売業者の責任者
株式会社みお 販売部門責任者 みお 太郎

法人事業者がインターネット上で通信販売の広告をする場合には、責任者の氏名を明示しなければなりません。責任者を設けない場合には、代表者(複数の代表者がいる場合にはそのうちの1名以上)の氏名を明示しなければなりません。責任者としては、実際に通信販売業務を取り扱っている部署の責任者を明示する必要があります。

ウ 販売価格(サービスの対価)

(3) 商品の販売価格
各商品のご購入ページに表示しています。

販売価格については商品・サービスごとに異なりますので、特定商取引法に基づく表記の中では表示されている場所を明示することが一般的です。法律上は、あえてこのような明示を商品購入ページと別にする義務はありませんが、消費者トラブルを防ぐ観点からは、念のため、特定商取引法に基づく表記にも記載例のような明示をしておくことが望ましいです。

エ 販売価格(サービスの対価)以外に負担すべき金銭の内容・額

(4) 商品の販売価格以外に必要となる負担
配送地域や商品の種類によって異なります。詳しくはこちらのページをご覧ください。

商品については、販売価格と送料が別になっている場合には、必ず送料も明示しなければなりません。送料については、最高送料と最低送料・平均送料・送料の数例等の表示でもよいとされていますが、消費者トラブルを防ぐ観点からは、配送地域や商品の重量による送料の違いを表や図で示したページへのリンクを貼っておくことが望ましいです。特定の業者を配送に利用する場合には、その業者の料金表が記載されたページにリンクを貼ることでも差し支えないですが、リンク切れが発生することがないように注意が必要です。

また、オンラインで提供するサービスについては、「インターネット接続料金その他の電気通信回線の通信に関する費用はお客様のご負担となります」といった表記をしておくことが望ましいです。

オ 販売価格(サービスの対価)の支払方法

(5) 商品の販売価格の支払方法
銀行振込、クレジットカード又は下記の電子マネーによりお支払いいただけます。
・×××××
・×××××
・×××××

支払方法については、上記の例のように、具体的な方法を漏れなく列挙しておく必要があります。消費者への利便性の観点からは、具体的に利用することができるクレジットカードや電子マネーのサービス名も明示しておくことが望ましいです。

カ 販売価格(サービスの対価)の支払時期

(6) 商品の販売価格の支払時期
【銀行振込】
商品の到達日の翌日から7日以内にお支払いください。
【クレジットカード】
ご利用のクレジットカードの締め日や契約内容によって支払時期が異なります。クレジットカード会社にお問い合わせください。
【電子マネー】
ご利用の電子マネーによって支払時期が異なります。詳細につきましては、次のリンク先の説明をご覧ください。
・××××× URL:https://・・・
・××××× URL:https://・・・
・××××× URL:https://・・・

販売価格(サービスの対価)の支払時期については、支払方法の種別によって異なるため、別々に記載する必要があります。支払時期は、顧客が「何月何日までに支払わないといけないか」を特定することができる方法によって記載しなければなりません。

もっとも、クレジットカードや電子マネーについては会社によって決済方法が異なることから、上記の例のように、会社への問合せを求める旨を記載するか、それぞれの会社のサイトの説明ページへのリンクを掲載するのが一般的です。なお、リンクを掲載するに当たっては、リンク切れが発生しないように注意してください。

キ 商品を引き渡す時期(サービスを提供する時期)

(7) 商品の引渡時期
ご注文があった日から3営業日以内に発送いたします。なお、営業日とは、土日、祝日、1月2日、1月3日、12月31日以外の日をいいます。

引渡時期は、顧客が「何月何日までに支払わないといけないか」を特定することができる方法によって記載しなければなりません。上記の例のように「営業日」という用語を使用する場合、営業日は事業者によって異なることから、営業日の定義を示しておくべきです。

なお、商品を他社に依頼して配送することを予定する場合については、発送日を基準に引渡時期を記載することも差し支えないと考えられます。

ク 申込みの有効期限(定める場合)

オンラインビジネスにおいては、顧客がインターネット上で商品やサービスの申込みをして、事業者が即時(自動的)に又は電子メールなどの方法で短期間のうちに承諾の可否を顧客に伝えることが一般的です。そのため、通常は、申込みの有効期限を定める必要はありません。

法律の原則どおりであれば、申込みは、承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過する間は、撤回することができませんので、特に申込みの有効期限がなくても、通常は支障ありません。ただし、この点は、ビジネスの形態によって異なる可能性もありますので、検討が必要です。

ケ 商品の売買契約の申込みの撤回・売買契約の解除

(8) 返品・キャンセルに関する特約
商品のご購入手続が本サイト上で完了した場合には、(9)に掲げる場合を除くほかは、返品(ご購入契約の解除)やお申し込みのキャンセル(撤回)をお受けしておりません。

返品特約の有無や条件について表示するものです。商品の売買契約の申込みの撤回・売買契約の解除についてどのようなルールを定めているかについては、必ず記載しなければなりません。申込みの撤回・契約解除を認めるときも、認めないときも、記載が必要です。

仮に、返品を認めるのであれば、「返品につきましては、未使用の商品に限り、お客様が受領された日から起算して8日以内に限り、応じさせていただきます。この場合におけるお客様から当社への商品の返品に要する送料につきましては、お客様のご負担となります。」というように、返品条件や日数、送料の負担について明示しておく必要があります。

ガイドラインによれば、商品の契約不適合責任を理由にした返品に関する事項と、それ以外の理由での返品に関する事項は、区別することができるように記載する必要があります。

なお、特約がなければ、顧客が商品を受領した日から起算して8日以内であれば、申込みの撤回・契約解除に応じなければなりません(法15条の3)。

後ほど詳しく説明しますが、返品特約の有無や条件については、特定商取引法に基づく表記において明示するほか、商品の紹介ページ又は最終申込みページにも明示すべきです。

コ 商品の契約不適合責任について(特約があるとき)

(9) 契約不適合責任に関する特約
当社は、商品に民法上の契約不適合があった場合における解除、損害賠償その他の契約不適合責任について、お客様が商品を受領した日の翌日から1年以内に限り、負うものとします。

商品に不具合や欠陥があった場合における売主の責任については、民法改正によってルールが変わりましたので、注意が必要です。民法改正前は、商品の不具合や欠陥に対する売主の責任(瑕疵担保責任)は、買主が商品を受領してから1年以内に限られていました。一方、民法改正後は、商品の不具合や欠陥に対する売主の責任(契約不適合責任)が、買主がその不具合・欠陥を「知ってから」1年以内になりました。つまり、今後は、売主が特約を定めておかなければ、長期間にわたって買主から責任追及を受けるおそれがあります。

このような長期間の不具合・欠陥への対応を求められることで不都合があるのであれば、必ず特約を定めておくべきです。

サ (ソフトウェア・写真データ・動画データ・音楽データなどのコンテンツを提供する場合)利用・閲覧・視聴・再生に必要なコンピュータの仕様・性能その他の条件

(10) 商品がソフトウェア・CD・DVDである場合の仕様
商品がソフトウェア・CD・DVDである場合の仕様につきましては、各商品のご購入ページに表示しています。必ずご購入前にご確認ください。

オンラインビジネスにおいては、写真・動画・音楽のコンテンツを配信するサービスを提供することがあります。このようなコンテンツを利用するために求められるコンピュータのスペックや、対応OS、対応ブラウザ、別途用意すべきソフトウェアの種類・バージョンなどの情報を、具体的に明示しておく必要があります。

なお、消費者トラブルを防ぐ観点からは、動画コンテンツを提供する場合には、サンプル動画を用意してあらかじめ再生可能かどうかを顧客に確認するように求めることが望ましいです。

シ (商品の継続購入が必要な場合)その旨・金額・契約期間その他の販売条件

商品の購入・サービスの提供を1回申し込むと、引き続き複数回の契約が必要になる場合には、その旨を明示しておく必要があります。

ス その他の商品の販売条件・役務の提供条件(ある場合)

販売数量や商品・サービスの提供地域が限定されている場合などには、その条件を記載しておかなければなりません。

例えば、コンテンツを提供する場合においては、ライセンス契約で配信地域が限定されている場合がありますので、具体的な配信地域を記載しておく必要があります。

セ (通信販売電子メール広告をする場合)販売業者(役務提供事業者)のメールアドレス

(11) 販売業者(役務提供事業者)のメールアドレス
×××@××.××

顧客に電子メールで広告を配信する予定がある場合には、販売業者(役務提供事業者)のメールアドレスを明示しておく必要があります。電子メールによる広告の規制につきましては、後ほど詳しく説明します。

(3) 特定商取引法に基づく表記はどこに配置すべきか

特定商取引法に基づく表記は、サイト上の分かりやすい位置にリンクを表示するとともに、購入ページにおいても改めて同様のリンクを配置することが適切です。少なくとも、リンクがどこに貼られているかが分からないということがないように、十分な配慮が必要です。

(4) 返品特約の表示についてのガイドライン

特定商取引法に基づく表記に記載すべき事項のうち、返品特約(商品の売買契約の申込みの撤回・売買契約の解除についての特約)については、表示方法についてガイドラインが定められています。ガイドラインに示される基準のうち、オンラインビジネスにおいて特に気をつけておくべきポイントを列挙します。

ア 表示は見やすく分かりやすい場所に・他の表示にまぎれないように

返品特約について、文字が小さい・見えにくい場合や、表示している場所が分かりにくい場合には、ガイドラインに反します。

また、返品特約については、他の情報とまぎれないようにしなければなりません。返品に関する事項であることを明示したうえで、(商品の紹介ページ又は最終申込みページの)価格などの顧客の目につきやすい表示の近くに表示することが求められます。

イ 特に分かりやすく表示すべき3つの事項

ガイドラインによれば、返品特約のうち、「返品の可否」「返品の条件」「返品の際の送料負担」については、特に明瞭に表示しなければならないとされています。

これら3つの事項については、(商品の紹介ページ又は最終申込みページの)価格などの顧客の目につきやすい表示の近くに表示することに加えて、色やサイズを周囲の文字とは変えるなどの工夫を施すことが望ましいです。

ウ 商品によって返品の有無・条件を変える場合には対応関係を明確に

ある種類の商品は返品不可、別の種類の商品は4日以内に限り返品可のように、商品の種類によって返品の有無・条件が異なる場合には、その返品の有無・条件と商品との対応関係を顧客が容易に理解することができるようにしなければなりません。

商品の紹介ページ又は最終申込みページに、該当する返品の有無・条件を明示することが望ましいです。

3 電子メールでの広告をする際の注意点

(1) 電子メール広告に対する法規制

オンラインビジネスにおいては、一度商品・サービスを購入した顧客に対して、新商品・新サービスの情報や、割引情報などの広告を電子メールで自動配信する方法がよく使われます。

ダイレクトメールと異なり、電子メールであれば、特に費用をかけずに、たくさんの顧客に対して同時に広告を発信することができるため、オンラインビジネスにおいて有用な手段です。ただ、電子メールでの広告については、法律上の規制があることに注意が必要です。

電子メールでの広告規制には、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(特定電子メール法)による規制と、特定商取引法による規制があります。2つの規制の内容には若干の相違がありますが、類似しています。

このコラムでは、特定電子メール法については割愛し、特定商取引法による規制のみを取り上げます。通信販売の広告以外の広告・宣伝のための電子メールを送信する場合には、特定電子メール法が適用されることにも留意が必要です。

(2) 電子メール広告の承諾が必要な場合/不要な場合

電子メールで通信販売の広告を送信することができるのは、送信相手から請求を受けるか、送信相手の承諾を得た場合に限られるのが原則です(法12条の3第1項1号)。

ただし、次のような場合であれば、このような請求・承諾がなくても、電子メールで通信販売の広告を送信することができます。

ア 契約内容・履行に関する事項の通知に付随する場合(法12条の3第1項2号)

次のような内容の電子メールに広告・宣伝を付随的に掲載することは、送信相手の請求・承諾がなくても認められます。このような電子メールであれば、受け取った人が迷惑メールであると感じるおそれが一般に小さいと考えられるためです。

(a) 申込みを受け付けたことや、その内容を通知する電子メール
(b) 商品の購入・サービスの提供について契約が成立したことや、その内容を通知する電子メール
(c) 商品の購入・サービスの提供についての契約を履行することにかかわる重要なことを通知する電子メール

イ 送信相手の請求・承諾により送信する電子メールの一部として広告を掲載する場合(法12条の3第1項3号、省令11条の4第1号)

顧客からの請求や承諾によって送信する電子メールに広告を掲載することは、認められています。

例えば、顧客の承諾を得てメールマガジンやその他の会員向け通知メールを送信する際に、その中に広告を掲載するような場合が該当します。

(3) 送信相手からの請求や承諾があったことの記録義務について

送信相手からの請求や承諾を理由に、広告を掲載した電子メールを送信する場合には、その請求・承諾があったことが分かるように、3年間にわたって記録を保存しておかなければなりません(法12条の3第3項)。

原則としては、請求・承諾があったことが分かる記録を個々に保存しておかなければなりませんが、定型的なWebサイト上の画面で消費者から承諾を得る場合には、次の記録を残しておけば足りることになっています。

(a) 承諾・請求を受け付けるWebサイト上の画面構成をキャプチャした書面又はデータ
(b) その画面構成によって承諾・請求を受け付けていた時期を証明する書面又はデータ
(c) 顧客から受け付けた承諾・請求を一覧化することができるデータベース

具体例としては、ユーザー登録フォームや商品・サービス申込みフォームにおいて、「商品・サービスについての案内メール」の配信を承諾するかどうかのチェックボックスを設けるような場合が考えられます。

(4) 電子メールで広告をする際は受領拒絶の通知先などを表示しなければならない

電子メールで広告をする際には、そのメール本文に、次のいずれかの表示をしなければなりません(法12条の3第4項)。

(a) 電子メールでの広告の受信を拒否するための連絡先メールアドレス
(b) 電子メールでの広告の受信を拒否するためのサイト上のページに飛ぶリンク

そして、いずれかの方法で連絡を受けた場合には、以後の電子メールでの広告の配信を停止しなければなりません(法12条の3第2項)。

4 代金前払制にする場合の注意点

通信販売において代金前払制を採用する場合には、商品の購入・サービスの提供の申込みを受け、かつ、代金の全部又は一部の支払を受けた時点で、遅滞なく次の事項を通知しなければなりません(法13条1項)。クレジットカード決済の場合には、顧客がクレジットカード会社に代金を支払う時点が基準になります。

(1) 申込みの承諾・不承諾
(2) 事業者の氏名又は名称・住所・電話番号
(3) すでに支払われた金銭の額
(4) 金銭の支払を受けた日
(5) 申込みを受けた商品名・数量(商品の場合)・種類(サービスの場合)
(6) 商品の引渡し・サービスの提供を行う時期

通知方法は、書面が原則です。電子メールなどで通知するのであれば、あらかじめ、その方法を示したうえで承諾を得ておかなければなりません。

ただし、代金を受領してから遅滞なく商品を送付したり、サービスの提供を開始したりした場合には、このような通知は不要とされています。

特に、あらかじめプリペイドでポイントを購入してサービスの提供を受けられるようなビジネスモデルを採り入れる場合には、この規制に対して留意が必要です。具体的には、プリペイド購入時に電子メールによる通知の承諾を得ておき、個々のサービスの申込みを受けた場合は自動的に電子メールで所定事項を通知する仕組みを導入することが考えられます。

5 誇大広告には要注意

通信販売の広告では、特定商取引法に基づく表記として表示すべき事項のほか、次の事項について、著しく事実に相違する表示や、著しく優良・有利であると誤認させる表示をすることが禁止されています(法12条)。

(1) 商品の種類・性能・品質・効能やサービスの種類・内容・効果
(2) 返品特約を含めた商品の申込みの撤回・契約解除に関する事項
(3) 商品やサービス・事業者・事業者の営む事業について国・地方公共団体・著名な団体や個人との関与
(4) 商品の原産地・製造地・商標や製造者名

通信販売では、対面販売とは異なって広告が商品・サービスを選択するための重要な判断要素であることから、幅広い事項について、いわゆる誇大広告が規制されています。

競合が多い業種においては、特に、自社の魅力を積極的に広告することが求められますが、その結果、実際の商品・サービスとはかけ離れたPRを行うことがないように留意することが求められます。

6 申込み画面の仕様にも注意

通信販売においては、「顧客の意に反して通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為」の一部が規制対象になっています(法14条1項2号)。

オンラインビジネスのWebサイトを制作する際には、申込み画面の仕様に注意が必要です。

(1)申込みフォームには「申込みに進む」旨を明示すること、(2)申込内容の確認画面を表示すること、(3)最終段階の確認画面には内容の訂正方法や申込みの中止方法を記載しておくことなどが求められます。

7 オンラインビジネスを始める前に気をつけたいポイント

オンラインビジネスにおいては、特定商取引法との関係で、特に、(1)特定商取引法に基づく表記、(2)電子メールでの広告、(3)誇大広告の禁止の3点に注意が必要です。

オンラインビジネスを発信するWebサイトの企画・制作は、多くをWeb制作会社に委ね、ユーザーが積極的に関与しないことも多々あります。しかし、Web制作会社は、必ずしも特定商取引法を意識しながらWebサイトの仕様を検討しているとは限りません。そのため、Webサイトが完成して公開した後に、顧客から特定商取引法違反を指摘されるケースも珍しいことではありません。

オンラインビジネスを企画する際には、特定商取引法について意識し、Web制作会社にも留意点を伝えながら、Webサイトの企画・制作を進めていくことが必要です。

第3章 プリペイド制を導入するならば資金決済法に注意

1 オンラインサービスとプリペイド制

オンラインサービスにおいては、プリペイドポイントを購入してサービスを利用するたびに購入ポイントが減少するプリペイド制を導入することがしばしばあります。プリペイド制は、オンラインサービスをスタートして間がないころから安定した資金を確保することができるメリットがあります。

ただし、このようなプリペイド制は、「自家型前払式支払手段」に該当し、資金決済法の規制対象になる可能性があります。ここからは、自家型前払式支払手段に関する資金決済法上のルールについて、説明したいと思います。

2 資金決済法が適用されるプリペイド制・適用されないプリペイド制

有償で取得し、物品を購入したり、サービスの提供を受けたりすることができるポイントは、資金決済法にいう前払式支払手段に該当します(法3条1項)。そのうち、ポイントの発行者との間でしか、物品を購入したり、サービスの提供を受けたりすることができないものは、自家型前払式支払手段といいます。

物品やサービスと交換することができるポイントを発行していても、そのポイントを無償で発行するのであれば、資金決済法は適用されません。ただし、同様のポイントの一部を無償で発行し、その他を有償で発行していて、無償ポイントと有償ポイントとの区別があいまいになっている場合には、無償ポイントも含めて資金決済法の適用対象となりますので、注意が必要です。

有償で取得し、物品を購入したり、サービスの提供を受けたりすることができるポイントであっても、使用期間が発行から6か月未満に限定されているものは、資金決済法の適用対象にはなりません(法4条2号)。資金決済法の適用対象にならないようにするためには、発行から6か月未満の日を有効期限として明示しておかなければなりません。また、実際には発行から6か月以後もポイント利用が可能な仕様になっている場合にも、資金決済法の適用除外にはなりません。実務では、使用期間を発行から「180日」に指定することが多いです。

資金決済法が適用されないポイント(前払式支払手段)については、特定商取引法が適用されます。このようなポイントについて、例えば、第2章で説明した「特定商取引法に基づく表記」をすることを忘れないように、注意してください。

3 資金決済法が適用される場合

(1) 財務局長への届出と「資金決済法に基づく表記」を行う必要がある場合

自家型前払式支払手段を発行する者は、毎年3月末、9月末の基準日に未使用残高が1000万円を超える場合、財務局長に届出をしなければなりません(法5条1項)。

また、自家型前払式支払手段を発行する者は、届出義務がある場合に限り、利用者に次の情報を提供しなければなりません(法13条1項)。「特定商取引法に基づく表記」と同様に、「資金決済法に基づく表記」というページをWebサイト内に設ける方法が一般的です。なお、「資金決済法に基づく表記」を行う場合に、「特定商取引法に基づく表記」を重ねて行う必要はありません。

(a) 発行者の氏名、商号、名称
(b) 購入限度額
(c) 有効期間
(d) 苦情・相談に応じる営業所等と連絡先
(e) 使用することができる場所の範囲
(f) 利用上の注意
(g) 未使用残高を知る方法
(h) 利用についての約款や説明書

(2) 資産を保全するための義務

自家型前払式支払手段を発行する者は、毎年3月末、9月末の基準日に未使用残高が1000万円を超える場合、未使用残高の2分の1以上の額を供託する等の方法で、資産を保全しなければなりません(法14条1項)。

これは、自家型前払式支払手段を発行した者が万が一破綻してしまった事態に備える意味があります。

(3) 払戻しの制限

資金決済法では、ポイントの払戻しについて、業務を廃止する場合等(法20条1項)のほか、原則として禁止しています(同条5項)。ただし、少額の払戻しや、ポイント保有者のやむを得ない事情で利用が著しく困難になった場合に限って、例外的に払戻しを認めています。業務を廃止する場合等の払戻しは義務です。

もっとも、ポイント保有者の事情でポイントが利用できなくなった場合に払戻しに応じるかどうかはあくまで任意ですので、「サービスの廃止以外の理由では一切ポイントの払戻しに応じません」という対応もできます。

(4) その他の義務

その他、自家型前払式支払手段を発行する者には、情報の安全管理(情報セキュリティマネジメント、法21条)や、帳簿書類の作成・保存(法22条)、報告書の提出(法23条)等が義務づけられています。

4 オンラインビジネスを始める前に気をつけたいポイント

オンラインビジネスを始める際に、プリペイド制の導入を検討しているならば、資金決済法が適用される可能性があるかどうかを検討すべきです。そして、そのままのプランであれば資金決済法が適用される可能性があり、資金決済法に基づいて対応することに支障があるならば、ポイントの有効期限を設けることを検討しておく必要があります。

オンラインビジネスを発信するWebサイトの企画・制作は、多くをWeb制作会社に委ね、ユーザーが積極的に関与しないことも多々あります。しかし、Web制作会社は、必ずしも資金決済法を意識しながらWebサイトの仕様を検討しているとは限りません。そのため、Webサイトが完成して公開した後に、顧客から資金決済法違反を指摘されるケースも珍しいことではありません。資金決済法に関する問題は、Web制作会社に検討を委ねるのではなく、ユーザーが積極的に検討すべきことです。

第4章 業法規制

提供する商品やサービスによっては、対面型のビジネスでは適用されなかったその業界特有の法規制が新たに適用されるケースがあります。業法規制については、弁護士に相談したりすることで、法的に問題のないビジネスであることを事前確認しておくべきです。

また、新規ビジネスであるために、弁護士においても適法性について明確な判断ができない場合には、所管する省庁などに相談したうえで、グレーゾーン解消制度を活用することを検討する方法があります。

グレーゾーン解消制度は、所管省庁において、事業計画に即して法規制の対象となるかどうかを確認する制度です。グレーゾーン解消制度を活用することで、法的リスクを軽減し、安心して新規ビジネスに参入することができます。

グレーゾーン解消制度を活用する際においても、あらかじめ疑問に思っている法的問題を明示することができたほうが、精度の高い回答を得ることを期待することができます。また、グレーゾーン解消制度を活用するためには、事業計画をまとめて必要書類を作成しなければなりません。ですから、グレーゾーン解消制度を活用したい場合にも、一度、オンラインビジネスの法務に詳しい弁護士に相談しておくことが望ましい対応です。

第5章 プライバシーポリシー作成のポイント

1 プライバシーポリシーを用意しましたか

オンラインビジネスにおいては、顧客との連絡や、広告発信などの目的で、対面型のビジネスでは不要な個人情報の取扱いが必要になることが多々あります。そのため、オンラインビジネスの場合は、プライバシーポリシーを作成し、自社サイトなどで公開しておくべきです。

ここからは、プライバシーポリシーの条項例を示しながら、オンラインビジネスを始める前に必ず押さえておくべき個人情報に関するルールを説明します。

なお、国外の顧客をターゲットにオンラインビジネスを展開する場合には、GDPRなどの国外ルールにも留意しなければなりません。このコラムでは、専ら国内の顧客のみをターゲットにするオンラインビジネスを想定しています。

2 個人情報の利用目的の特定

(プライバシーポリシーの条項例)
当社は、以下に掲げる個人情報をお客様から取得し、それぞれに掲げる目的のために利用します。
(1) 氏名・住所・メールアドレス
a お客様に本サービスを提供するために必要な連絡のために利用する目的
b お客様からの本サービスに関する問合せに対応する目的
c 本サービス又はそれ以外の当社が展開するサービスに関する広告をお客様にダイレクトメール又は電子メールの方法によって発信する目的
d ・・・(以下省略)・・・
(2) ・・・(以下省略)・・・

取り扱う個人情報については、どのような目的で利用するかについて、できる限り特定しなければならない義務があります(法15条1項)。そして、個人情報を取得する際には、あらかじめその利用目的を公表するか、取得後速やかに本人への通知又は公表をしなければなりません(法16条1項)。

オンラインビジネスを始める前には、まずは、ビジネスモデルの中でどのような個人情報を収集する必要があるか、そして、収集した個人情報を(将来の予定も含めて)どのように利用する可能性があるかを検討しておかなければなりません。検討結果を整理したうえでプライバシーポリシーに盛り込み、そのプライバシーポリシーを自社サイト上などで公表しておけば、利用目的の特定・公表義務を果たすことができます。

3 契約締結に伴う個人情報の取得

契約締結に伴って書面や電磁的記録に直接記載された本人の個人情報を取得するためには、あらかじめ、本人に個人情報の利用目的を明示しなければなりません(法18条2項)。

具体的には、オンラインで商品販売やサービス提供の契約を結ぶための申込みフォームを表示した際には、個人情報の利用目的を明示したうえでなければ、顧客がフォームに入力した個人情報を取得すること(送信させること)ができません。

そこで、利用目的について盛り込んだプライバシーポリシー(あるいはその抜粋)は、顧客が申込みフォームの送信ボタンをクリックする前に、必ず内容を確認させるような仕組みを採り入れなければなりません。

具体的には、フォーム中にプライバシーポリシー(あるいはその抜粋)を表示し、その内容を確認したことを示すチェックボックスへのチェックを入れなければ送信ボタンをクリックすることができない仕様にすることが考えられます。

4 保有個人データに関する開示等の手続

(プライバシーポリシーの条項例)
(1) 保有個人データに関する事項の公表等
当社は、本人又はその代理人から保有個人データ(本サイトにおいて収集したお客様の個人情報が含まれるものに限ります。)の利用目的の通知の請求があった場合には、以下に掲げる場合を除くほか、遅滞なく通知いたします。
a 本人が識別される保有個人データの利用目的が明らかな場合
b 本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
c 当法人の権利または正当な利益を害するおそれがある場合
d 国の機関又は地方公共団体が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合
(2) 開示の請求
当社は、本人又はその代理人から保有個人データ(本サイトにおいて収集したお客様の個人情報が含まれるものに限ります。)の開示の請求があった場合には、以下に掲げる場合を除くほか、遅滞なく開示いたします。
a 本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
b 当法人の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
c 弁護士法その他の法令に違反することとなる場合
(3) 訂正等の請求
当社は、本人又はその代理人から保有個人データ(本サイトにおいて収集したお客様の個人情報が含まれるものに限ります。)の訂正、追加、削除の請求があった場合には、遅滞なく調査を行い、その結果に基づいて適正な対応をします。
(4) 利用停止等の請求
当社は、本人又はその代理人から保有個人データ(本サイトにおいて収集したお客様の個人情報が含まれるものに限ります。)の利用停止又は消去の請求があった場合には、遅滞なく調査を行い、当該請求に正当な理由があることが判明した場合には、適正な対応をします。
(5) 請求先
(1)から(4)までの請求は、下記担当窓口宛に、請求者の氏名又は名称、住所、電話番号その他の連絡先、請求内容を記載した書面をご送付ください。当該請求にあたってご提供いただいた個人情報は、専ら当該請求に対応する目的で利用し、適正に保管いたします。
・・・(担当窓口の記載は省略)・・・

個人情報をデータベースとして管理し、一定の要件を満たす場合には、個人情報保護法で「保有個人データ」として扱われます。保有個人データについては、上記のような開示などの手続に応じなければならない対象となります(法27条以下)。

個人情報を取り扱う事業者は、上記の例のように、プライバシーポリシーの中で、これらの手続に対してどのように応じるかを明示し、公表しておくことが望ましい対応です。

特に、請求先や請求方法の記載は重要です。なぜなら、このような事項が明示していなければ、事業者は、どの部署にどのような方法で届いた請求に対しても例外なく対応しなければならなくなるためです(法32条1項参照)。煩雑な事務手続の発生を回避するためにも、請求先や請求方法の記載は必ず行うべきです。

5 Googleアナリティクスを導入する際の留意点

(プライバシーポリシーの条項例)
本サイトでは、その利用状況を把握するためにGoogleアナリティクスを利用して情報を収集しています。本サイト内では、Googleから提供されるCookieを使用して利用者の情報を収集しますが、個人を特定する情報は取得していません。Googleアナリティクスの利用により収集されたデータは、Google社のプライバシーポリシーに基づいて管理されています。Googleアナリティクスの利用規約・プライバシーポリシーについてはGoogleアナリティクスのサイトでご確認ください。

サイトの開設時には、閲覧者の動向を分析するために、Googleアナリティクスを利用することが多々あります。Googleアナリティクスについては、Cookie情報を収集しているものの、それ以外の情報は取得していません。Cookie情報は、日本の個人情報保護法では個人情報として扱われていませんので、法律上は、GoogleアナリティクスがCookie情報を収集する旨をプライバシーポリシーなどで公表する必要はありません。

ただ、Google社の規約では、Googleアナリティクスを利用する場合には、上記のような表示をプライバシーポリシーなどに盛り込まなければならないことになっています。

Googleアナリティクスを利用するのであれば、上記の例を参考に、必ず必要な条項を盛り込むようにしてください。

6 その他

プライバシーポリシーに必ず盛り込むべき事項は、以上のとおりです。ただし、プライバシーポリシーは、事業者の個人情報に対する考え方を顧客に示すためのツールでもありますので、必要に応じて、それ以外にも個人情報保護に関連した事業者の方針を盛り込むことが適切なこともあります。

本格的なプライバシーポリシーを作成する必要がある場合には、プライバシーポリシーについて相談できる弁護士に相談されることをおすすめします。

第6章 利用規約作成のポイント

1 利用規約は何のために必要か

大手企業が提供するオンラインサービスでは、利用の条件として、必ず利用規約への同意を求められます。しかし、ほとんどのユーザーは、利用規約を流し読みして(あるいは読み飛ばして)同意しているのが実情であると思います。

しかし、「ほとんどのユーザーに読まれないのであれば、そもそも利用規約は不要では」という考え方は誤りです。なぜなら、利用規約は、オンラインサービスを提供する事業者にとって、次のような3つの意味があるからです。

(1) 悪質ユーザーと戦うための「剣」になる

オンラインサービスを展開するうえで事業者にとって大きなリスクとなるのが、悪質ユーザーからの被害です。モラルに対する意識の低いユーザーが、事業者の意に反する行動をサービス上でとることで、他のユーザーや、事業者に対して不利益を与えることがあります。

しかし、このようなユーザーの行動を制約するためのルールがなければ、事業者は泣き寝入りを余儀なくされるかもしれません。それどころか、他のユーザーへの被害に対して適切な対処をすることができず、社会的信用を失ってしまうかもしれません。

利用規約は、悪質ユーザーの発生を予防するとともに、万が一悪質ユーザーの被害に遭った場合に厳正な対処をすることができるルールを策定するために不可欠なものです。

(2) ユーザーとの法的紛争の発生を防ぐための「盾」になる

利用規約には、提供するサービス・提供しないサービスの区別を明確にしたり、コンテンツなどの権利関係を明確にしたりするためにも、重要な意味があります。

これらの事項が不明確になっていると、ユーザーとの間でトラブルが発生する要因になってしまいます。ユーザーとのトラブルが悪化して、法的紛争に発展してしまえば、事業者にとって多大なコストとなるばかりか、サービスに対する社会的信用を失う要因にもなり得ます。

利用規約は、サービスの範囲やユーザーの権利関係を明確にし、法的紛争の発生を防ぐためにも不可欠なものです。

(3) ユーザーから信頼されるために

きちんとした内容の利用規約を用意していることは、ユーザーからの信頼につながります。逆に、利用規約を用意していなかったり、利用規約を用意していても他社の利用規約を切り貼りしたような不十分なものであったりすれば、ユーザーからの不信感を招いてしまいます。

オンラインビジネスは、競合の少ない新しいビジネスモデルを採用していることも多く、ユーザーからの信頼に対しては、通常のビジネスよりも一層の配慮が必要です。ですから、利用規約に対しても気配りを怠るべきではありません。

2 他社サイトの利用規約を参考にしてもよいのか

利用規約を作成する際に、できる限りオリジナルのものを作成したいと思われる事業者の方は多いかもしれません。もちろん、このような考え方自体は間違っていませんが、だからといって、他社サイトの利用規約を全く参考にせずに、ゼロから利用規約の内容を考えるのは難しいことです。

むしろ、他社サイトの利用規約を参考にすることで、品質の高い利用規約を作成することができるメリットもあります。大手企業は、日常業務の中で様々なユーザーに遭遇する機会があり、様々なユーザーとのトラブルに対応するためのノウハウを有していることが一般的です。そのため、大手企業の公開する利用規約には、ユーザーとのトラブルを防ぐための多様なノウハウが盛り込まれています。このような利用規約を参考にすることで、自社でも品質の高い利用規約を作成することができます。

ただし、他社サイトの利用規約を参考にするというのは、他社の利用規約をかき集めて切り貼りしたり、そのままコピペをしたりすることでは決してありません。このような利用規約では、自社サービス特有の事情に対応することができず、かえって法的紛争を誘発してしまうおそれがあります。

あくまでも、他社サイトの利用規約を参考にしながら、自社サービス特有の事情をよく考慮して、オリジナルの利用規約を作成すべきです。

3 利用規約を作成する際に意識すべきポイント

利用規約に盛り込むべき事項は、オンラインサービスや提供するコンテンツの内容、ユーザーのサービスへのかかわり、想定されるユーザーの年齢層などの様々な事情によって千差万別です。そのため、「これを条項に入れておけばよい」という一律のひな型をお示しすることはできません。ここでは、利用規約を作成する際に意識すべき一般的な観点をご紹介します。

(1) 用語の定義は明確になっていますか

オンラインビジネスは、対面型のビジネスとは異なって新規性の高いものが多いことから、使用する用語の意味についても、人によって解釈が異なるということがあります。

例えば、「オンラインでのサービス」という用語を利用規約に使用すれば、(1)Web会議ツールによる通信に限られるのか、(2)電子メールやSMSでのやりとりは含まれるのか、(3)電話やFAXは含まれるのかなど、様々な解釈があり得ます。

このような曖昧な用語を利用規約の中で使用する際には、必ず、その用語がどのような意味であるのか、明確な定義規定を置いておくべきです。

(2) ユーザーに対する禁止事項を網羅していますか

悪質ユーザーに対抗するためには、ありうる様々なユーザーの悪質行為を予想し、禁止規定を設けておく必要があります。また、一般には悪質行為とはいえないユーザーの行為であっても、事業者が特に禁止したい行為がある場合には、あわせて禁止規定に盛り込んでおく必要があります。

もっとも、ユーザーの禁止行為を過度に増やすと、ユーザーの不満につながってしまいますので、常にユーザーの目線に立ってバランスを考えることも重要です。

ユーザーの悪質行為は必ずしも網羅的に想定することはできません。そこで、ユーザーの禁止行為として、「当社が不適切と判断する行為」といったバスケット条項を盛り込んでおくべきです。ただし、バスケット条項は有効性をめぐって争いになることがありますので、たとえバスケット条項を盛り込んでおいたとしても、個別に禁止行為を詳細に定めておくことはやはり重要です。

具体的にどのような禁止事項を定めるかについては、他社サイトの利用規約も複数参考にしつつ、自社サービス特有の事情を踏まえて起こりうるトラブル事例を想像することが重要です。また、登録IDの第三者利用の禁止や不適切な書き込み行為の禁止など、サービス内容に応じてオンライン特有の禁止事項が必要になる場合もあります。

(3) 悪質ユーザーを排除することができる条項は十分ですか

たとえ禁止事項が網羅されていたとしても、禁止事項に違反したユーザーが見つかった場合に実効的な対抗策を採ることができなければ、十分に対策ができているとはいえません。

禁止事項に違反した場合には、契約の解除・損害賠償のほか、ユーザー登録の削除、再登録の制限、ポイントの失効などの実効性のある規定を設けることが考えられます。

ただし、軽微な違反行為に対して契約の解除やユーザー登録の削除、ポイントの失効のような重大な措置を講じることを認める条項は、消費者契約法10条違反などを理由に無効とされる可能性もありますので、ユーザーの視点に立ったバランスも重要です。

(4) 知的財産権の権利帰属を明確に

ユーザーが文章を書き込んだり、動画などのコンテンツを投稿したりすることができるサービスを提供する場合には、ユーザーが投稿した文章・動画の知的財産権(特に著作権)の帰属を明確に定めておく必要があります。

また、事業者が一方的にコンテンツを提供するサービスについては、そのコンテンツをユーザーがどのように利用することができるかを明確に定めておく必要があります。例えば、動画を提供するサービスであれば、ダウンロードはできるか、再配布は自由にできるか、再配布ができるとしても内容の編集をすることができるかといった細かいルールを明確にしておくべきです。

(5) どのような条項を定めたらよいかを判断できなければ弁護士に相談を

競合があまりない新規ビジネスを始める場合には、他社サイトの利用規約を探しても参考になるものが見つからず、そもそも「どのような条項を定めたらよいか」が分からないケースも多々あるかと思います。

そのような場合は、きちんと利用規約について相談できる弁護士に相談して、明確な答えを出してからビジネスをスタートさせるべきです。利用規約をきちんと整備しないままにビジネスをスタートさせてしまえば、思わぬ重大な法的トラブルに巻き込まれてしまうかもしれません。

第7章 おわりに

ここまで、オンラインビジネスを始める前に必要な法律知識を説明してきました。もっとも、実際にオンラインビジネスをスタートすれば、このコラムでは取り上げきれない様々な法律問題に遭遇することになります。

当事務所では、オンラインビジネスでの成功を目指す事業者の方に向けた法的サービスや、月1万円(税別)からご契約いただけるライト顧問プランをご用意しております。オンラインビジネスをスタートする前に、ぜひ一度、当事務所までご相談ください。初回相談無料にて、ビジネスモデルに合った法的サービスのプランをご提案させていただきます。

 

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