コラム

アグリビジネス・スマート農業を始めるための法律知識を弁護士が解説

弁護士 石田 優一

目次

第1章 ベンチャー業界から注目されるアグリビジネス・スマート農業
第2章 アグリビジネスのスタートアップ
1 農地の確保のために必要な法律知識
2 農地の購入に関するルール
3 農地の賃借に関するルール
4 アグリビジネスのスタートアップ企業の株式設計
第3章 アグリビジネスにおけるドローン活用
1 ドローンに関する法律
2 飛行の禁止空域(航空法132条)
3 飛行の方法についての規制(航空法132条の2第1項・第2項)
4 本事例における水や肥料の撒布の問題
第4章 おわりに

第1章 ベンチャー業界から注目されるアグリビジネス・スマート農業

最近、「アグリビジネス」という言葉を耳にする機会が増えてきました。アグリビジネスとは、「agriculture(=農業)」と「business(=ビジネス)」とをかけ合わせた造語で、農業に関連した幅広い経済活動のことを意味します。「アグリビジネス」の本来的な用語の意味は、従来型の農業も含めた広い概念ですが、一般的には、何らかの先進的な取組みを採り入れた農業(あるいは農業に関連したビジネス)というニュアンスで使われることの多い用語です。

アグリビジネスの分野で特に注目を集めるのが、「スマート農業」です。スマート農業とは、ITやロボティクスのような先端技術を駆使した新たなタイプの農業のことです。例えば、ドローンによる生育状況の監視や収穫の自動化、気象データの利活用などが、スマート農業の例として挙げられます。

近年、地方の過疎化や少子化などの影響で、農業人口の減少や高齢化、後継者不足の問題が深刻になっています。このような状況を解消させるため、国や地方自治体では、スマート農業を中心にした農業改革に力を入れています。スマート農業のスタートアップに対しても、補助金制度の導入や、スマート農業に関わる関係者同士をマッチングさせるプラットフォームの創設など、様々な取組みが行われています。

また、スマート農業は、「食の安全」に対する消費者の意識が高まる現代社会にもマッチしています。例えば、富山市の農業高校では、合鴨農法をロボットで行って雑草の繁殖を抑える実験が行われています。このような取組みは、除草剤に頼らない農業の発展につながる可能性があります。消費者のニーズに即した農業戦略にこだわることで、たとえ農業経験が浅くても、社会的信頼を得てビジネスとして成功を収められるチャンスがあります。

このコラムでは、アグリビジネス・スマート農業に取り組むスタートアップ企業を設立したい起業家の方に向けて、初めに押さえておくべき法律知識を弁護士の立場から解説します。

第2章 アグリビジネスのスタートアップ

【事例】
大学の農学部を卒業したAさんは、同期のBさん・Cさんとともに、「株式会社ネクスト・アグリビジネス」を立ち上げることを計画しています。同社では、アグリビジネスに関連した製品を開発するD社と提携して、ドローンやロボットを採り入れたスマート農業を行いたいと考えています。設立当初の出資は、Aさんが300万円、BさんとCさんがそれぞれ100万円、D社が1000万円行う予定です。Aさんは代表取締役、BさんとCさんは取締役に就任する予定です。ドローンやロボットの操作を中心とした農作業はBさんとCさんで分担し、Aさんは、販路開拓のための折衝やアグリビジネスに関する情報収集・企画を主に担当する予定です。農地については、設立当初は賃貸によって確保し、将来的に事業が拡大した場合には購入も検討したいと考えています。

1 農地の確保のために必要な法律知識

アグリビジネスを始めるうえで最も重要なことは、農地の確保です。面積・土壌の質・気候・交通の便など様々な条件を満たす最適な農地を確保できるかどうかどうかが、ビジネスを成功に導けるかどうかの大きなカギとなります。

農地の購入や賃借は、土地所有者との話合いさえまとまればだれでも自由に行えるものではありません。農地の購入や賃借のためには、原則として農業委員会の許可がなければならないことが、「農地法」という法律で決められています。この点が、一般の土地とは大きく異なるところです。

農業委員会は、各市町村に設置されていて、農業委員で構成されます。農業委員は、農業の知識や経験がある方を中心に、市町村議会の同意のもとで市町村長が任命します。農業委員会の会議は、月1回程度のペースで開催され、農地の購入や賃借の許可などの審議を行っています。農業委員会には、農業委員会事務局が設置されていて、農地の購入や賃借の許可を受けるための手続などを相談することができます。

農地の購入や賃借を許可するかどうかは、農業委員会が自由な裁量で決められるわけではなく、農地法で要件が決められています。もっとも、農地法で示される要件は抽象的なものが多いため、購入や賃借を進めたい農地所在地の農業委員会における運用について、農業委員会事務局と相談するなどしてあらかじめ把握しておくことが重要です。

アグリビジネスを始めるために、まずは、農地法の基礎知識を身につけなければなりません。ここからは、農地の購入や賃借について農業委員会の許可を得るための法的要件について説明します。

2 農地の購入に関するルール

(1) 農業委員会の許可要件

農地の所有権を移転する場合には、原則として、農業委員会の許可を受けなければなりません(農地法3条1項)。農地の所有権を取得しようとする会社が次のいずれかに該当する場合は、原則として許可を受けることはできません(同条2項)。

ア 耕作の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数等からみて、取得後に耕作の事業に供する農地の全てを効率的に利用して耕作の事業を行うと認められない場合
イ 農地所有適格法人ではない場合
ウ 取得後にX社が事業に供する農地の面積合計が、農業委員会が定める下限面積制限に達しない場合
エ 取得後において行う事業の内容、農地の位置・規模からみて、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地の農業上の効率的・総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合

農地を購入する前には、農地所有者との交渉段階から、農業委員会事務局に相談するなどして、農業委員会の許可を受けるために必要な準備を進める必要があります。また、会社の設立段階では、農地所有適格法人を満たすように留意しておく必要があります。

ここからは、それぞれの要件について詳しく取り上げます。

(2) 耕作の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数等からみて、取得後に耕作の事業に供する農地の全てを効率的に利用して耕作の事業を行うと認められない場合

取得後に耕作の事業に供する農地の全てを効率的に利用して耕作の事業を行うと認められるかどうかは、取得する農地だけではなく、すでに利用している農地も含めて判断されます。事業のために用いることのできる機械・労働力・技術の3要素を総合的に勘案して判断するものとされています。

農業委員会事務局や農業普及指導センターに相談しながら、詳細な営農計画書を作成して、農地の全てを効率的に利用することができるといえる合理的な理由を検討する必要があります。

特に、スマート農業の場合は、ITをうまく活用して効率的な農業がどこまで可能かが重要な要素の1つになります。どのようにITを活用することを想定しており、それによってどのような効果が期待されるのか、説得的な資料を作成することが重要です。

なお、技術については、自社で保有するものだけではなく、委託先の保有する技術も勘案されることになっています。例えば、本事例であれば、提携先であるD社の技術面についても説明資料の中に適宜盛り込んでおく必要があります。

(3) 農地所有適格法人ではない場合

農地所有適格法人となるためには、次の要件を満たさなければなりません。

ア 主たる事業が農業(農産物の貯蔵・運搬・販売、農業生産に必要な資材の製造、農作業の受託なども含まれます。)であること
イ 過半数の議決権を有する株主が法人の農業に常時従事する者などであること
ウ 農業に常時従事する株主が取締役の過半数を占めていること
エ 取締役、又は、常時従事者であって自社の農業に関する権限・責任を有する使用人のうち1人以上が、農作業(帳簿の記帳や集金などは含みません。)に年間60日以上従事すること
オ 株式会社の場合は、すべての株式に譲渡制限があること(非公開会社であること)

第1に、農地所有適格法人となるためには、アグリビジネスを主たる事業として行わなければなりません。他の事業を同時に行うのであれば、法人を分ける必要があります。

第2に、農地所有適格法人となるためには、過半数の議決権を有する株主が法人の農業に常時従事する者でなければなりません。本事例であれば、農業に従事しないD社が過半数の議決権を有する株主となれば、農地所有適格法人となることができません。

第3に、農地所有適格法人となるためには、農業に常時従事する株主が取締役の過半数を占めていなければなりません。本事例であれば、例えば、BさんとCさんが農業に常時従事する立場でなくなれば(もっぱら役員としての仕事以外をしなくなったり、アグリビジネス以外の業務に従事するようになったりした場合が想定されます。)、農地所有適格法人の要件を満たさなくなります。もっとも、スタートアップ企業の場合、取締役のほとんどが何らか農業に従事する立場にあることが一般的かと思いますので、実際にこの要件が問題になるケースは少ないように思います。

第4に、農地所有適格法人となるためには、取締役などの責任のある立場の人が、農作業に年間60日以上従事しなければなりません。農作業を一般のスタッフに任せきりにするようなことはできません。もっとも、スタートアップ企業の場合、そのようなケースはあまりないように思いますので、実際にこの要件が問題になるケースは少ないように思います。

(4) 取得後に事業に供する農地の面積合計が、農業委員会が定める下限面積制限に達しない場合

農業委員会が定める下限面積制限については、市町村によって異なりますので、確認が必要です。

(5) 取得後において行う事業の内容、農地の位置・規模からみて、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地の農業上の効率的・総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合

農業上の効率的・総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合として、次のような例が挙げられます。

ア 集落営農・経営体によって面的にまとまった形で農地が利用される地域において,その利用を分断するようなケース
イ 地域一帯で水利調整を行う地域で,その水利調整に参加しない営農が行われることで他の農業者の農業水利が阻害されるケース
ウ 無農薬・減農薬での付加価値の高い作物の栽培の取組みが行われている地域で,農薬使用による栽培を行うケース
エ 集落が一体となって特定の品目を生産している地域で,その品目にかかる共同防除等に支障を生じさせるおそれのあるケース

農業委員会事務局や農業普及指導センターに相談しながら、地域の実情を踏まえてどのような対応が必要であるかを検討する必要があります。

3 農地の賃借に関するルール

(1) 農業委員会の許可要件

農地を賃借するための農業委員会の許可要件は、原則として農地の購入の場合と同じです。ただし、農地の賃借の場合は、次のすべての要件を満たすと、農地所有適格法人でなくても許可を受けることができる例外ルールがあります(農地法3条3項)。

ア 農地を適正に利用していないと認められる場合に賃貸借契約を解除する旨の条件が書面による契約で付されていること
イ 地域の農業における他の農業者との適切な役割分担のもとに継続的・安定的に農業経営を行うと認められること
ウ X社の取締役、又は、法人の行う農業に関する権限と責任を有する使用人のうち1人以上が、X社の耕作の事業に常時従事すると認められること

過半数の議決権を有する株主が法人の農業に常時従事する者でなければならない要件をクリアすることができない場合、この例外ルールを利用することが考えられます。もっとも、この例外ルールは、農地を賃貸する場合にしか適用できませんので、農地を購入したい場合には利用することができません。

なお、例外ルールに基づいて許可を受けた場合、農業委員会に対して毎年事業の状況などを報告しなければならない義務が課せられます。

(2) 農地を賃借するための一般的なルート

農地を賃借するための一般的な方法は、大きく3つあります。

ア 農地所有者と直接交渉して賃貸を受ける方法

一般的な土地の賃貸と同様に、農地所有者と直接交渉して賃貸を受ける方法です。もっとも、農地を取り扱っている不動産業者は限られるため、この方法で優良な農地を確保することは、なかなか容易ではありません。

農地所有者と直接交渉して賃貸を受ける場合、契約期間満了の1年前から6か月前までに貸主が更新拒絶の通知をしなければ、期間の定めのない同一条件での契約更新が自動的に成立します(農地法17条)。これを、「法定更新」といいます。

さらに、10年以上の賃貸期間を保障した契約が満了する場合を除いて、都道府県知事の許可がなければ更新拒絶の通知は原則できないことになっています(農地法18条)。

これにより、特別な事情のない限り、少なくとも10年については、農地を継続的に利用することができる仕組みになっています。また、農地の賃貸を継続することができない事態は、遅くとも6か月前までには把握することができる仕組みになっています。

イ 市町村の農用地利用集積計画に基づいて利用権の設定を受ける方法

農業経営基盤強化促進法に基づいて利用権の設定を受ける方法です。農業経営基盤強化促進法は、効率的で安定的な農業経営の育成・改善を計画的に進めるための仕組みを定めた法律です。

市町村は、この法律に基づいて、農業経営基盤強化促進基本構想を定めます。そして、このような基本構想に合致する形で市町村が貸主・借主間の調整を行った農用地利用集積計画を策定し、その計画に基づいて利用権の設定を受けます。

市町村の農用地利用集積計画に基づいて利用権の設定を受けたい場合は、あらかじめ市町村に申請を行います。

この手続に基づいて利用権の設定を受ける場合、農業委員会の許可は必要ありません。もっとも、農用地利用集積計画に基づく利用権の設定には、農業委員会の許可に類似した要件があります。

農用地利用集積計画に基づいて利用権の設定を受けるメリットは、個別の交渉ではなかなか見つけることが難しい優良な農地を確保しうることです。前述した法定更新の制度が適用されないデメリットはありますが、利用権の再設定を受けられれば、長期的に農地の利用を継続することも可能です。

ウ 農地中間管理機構(農地バンク)から賃借権の設定を受ける方法

農地中間管理機構(農地バンク)は、農地の貸主と借主とをマッチングする公的機関として、各都道府県に設置されています。

農地の賃借を希望する場合は、農地中間管理機構(農地バンク)に申請を行います。農地中間管理機構(農地バンク)は、申請者の中から、あらかじめ定めた基準に従って借主を選定します。

農用地利用集積計画に基づいて利用権の設定を受ける場合と同様、個別の交渉ではなかなか見つけることが難しい農地を確保しうることがメリットです。もっとも、農地中間管理機構(農地バンク)に登録されている農地は現状多くない問題はあります。今後、制度の活用が進んでいれば、農地中間管理機構(農地バンク)から賃借権の設定を受ける方法が、もっともオーソドックスになっていくように思われます。なお、法定更新の適用はありません。

4 アグリビジネスのスタートアップ企業の株式設計

先ほど取り上げたように、農地所有適格法人となるためには、過半数の議決権を有する株主が法人の農業に常時従事する者でなければなりません。農地所有適格法人とならない場合、農地を賃借することはできますが、農地を購入することはできません。現時点で農地を購入しようとしている場合、あるいは、将来的に農地を購入する可能性がある場合には、スタートアップ段階で、農地所有適格法人の要件を満たすための株式設計を検討しておく必要があります。

例えば、本事例であれば、Aさん・Bさん・Cさんが全体の過半数の議決権を有するようにしつつ、1000万円の出資をするD社が納得する形で、どのように株式を発行するかが問題になります。

株式は、すべて同条件のものを発行しなければならないわけではなく、異なる条件の株式を発行することもできます。このような株式のことを、「種類株式」といいます。本事例であれば、Aさん・Bさん・Cさんには議決権のある株式を、D社には議決権のない株式を発行することが考えられます。

その代わりに、D社に発行する株式は、1000万円の出資に見合い、議決権がなかったとしてもD社にとって納得することができるものにしなければなりません。具体的には、会社に利益が生じた場合に優先的に配当を受けられる設計にすることなどが考えられます。

具体的な株式設計の方法については、D社の意向を確認しつつ、自社にとって不利な条件でないか、弁護士に相談しながら検討することをおすすめします。

農地所有適格法人として維持する場合、株式上場(IPO)を実現したり、別会社の子会社化や合併などによってM&Aを実現したりすることが困難です。このような制約は、ベンチャービジネスにとって大きな問題です。農地を所有することに固執せず、農地の賃借を前提にビジネス設計を行うことも、1つの有効な選択肢であるように思われます。

第3章 アグリビジネスにおけるドローン活用

【事例】
「株式会社ネクスト・アグリビジネス」では、ドローンで定期的に農作物の生育状況を監視して、AIで分析し、自動的に適用の水や有機肥料の自動撒布を行う技術を採り入れることを計画しています。

1 ドローンに関する法律

100g(2022年6月19日までは200g)以上のドローンについては、航空法上「無人航空機」に該当します(航空法2条22号)。アグリビジネスにおいてドローンを利用する場合は、航空法の規制に対応しなければなりません。

本章では、本事例において留意しなければならない航空法の規制について取り上げます。

2 飛行の禁止空域(航空法132条)

無人航空機の飛行は、次の場合には国土交通大臣の許可がない限り禁止されています。

(1) 空港周辺の進入表面などの上空の空域(空港に近づくほど低い高度が対象になります。)
(2) 高度150メートル以上の空域
(3) 人口集中地区の上空
(4) 緊急用務空域

無人航空機の規制についての概要

国土交通省サイト「無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法」(https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html)

特に、農地でドローンを飛行させる場合に問題になりやすいのが、人口集中地区の上空に該当する場合です。人口集中地区は、国勢調査の結果に基づいて公表されており、総務省統計局のサイトで確認することができます。特に、都市圏においては、人口集中地区に該当する地域が広範にわたることが多いので、十分に注意が必要です。

人口集中地区の場合は、例外的に、次のすべての要件を満たす場合には国土交通大臣の許可が不要とされています。

(1) 十分な強度のある30メートル以下の紐でつなぎとめることで無人航空機の飛行範囲を制限していること
(2) 無人航空機の飛行範囲内に物件がないこと
(3) 無人航空機の飛行範囲内で無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者以外の立入りを管理する措置を講じていること

人口集中地区に該当する農地でドローンを利用する場合でも、固定物とドローンを30メートル以下の紐でつないで、農地内に関係者以外の人が立ち入らないように囲みを設置したり注意喚起をしたりする措置を講じることで、国土交通大臣の許可が不要になります。

3 飛行の方法についての規制(航空法132条の2第1項・第2項)

無人航空機の飛行については、国土交通大臣の承認を得た場合を除いて禁止されています。

(1) アルコール又は薬物の影響により正常な飛行ができないおそれがある間において飛行させないこと
(2) 無人航空機の状況・飛行空域と周囲の状況・気象情報・燃料搭載量やバッテリー残量を確認した後に飛行させること
(3) 飛行中の航空機や無人航空機を確認した場合に、衝突予防のための措置を講じること
(4) 飛行上の必要がないのに高調音を発したり、急降下したり、その他他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと
(5) 日出から日没までの間(日中)において飛行させること
(6) 無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること
(7) 当該無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に30m以上を保って飛行させること
(8) 多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること
(9) 無人航空機により爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通省令で定めるものを輸送しないこと
(10) 無人航空機から物件を投下しないこと

ただし、次のすべてを満たす場合は、(5)(6)(7)(10)については国土交通大臣の承認がなくても例外的に行うことができるとされています。

(1) 十分な強度のある30メートル以下の紐でつなぎとめることで無人航空機の飛行範囲を制限していること
(2) 無人航空機の飛行範囲内に物件がないこと
(3) 無人航空機の飛行範囲内で無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者以外の立入りを管理する措置を講じていること

つまり、固定物とドローンを30メートル以下の紐でつないで、農地内に関係者以外の人が立ち入らないように囲みを設置したり注意喚起をしたりする措置を講じておけば、国土交通大臣の承認がなくても、(1)夜間に飛行させたり、(2)人が常時監視しない状況で飛行させたり、(3)物件を投下したりすることができます。

4 本事例における水や肥料の撒布の問題

ドローンから水や肥料を撒布することは、物件の投下に該当します。そのため、固定物とドローンを30メートル以下の紐でつないで、農地内に関係者以外の人が立ち入らないように囲みを設置したり注意喚起をしたりする措置を講じなければ、国土交通大臣の承認なく行うことはできません。

国土交通大臣の承認については、国土交通省が公表する「国土交通省航空局標準マニュアル(空中散布)」の内容を確認したうえで、自社マニュアルとして添付し、管轄の地方航空局に申請する方法が一般的です。このような手続を怠ることのないように、十分に注意が必要です。

第4章 おわりに

アグリビジネス・スマート農業のスタートアップにおいては、このコラムで取り上げた以外にも、様々な法律知識が必要になります。例えば、(1)他の企業と業務提携を行う場合の契約交渉(2)従業員を雇用する際の労務管理(3)農作物の品質について他の企業とトラブルになった場合の法的対応などが考えられます。スマート農業であれば、(4)集積したデータを利活用するためのプラットフォームの創設や、データの販売などの場面でも、様々な法的知識が必要になります。

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