コラム

チャット・メッセージ機能の電気通信事業法対応について弁護士が解説

目次

1 チャット・メッセージ機能はオンラインサービスで欠かせない
2 チャット・メッセージ機能に対する電気通信事業法規制
3 電気通信事業の届出
4 いわゆるCookie規制への対応
5 不正な通信のモニタリング(監視)
6 プライバシーポリシーの策定
7 チャット・メッセージ機能の法的対応については弁護士にご相談を

1 チャット・メッセージ機能はオンラインサービスで欠かせない

多くのオンラインサービスにおいて、チャット・メッセージの送信機能は欠かせないものになっています。出会い・ビジネスなどのマッチングサービスはもちろん、動画配信サービス、社内業務支援サービスなどにおいても、チャット・メッセージの送信機能が備わったものは数多くあります。

このようなチャット・メッセージ機能をオンラインサービスで導入する場合、電気通信事業法への対応が必要です。具体的には、電気通信事業法に基づく届出が必要なほか、いわゆるCookie規制への対応や、「電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン」の遵守が求められます。

このコラムでは、チャット・メッセージ機能をオンラインサービスで導入する際に、電気通信事業法違反に問われないための留意点を解説します。

2 チャット・メッセージ機能に対する電気通信事業法規制

チャット・メッセージ機能のあるオンラインサービスを提供する事業は、電気通信事業法上の「電気通信事業」に該当しますので、電気通信事業法の規制に留意しなければなりません。まずは、その理由について説明します。

(1)「電気通信事業」とは?

電気通信事業法第2条
四 電気通信事業 電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業・・・をいう。

電気通信事業法が適用されるかどうかは、「電気通信役務」「他人の需要に応ずるために提供する事業」に該当するかどうかで決まります。

(2) 「電気通信役務」とは?

電気通信事業法第2条
三 電気通信役務 電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供することをいう。

「電気通信設備を用いて他人の通信を媒介」するものは、「電気通信役務」に該当します。
チャット・メッセージ機能は、運営事業者の管理するサーバーや、運営事業者の契約するクラウドサービス等の「電気通信設備」を用いて、「他人の通信を媒介」するものですので、「電気通信役務」に該当します。

(3) 「他人の需要に応ずるために提供する事業」とは?

「他人の需要に応ずるため」の意味は曖昧で、総務省の「電気通信事業参入マニュアル」においても、明確な線引きは示されていません。もっとも、チャット・メッセージ機能については、運営事業者自身ではなく、ユーザー間の利用のために提供されるサービスであることが明確ですので、「他人の需要に応ずるため」に該当します。

(4) まとめ

以上の理由から、チャット・メッセージ機能のあるオンラインサービスを提供する事業は、電気通信事業法上の「電気通信事業」に該当します。

3 電気通信事業の届出

「電気通信事業」を開始する際には、必ず、電気通信事業の届出をしなければなりません。チャット・メッセージ機能のあるオンラインサービスをスタートする際に、電気通信事業の届出を忘れてしまう事業者は多いですので、注意が必要です。

電気通信事業の届出は、ひな形や記載例を確認することで、専門家にご依頼いただかなくても十分にご対応が可能です。

(1) 届出の提出先は?

電気通信事業の届出は、事業を営む地域の総合通信局・電気通信事業課に提出します。総務省サイトの「電気通信事業参入・変更手続の案内」ページに、届出先の案内があります。

(2) 届出のために用意しなければならない書類は?

ア)電気通信事業届出書

電気通信事業届出書については、総務省サイトの「届出書類(届出電気通信事業)のダウンロード(国内法人等向け)」ページ(以下では「ダウンロードページ」といいます。)に、ひな形と記載例が掲載されています。

イ)ネットワーク構成図

ネットワーク構成図のひな形と記載例も、ダウンロードページに掲載されています。ネットワーク構成図については、自社とユーザー間、サービスの関係を簡単に図示することで足ります。

ウ)提供する電気通信役務に関する書類

提供する電気通信役務に関する書類のひな形と記載例も、ダウンロードページに掲載されています。「31 インターネット関連サービス(IP電話を除く。)」にチェックしてください。

エ)定款・登記事項証明書

法人の場合は、定款・登記事項証明書の提出が必要です。

オ)住民票の写し

個人事業主の場合は、住民票の写しの提出が必要です。

(3) その他の届出

住所変更や(法人の場合)代表者変更、サービス内容の変更などがあった場合に、届出が必要です。詳しくは、ダウンロードページを確認してください。

4 いわゆるCookie規制への対応

チャット・メッセージ機能のあるオンラインサービスについて、令和4年施行の改正電気通信事業法で、パーソナルデータの送信についてユーザーへの情報提供が義務化されました。

Cookie情報や、デバイスの個体識別情報など、個人情報には該当しないパーソナルデータをサービス運営者以外の事業者に送信する場合に、(1)どのような情報を送信するか、(2)送信先の事業者、(3)送信する情報の利用目的について、ユーザーに情報提供をしなければなりません。

このような情報提供は、プライバシーポリシーや、Cookieポリシーに記載して公表する形で行うことが一般的です。

これについては、別コラム「電気通信事業法改正によるCookie規制を弁護士が解説」で詳しく説明していますので、そちらをご参照ください。

5 不正な通信のモニタリング(監視)

電気通信事業者は、「取扱中に係る通信」について、「通信の秘密」を侵したりしてはなりません(電気通信事業法4項1項)。

チャット・メッセージ機能のあるオンラインサービスの運営者も、電気通信事業者に該当しますので、ユーザーの「通信の秘密」を侵さないように留意しなければなりません。

チャット・メッセージ機能のあるオンラインサービスにおいては、不正な通信のモニタリング(監視)との関係で、通信の秘密が問題になります。

運営者としては、チャット・メッセージの内容をモニタリングして、利用規約違反のやりとりを監視したいと考えることが多いです。

ただ、このようなモニタリングは、ユーザーからの同意がなければ、通信の秘密の侵害となります。

また、ユーザーからの同意については、単に利用規約に「同意したものとします」という条項を入れるだけでは足りず、送信時に「同意」チェックボックスへのクリックを求めるなど、明示的なものでなければなりません。このようなチェックボックスを設けることは、ユーザーからの不信感につながるため、モニタリングの実施は現実的ではありません。

そのため、不正な通信の取締りには、他のユーザーからの通報を受け付ける窓口の設置が、重要になります。利用規約には、次のような規定を設けて、通報があった場合に円滑に取締りができるようにしておく必要があります。

(1) 他のユーザーからの通報があった場合には、そのユーザーから通信内容の開示を受けることについて、あらかじめ承諾すること
(2) 利用規約に違反するメッセージを送信した場合には、退会・利用停止といった措置を講じられること

6 プライバシーポリシーの策定

「電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン」第15条では、電気通信事業者について、「プライバシーポリシー・・・を定め、公表することが適切である」と定められています。また、プライバシーポリシーでは、次の事項を定めることが適切であるとされています。

(1) 電気通信事業法の氏名・名称
(2) 取得される情報の項目
(3) 取得方法
(4) 利用目的
(5) 通知・公表又は同意取得の方法・利用者関与の方法
(6) 第三者提供の有無
(7) 問合せ窓口・苦情の申出先
(8) プライバシーポリシーの変更を行う場合の手続
(9) 利用者の選択の機会の内容、データポータビリティに係る事項
(10)委託に係る事項

プライバシーポリシーの策定については、法務担当者と技術担当者が連携しながら進めることが望ましいです。個人情報の取扱いについて知識のある法務担当者が不在の場合は、弁護士にプライバシーポリシーの策定を依頼することをおすすめします。

7 チャット・メッセージ機能の法的対応については弁護士にご相談を

チャット・メッセージ機能の法的対応については、電気通信事業の届出のほか、利用規約やプライバシーポリシー、Cookieポリシーの策定などが必要です。これらの法的対応でお困りの際は、当事務所にお問い合わせください。初回相談無料(60分)で、弁護士から専門的なアドバイスをご提供いたします。

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