コラム

[弁護士企画]生成AIはサービス利用規約を作成できるか?

この企画について

最近、生成AIがビジネスの場で広く活用されるようになりました。法務の分野でも、AI契約書レビューサービスなどのリーガルテックの分野で生成AIが活用され、大きく貢献しています。

この企画では、生成AIがデジタルプラットフォームの「サービス利用規約」を作成することができるか、弁護士の視点で検証してみたいと思います。

今回は、代表的な「ChatGPT 4o」と「Claude3.7 Sonnet」で生成を試みたところ、「Claude3.7 Sonnet」のほうがより高い精度が得られました。入力したプロンプトと、生成されたサービス利用規約をご紹介しながら、生成AIの能力を検証します。

※注意事項※
このコラムは、生成AIの能力を検証するための実験企画です。「サービス利用規約」のひな型をご提供するものではありませんので、ご注意ください。

入力したプロンプト

以下のオンラインサービスについて、サービス利用規約を作成してください。

1) ユーザーは、サービス上で、オンラインセミナーの動画を配信することができます。
2) ユーザーは、サービス上で、配信されるオンラインセミナーの動画を購入することができます。
3) 動画の購入は、サービスと連携した決済代行サービスを介して、クレジットカードのみで行うことができます。動画の購入者が支払った代金は、決済代行サービスを経由して、いったん当社の金融機関口座に振り込まれます。当社は、毎月1回、動画の配信者に、預かった代金の80%をまとめて入金し、残り20%を手数料として受領します。
4) オンラインセミナーの動画を購入したユーザーは、その動画を配信するユーザーに、サービス内のチャットを使用して、個別に質問を送ることができます。

生成されたサービス利用規約

第1条(総則)

1.本規約は、当社が提供するオンラインセミナー配信サービス(以下「本サービス」といいます)の利用条件を定めるものです。
2.ユーザーは、本規約に同意の上、本サービスを利用するものとします。
3.当社は、ユーザーに事前の通知をすることなく、本規約を変更することができるものとします。変更後の規約は、当社が運営するウェブサイト上に表示した時点から効力を生じるものとします。

規約の変更手続については、民法の定型約款に関する規定を意識してより詳しく記載しておくことが望ましいですが、その他の点は大きな問題はないように思います。

第2条(定義)

本規約において、以下の用語は以下の意味を有するものとします。
1.「当社」とは、本サービスを提供する会社をいいます。
2.「ユーザー」とは、本サービスに登録し、利用する個人または法人をいいます。
3.「配信者」とは、本サービス上でオンラインセミナーの動画を配信するユーザーをいいます。
4.「視聴者」とは、本サービス上で配信されるオンラインセミナーの動画を購入し視聴するユーザーをいいます。
5.「コンテンツ」とは、配信者が本サービス上で提供するオンラインセミナーの動画およびその関連情報をいいます。

「配信者」「視聴者」「コンテンツ」について、プロンプトで指示したサービス内容に即して定義づけができており、高く評価することができます。

第3条(ユーザー登録)

1.本サービスの利用を希望する者は、当社所定の方法により、ユーザー登録を行うものとします。
2.当社は、当社の判断により、ユーザー登録の申請を承認しないことがあります。
3.ユーザーは、登録情報に変更があった場合、速やかに当社所定の方法で変更手続きを行うものとします。

ユーザー登録について、どのような場合に登録を拒否するかが示されていない点が、不十分です。そこで、「第3条について、ユーザー登録の申請を承認しない場合を具体的に示してください。」というプロンプトを追加入力しました。その結果、次のとおり改善されました。

2.当社は、当社の判断により、ユーザー登録の申請を承認しないことがあります。以下の場合、当社はユーザー登録の申請を承認しないことがあります。
a. 申請内容に虚偽、誤記または記入漏れがあった場合
b. 過去に本規約違反などにより、当社から利用停止または登録抹消の処分を受けたことがある場合
c. 未成年者、成年被後見人、被保佐人または被補助人のいずれかであり、法定代理人、後見人、保佐人または補助人の同意等を得ていない場合
d. 反社会的勢力等(暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者をいう)である、または資金提供その他を通じて反社会的勢力等の維持、運営もしくは経営に協力もしくは関与する等、反社会的勢力等との何らかの交流もしくは関与を行っていると当社が判断した場合
e. 本サービスと競合するサービスを運営している場合
f. その他、当社が登録を適当でないと判断した場合

「その他、当社が登録を適当でないと判断した場合」というバスケット条項が含まれていることや、反社会的勢力を排除する条項が含まれていることなど、具体的・詳細な規定が盛り込まれており、高く評価することができます。生成AIが自力で細かいことに留意することには限界がありますが、利用者が適切な誘導を行えば、精度の高いサービス利用規約を生成できることが分かりました。

第4条(アカウント管理)

1.ユーザーは、自己の責任においてアカウントおよびパスワードを管理し、第三者に利用させないものとします。
2.アカウントまたはパスワードの管理不十分、使用上の過誤、第三者の使用等による損害の責任はユーザーが負うものとし、当社は一切の責任を負いません。

「使用上の過誤」の趣旨が分かりにくいなど、軽微な改善点はありますが、大きな問題ないように思います。

第5条(サービス内容)

1.本サービスでは、以下のサービスを提供します。
a. 配信者によるオンラインセミナー動画の配信
b. 視聴者によるオンラインセミナー動画の購入および視聴
c. 視聴者から配信者へのチャットによる質問機能
2.当社は、ユーザーに事前に通知することなく、本サービスの内容を変更、追加または中止することができるものとします。

プロンプトで指示したサービス内容が適切に反映されており、高く評価することができます。

第6条(動画の配信)

1.配信者は、本サービス上で、オンラインセミナーの動画を配信することができます。
2.配信者は、自己の責任において動画を配信するものとし、配信する動画に関するすべての権利を有していること、または権利者から適切な許諾を得ていることを保証するものとします。
3.配信者は、以下のいずれかに該当する動画を配信してはならないものとします。
a. 第三者の権利(著作権、商標権、特許権等の知的財産権、名誉権、プライバシー権、その他の権利)を侵害するもの
b. 法令に違反するもの
c. 公序良俗に反するもの
d. 当社が不適切と判断するもの
4.当社は、配信者が配信した動画が前項に違反すると判断した場合、事前の通知なく当該動画を削除し、または配信者のアカウントを停止することができるものとします。

最低限必要な内容は示されています。ただし、よりよいサービス利用規約を目指すのであれば、配信できるセミナーの内容に一定の制限をかけて、サービスのスタンスを明確にするほうがよいと思います。試しに、「第6条について、資格の講座を取り上げた動画に限定し、それ以外の動画は配信しないことを盛り込んでください。」というプロンプトを追加入力しました。その結果、次のとおり大きく改善されました。

1.配信者は、本サービス上で、資格取得のための講座・セミナーに関する動画に限り配信することができます。それ以外の内容(エンターテイメント、趣味、一般教養等)の動画は配信できないものとします。
2.配信可能な資格講座の範囲は、国家資格、公的資格、民間資格を含み、学術的・専門的知識やスキルの習得を目的とするものとします。
3.配信者は、自己の責任において動画を配信するものとし、配信する動画に関するすべての権利を有していること、または権利者から適切な許諾を得ていることを保証するものとします。また、配信者は、配信する資格講座について十分な知識と指導能力を有していることを保証するものとします。
4.配信者は、以下のいずれかに該当する動画を配信してはならないものとします。
a. 第三者の権利(著作権、商標権、特許権等の知的財産権、名誉権、プライバシー権、その他の権利)を侵害するもの
b. 法令に違反するもの
c. 公序良俗に反するもの
d. 資格講座の内容と無関係のもの
e. 誇大広告や虚偽の情報を含むもの
f. 当社が不適切と判断するもの
5.当社は、配信者が配信した動画が前項に違反すると判断した場合、または資格講座としての品質が不十分であると判断した場合、事前の通知なく当該動画を削除し、または配信者のアカウントを停止することができるものとします。
6.当社は、必要に応じて、配信者に対し、資格や専門知識に関する証明書類の提出を求めることができるものとします。

配信可能な資格の種類、配信者の能力についての保証、品質に問題がある動画の削除など、かなり細かいことに配慮した規定が盛り込まれて、大変素晴らしいです。ただし、配信者に対して資格や専門知識に関する証明書類の提出を求めていることは、ユーザーに対して「サービスの使いづらさ」を感じさせる懸念があります。「ちょっとこのサービスは使いづらそう・・・」とユーザーに感じさせないためにどこまで厳しい(あるいは緩やかな)条項にすべきかは、人間の感覚でこそ答えを出せるもので、生成AIでは答えを出しづらいように思います。

第7条(動画の購入)

1.視聴者は、本サービス上で、配信されるオンラインセミナーの動画を購入することができます。
2.動画の購入は、本サービスと連携した決済代行サービスを介して、クレジットカードのみで行うことができます。
3.視聴者が支払った代金は、決済代行サービスを経由して、いったん当社の金融機関口座に振り込まれます。
4.当社は、毎月1回、配信者に対し、預かった代金の80%をまとめて入金し、残り20%を手数料として受領します。
5.具体的な支払日、支払方法等の詳細は、別途当社が定めるものとします。

動画の購入に関して、資金決済法に抵触しないことを意識した条項が欠落しています。そこで、「第7条について、資金決済法に抵触しないために、規定を工夫してください。」というプロンプトを追加入力しました。

2.動画の購入は、当社が提携する決済代行業者(以下「決済代行業者」といいます)を通じて、クレジットカードのみで行うことができます。当社は決済手続自体を行わず、決済代行業者のサービスを利用して決済を行います。
4.視聴者が支払った代金は、決済代行業者を通じて配信者に対する債務として管理されます。当社は、決済代行業者との契約に基づき、配信者への支払いに関する事務手続きを代行します。
8.当社は資金決済法上の前払式支払手段の発行者または資金移動業者ではなく、視聴者から預かった代金の管理は決済代行業者が行うものとします。当社は、決済代行業者と配信者との間の資金移動を仲介するのみであり、視聴者から資金を預かることはありません。

資金決済法を意識した条項は追加されましたが、「配信者と視聴者との資金移動を仲介するのみ」という条項が、かえって資金移動業に該当することを疑わせます。単に「資金決済法に抵触しないように」という程度の抽象的な指示では、適切な修正は難しいようです。法的リスクを回避するような条項を目指すためには、プロンプトにおいて、具体的にどのような条項を盛り込みたいか(あるいは盛り込みたくないか)を指示する必要があるようです。

第8条(チャット機能)

1.オンラインセミナーの動画を購入した視聴者は、その動画を配信する配信者に対し、本サービス内のチャット機能を使用して、個別に質問を送ることができます。
2.配信者は、視聴者からの質問に対し、合理的な範囲で回答するよう努めるものとします。
3.チャット機能を利用した視聴者と配信者間のやり取りは、当該視聴者と配信者のみが閲覧できるものとします。
4.ユーザーは、チャット機能を利用して、以下のいずれかに該当する内容を送信してはならないものとします。
a. 第三者の権利を侵害するもの
b. 法令に違反するもの
c. 公序良俗に反するもの
d. 当社が不適切と判断するもの
5.当社は、ユーザーがチャット機能を不適切に利用していると判断した場合、事前の通知なくチャット機能の利用を制限し、または当該ユーザーのアカウントを停止することができるものとします。

電気通信事業法の「通信の秘密」に配慮して「視聴者と配信者のみが閲覧できる」ことを示したり、配信者が質問にどこまで回答すべきかを明瞭にしたり、細かいところまで工夫されています。ただし、チャットにおいて不適切なやりとりがあった場合に、事業者がどうやってそれを発見するか、という視点が欠落しています。

そこで、「第8条について、電気通信事業法に抵触しないことを前提に、不適切な投稿があった場合に当社が把握できるような条項を盛り込んでください。」というプロンプトを追加入力したところ、次のような改善が見られました。

6.ユーザーは、チャット機能において不適切な内容を発見した場合、当社所定の「通報」機能を使用して、当社に報告することができます。当社は、ユーザーからの通報を受けた場合に限り、電気通信事業法に配慮しつつ、通報対象となったチャットメッセージの内容を確認することがあります。
7.本サービスは、チャットの安全性と健全性を確保するため、AIを活用した自動監視システムを導入しています。このシステムは、特定のキーワードや不適切な表現パターンを検出した場合に限り、当該メッセージを自動的にフラグ付けします。フラグ付けされたメッセージについては、ユーザーからの通報があった場合に限り、当社が内容を確認することがあります。
8.ユーザーは、本条に定める監視および通報システムの存在および運用について同意するものとします。なお、当社による監視は最小限にとどめ、通信の秘密を不当に侵害することのないよう配慮します。

一方のユーザーの通報があった場合に限定してチャットの内容を確認するようにしたことなど、電気通信事業法の「通信の秘密」に配慮した規定に改善されています。ただし、「AIを活用した自動監視システム」については、電気通信事業法に抵触するおそれがあり、事業者がそのリスクを理解しないままに盛り込むことは危険です。生成AIを利用する場合に、利用者の側にも十分な法的知識がないと、思わぬリスクを負ってしまうおそれがあります。

第9条(禁止事項)

ユーザーは、本サービスの利用にあたり、以下の行為を行ってはならないものとします。
1.法令または本規約に違反する行為
2.当社または第三者の権利を侵害する行為
3.当社または第三者の名誉・信用を毀損する行為
4.公序良俗に反する行為
5.本サービスの運営を妨害する行為
6.本サービスのネットワークまたはシステム等に過度な負荷をかける行為
7.本サービスのシステムに不正にアクセスする行為
8.他のユーザーのアカウントを不正に使用する行為
9.当社または第三者になりすます行為
10.反社会的勢力に関与する行為
11.その他、当社が不適切と判断する行為

こちらは、定型性の高い条項であり、おおむね必要な内容が盛り込まれています。

第10条(権利帰属)

1.本サービスに関する知的財産権は、すべて当社または当社にライセンスを許諾している者に帰属します。
2.配信者が配信する動画に関する権利は、当該配信者に帰属します。ただし、配信者は、当社に対し、本サービスの提供、改善、宣伝等のために必要な範囲内で、当該動画を使用する権利を許諾するものとします。

最低限必要な内容は盛り込まれています。ただし、「本サービスの提供、改善、宣伝等のために必要な範囲内で、当該動画を使用する権利を許諾する」という部分は、配信者に対して「自分の動画が意図しない形で使われるのではないか」という懸念を抱くおそれのある内容になっています。配信者の不安感を解消するためには、どのような場合の利用が想定されるか、より具体的な記載をするほうが望ましいです。

そこで、「第10条について、「本サービスの提供、改善、宣伝等のために必要な範囲内」という箇所が抽象的なため、もっと具体的な例を挙げておきたいです。」というプロンプトを追加入力したところ、次のような改善が見られました。

2.配信者が配信する動画に関する権利は、当該配信者に帰属します。ただし、配信者は、当社に対し、以下の目的のために必要な範囲内で、当該動画を使用する権利を許諾するものとします。
a. 本サービス内での動画の配信、保存、表示および再生
b. 本サービスの品質および安全性の維持・向上のための分析
c. 本サービスの障害対応およびトラブルシューティング
d. 本サービスの機能改善および新機能開発のための分析
e. 本サービスのウェブサイト、SNS、広告等での動画のサムネイル画像、タイトル、概要の掲載
f. 特定の資格講座を紹介する目的での、動画の一部(30秒以内)の抜粋
g. 本サービスの利用状況の統計的な分析(個人を特定しない形での集計・分析)
h. 法令に基づく要請への対応

具体的にどのような場合に事業者が動画を使用するかが明瞭になり、配信者に生じうる不安感が解消されました。利用者が適切な誘導を行えば、精度の高いサービス利用規約を生成できることが分かりました。

第11条(免責事項)

1.当社は、本サービスの内容の正確性、完全性、有用性、特定目的への適合性等について、いかなる保証も行わないものとします。
2.当社は、本サービスの中断、停止、終了、利用不能または変更、ユーザーのデータの消失または機器の故障もしくは損傷、その他本サービスに関連してユーザーが被った損害について、一切の責任を負わないものとします。
3.当社は、ユーザー間または第三者との間において生じた取引、連絡、紛争等について、一切の責任を負わないものとします。

免責条項を広く盛り込む視点は正しいですが、消費者契約法上無効になるおそれのある条項が含まれています。そこで、「第11条について、消費者契約法上無効になるおそれはありませんか。」というプロンプトを追加入力したところ、次のとおり改善されました。

1.当社は、本サービスの内容について、その完全性、正確性、有用性、特定目的への適合性等に関して、いかなる保証も行わないものとします。ただし、当社の故意または重大な過失による場合はこの限りではありません。
2.当社は、本サービスに関して、ユーザーに生じた損害について、当社の債務不履行または不法行為によりユーザーに生じた損害のうち、特別な事情から生じた損害(当社またはユーザーが損害発生につき予見し、または予見し得た場合を含みます)について、責任を負わないものとします。ただし、当社の故意または重大な過失による場合はこの限りではありません。
3.当社は、本サービスの中断、停止、終了、利用不能または変更、ユーザーのデータの消失または機器の故障もしくは損傷、その他本サービスに関連してユーザーが被った損害について、当社の債務不履行または不法行為による場合を除き、賠償責任を負わないものとします。
4.当社は、ユーザー間または第三者との間において生じた取引、連絡、紛争等について、当社に故意または過失がある場合を除き、一切の責任を負わないものとします。
5.本サービスに関連して当社がユーザーに対して損害賠償責任を負う場合においても、当社の賠償責任は、当該ユーザーが当社に直近の6か月間に支払った利用料金の総額または1万円のいずれか高い方を上限とします。ただし、当社の故意または重大な過失による場合はこの限りではありません。
6.前各項の規定にかかわらず、消費者契約法その他の法令に基づき、本規約における免責事項または責任制限事項が無効とされる場合には、当社は、当該法令が定める範囲内で責任を負うものとします。

消費者契約法を意識して、免責条項が無効になった場合でも損害賠償の上限額が制限されることや、故意・重過失では免責されないことなどが追加されました。

第12条(サービスの中断・停止)

1.当社は、以下のいずれかに該当する場合、ユーザーに事前に通知することなく、本サービスの全部または一部の提供を中断または停止することができるものとします。
a. 本サービスに係るシステムの保守点検または更新を行う場合
b. 地震、落雷、火災、停電、天災などの不可抗力により、本サービスの提供が困難となった場合
c. コンピュータまたは通信回線等が事故により停止した場合
d. その他、当社が本サービスの提供が困難と判断した場合
2.当社は、本サービスの提供の中断または停止により、ユーザーまたは第三者が被ったいかなる損害についても、一切の責任を負わないものとします。

こちらは、定型性の高い条項であり、おおむね必要な内容が盛り込まれています。ただし、消費者契約法上の問題は、先ほど第11条で説明したとおりです。

第13条(退会)

1.ユーザーは、当社所定の方法で手続きを行うことにより、いつでも退会することができます。
2.退会にあたり、当社は、退会したユーザーに関する情報を引き続き保持する場合があります。
3.退会後、未払いの手数料がある場合、配信者は、当社に対し、当該手数料を支払う義務を負うものとします。

こちらは、定型性の高い条項であり、おおむね必要な内容が盛り込まれています。強いていえば、退会によって受講中の動画が視聴できなくなることは、明示しておいたほうがよいと思います。

第14条(利用制限・登録抹消)

1.当社は、ユーザーが以下のいずれかに該当する場合、事前の通知なく、ユーザーに対して、本サービスの全部もしくは一部の利用を制限し、またはユーザーとしての登録を抹消することができるものとします。
a. 本規約のいずれかの条項に違反した場合
b. 登録事項に虚偽の事実があることが判明した場合
c. 当社からの連絡に対し、相当期間返答がない場合
d. その他、当社が本サービスの利用を適当でないと判断した場合
2.当社は、本条に基づき当社が行った行為によりユーザーに生じた損害について、一切の責任を負わないものとします。

こちらは、定型性の高い条項であり、おおむね必要な内容が盛り込まれています。

第15条(個人情報の取扱い)

1.当社は、本サービスの提供にあたり、当社のプライバシーポリシーに従って、ユーザーの個人情報を適切に取り扱います。
2.ユーザーは、当社のプライバシーポリシーに同意の上、本サービスを利用するものとします。

こちらは、定型性の高い条項であり、おおむね必要な内容が盛り込まれています。

第16条(通知または連絡)

ユーザーと当社との間の通知または連絡は、当社所定の方法によって行うものとします。当社は、ユーザーから当社に届け出られた連絡先に通知または連絡を行えば足りるものとします。

こちらは、定型性の高い条項であり、おおむね必要な内容が盛り込まれています。

第17条(権利義務の譲渡の禁止)

ユーザーは、当社の書面による事前の承諾なく、利用契約上の地位または本規約に基づく権利もしくは義務を第三者に譲渡し、または担保に供することはできません。

こちらは、定型性の高い条項であり、おおむね必要な内容が盛り込まれています。

第18条(準拠法・裁判管轄)

1.本規約の解釈にあたっては、日本法を準拠法とします。
2.本サービスに関して紛争が生じた場合には、当社の本店所在地を管轄する裁判所を専属的合意管轄とします。

こちらは、定型性の高い条項であり、おおむね必要な内容が盛り込まれています。

不足している条項

ユーザーに対する損害賠償責任

事業者がユーザーに対して損害賠償責任を追及することができる旨の条項が欠落していました。「ユーザーに対する損害賠償責任の条項は入っていますか。」というプロンプトを追加入力したところ、次のような条項が追加されました。

1.ユーザーは、本規約に違反することにより、または本サービスの利用に関連して当社または第三者に損害を与えた場合、当社または当該第三者に対して、当該損害を賠償する責任を負います。
2.配信者は、自己が配信した動画のコンテンツに起因して第三者の権利を侵害した場合、または法令に違反した場合、自己の責任と費用において解決するものとし、当社に一切の迷惑をかけないものとします。
3.ユーザーが、本サービスを利用して投稿または伝送した情報(データ、コンテンツを含む)により当社に損害を与えた場合、当社は当該ユーザーに対して、当該損害の賠償を請求することができるものとします。
4.本サービス利用に関連して、ユーザーの行為により他のユーザーに損害が発生した場合、当該ユーザー間で解決するものとし、当社は当該損害について一切責任を負わないものとします。ただし、当社に故意または重大な過失がある場合を除きます。

ユーザーの個別の承諾なく事業譲渡することができる旨の規定

事業譲渡に関する規定が抜けており、現在のままでは、このサービスに係る事業を他社に譲渡する際に、ユーザーから個別に承諾を得なければなりません。そこで、「当社が本サービスを事業譲渡する際にユーザーから個別の承諾を得なくてよいことを規定に盛り込みたいです。」というプロンプトを追加入力して、改善を求めたところ、次のような条項が追加されました。

1.当社は、本サービスにかかる事業を第三者に譲渡した場合、当該事業譲渡に伴い本規約に基づく権利および義務、登録情報その他のユーザーに関する情報を当該事業譲渡の譲受人に譲渡することができるものとします。
2.前項に定める事業譲渡には、会社分割その他事業が移転するあらゆる場合を含むものとします。
3.当社が本サービスにかかる事業を第三者に譲渡した場合、ユーザーは、当該譲渡に関して個別の同意を要することなく、本規約に基づく契約上の地位、本規約に基づく権利・義務および登録情報その他の情報が譲渡先に譲渡されることに同意したものとみなします。

生成AIの利用者が、欠落している条項を適切に指摘すれば、質の高いサービス利用規約を生成できることが分かりました。

生成AIを利用してサービス利用規約を作成するときの注意点

生成AIを利用してサービス利用規約を作成される企業様は、少なからずいらっしゃると思います。生成AIが生成した文案を使用するときは、次のようなことに注意が必要です。

1.サービスの内容をできる限り詳しく・正確にプロンプトに盛り込む

検証した結果、生成AIは、プロンプトにおいて説明されたサービス内容を、かなり忠実にサービス利用規約に反映できることが分かりました。精度の高いサービス利用規約を作成するためには、サービスの内容をできる限り詳しく・正確にプロンプトに盛り込む必要があります。

そのためには、サービスに盛り込んだ機能を細かく分析して、それをくまなく文章化することが必要です。生成AIを利用してサービス利用規約を作成する場合には、サービスに盛り込んだ機能に対する正確な理解と高い表現力が求められます。

2.類似サービスの利用規約を研究して必要な条項を網羅する

検証した結果、生成AIは、必要最小限の条項を盛り込むことはできるものの、サービス内容に即して「できれば盛り込むことが望ましい条項」を網羅的に反映することは難しいことが分かりました。ただし、こちらから適切な誘導をすれば、その点もかなり改善することができそうです。

そこで、生成AIを利用してサービス利用規約を作成する場合には、類似サービスの利用規約を研究して、どのような条項が盛り込まれているかを理解しておくことが望ましいです。

3.サービスに関連した法的な知識・理解を身につける

生成AIは、法的な知識・理解をもとにサービス利用規約を作成しているのではなく、既存のサービス利用規約を学習して、再現しているだけです。そのために、サービスに関連した法規制に抵触するような条項を誤って盛り込んだり、法規制への抵触を回避するために必要な条項を欠落させてしまったりするおそれがあります。これらの問題は、利用者の側がプロンプトで具体的な指示を出せば解消されます。

生成AIを利用してサービス利用規約を作成する場合には、利用者の側がサービスに関連した法的な知識・理解を身につけて、ミスを的確に指摘することが求められます。

弁護士にサービス利用規約の作成を依頼するメリット

生成AIで品質の高いサービス利用規約を作成するためには、利用者側が適切なプロンプトを入力して、生成AIをサポートすることが求められます。品質の高いサービス利用規約が完成するかどうかは、(1)サービス内容を具体的・正確に表現する能力、(2)類似サービスの利用規約を分析する能力、(3)サービスに関連した法的な知識・理解を、生成AIの利用者側がどこまで持っているかで決まるわけです。

つまり、生成AIで質の高いサービス利用規約を作成するためには、高度な専門知識・スキルが必要になります。生成AIで気軽に文章の生成が可能になった現代社会においても、弁護士にサービス利用規約の作成を依頼するメリットは大いにあります。ぜひ、サービス利用規約の作成にお困りのときは、当事務所までお問い合わせいただければと思います。


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