目次
第1章 「NFT×地方創生」ビジネスの未来予想
1 NFTとは?
2 NFT×地方創生の実例
3 「NFT×地方創生」ビジネスの未来
第2章 「NFT×地方創生」ビジネスで法律への理解が大切な理由
第3章 「NFT×地方創生」ビジネスに関連する法的課題
1 NFTは「物」ではない!
2 著作物の取扱いについて規約での明確化を
3 特典の利用条件について規約での明確化を
4 利益分配の仕組みについて規約での明確化を
5 景品表示法の規制への留意を
6 金融商品取引法・資金決済法に抵触しないための工夫を
第4章 「NFT×地方創生」ビジネスの成功のために弁護士ができること
コラム
第1章 「NFT×地方創生」ビジネスの未来予想
1 NFTとは?
NFT(Non-Fungible Token)は、「代替性のないトークン」のことです。
通常のデジタルデータの場合、複製されたものか、改変されたものかを判断することが困難です。他方、NFTの場合、ブロックチェーン技術によって、発行から現在までの履歴が残るため、そのNFTが原物か複製か、あるいは、改変されていないかどうかを判断することができます。
このような特長から、NFTは、デジタルデータを、まるで「形のあるモノ」のように扱うことができます。
NFTは、アート作品や楽曲を限定配布したり、デジタル会員証やバーチャル空間での住民証明書を発行したり、その特性を活かした様々な用途に活用されています。
2 NFT×地方創生の実例
NFTを活用した地方創生の取組みは、すでに様々な地域で実現に至っています。参考に、いくつかご紹介します。
(1) ECHIZENクエスト
福井県越前市は、官民連携のもとで、「ECHIZENクエスト」というプロジェクトを進めています。このプロジェクトは、地域で伝統産業のものづくりを体験し、参加者限定で地域ゆかりの人物が描かれたNFTを発行するものです。NFTを集めることが地域を訪れる1つのきっかけになり、地域観光の活性化につなげることができます。
(2) 山古志DAO
新潟県の旧山古志村では、NFTで「デジタル村民権」を発行する取組みが行われています。デジタル村民権になると、バーチャル空間で、地域コミュニティに参加することができます。デジタル村民権を得た方は、バーチャル空間のみならず、地域行事への参加など、現実社会でも交流することができます。
(3) META田植え
新潟県の新発田市では、メタバース上で田植え体験ができる「META田植え」のイベントを開催して、参加者限定でNFT化した写真を配布する試みがされました。メタバース×NFTという話題性のある2つの技術をうまく活かした、地域ならではの取組みです。
(4) ふるさと納税とのコラボ
NFTをふるさと納税の返礼品として提供する例も見られます。例えば、静岡県三島市では、限定ウイスキーを優先的に購入する特典の付いたNFTを、ふるさと納税の返礼品として発行しています。
(5) 鉄道NFT
JR西日本は、数量限定で「懐鉄NFTコレクション」を発売しました。NFTの購入者は、懐かしい鉄道車両を再現したコンテンツを視聴することができます。鉄道ファンの心をつかみながら、地域への関心を高める取組みです。
3 「NFT×地方創生」ビジネスの未来
NFTは、「そもそも知らない」「名前くらいしか知らない」方が大半です。NFTの活用例が限定的な理由も、そのような知名度の低さにあると思います。
ただ、NFTは、地方創生ビジネスにおいて、今後大きく注目されることになると予想しています。
実例からもうかがえるように、NFTは、創意工夫次第で、地域の魅力を発信するための「強いツール」となります。また、NFTは、世界中に関心を持った方がいらっしゃるため、インバウンドとの親和性も高いです。
今後、NFTが世の中に浸透し、「だれもが知っている」ものになれば、「NFT×地方創生」ビジネスは大きく発展していくはずです。
第2章 「NFT×地方創生」ビジネスで法律への理解が大切な理由
ここまで、「NFT×地方創生」ビジネスの将来性について、「ビジネス視点」でご紹介しました。ここからは、弁護士視点で、「NFT×地方創生」ビジネスの法的課題についてご説明します。
「NFT×地方創生」ビジネスに取り組んでいきたい起業家の方にとって、その法的課題を理解することは大変重要です。なぜなら、NFTには、スキームの選択を誤って業法規制に抵触するリスクや、NFT保有者との間でトラブルが発生してしまうリスクがあるためです。
地方創生ビジネスにおいて、法的課題への対応を欠くことは、致命的です。なぜなら、法的リスクをはらんだビジネスは、地方自治体との提携が難しいからです。
地方自治体は、一般的に、法的リスクに対して慎重な考えを持っています。NFTは、多くの地方自治体にとって、「ブラックボックス」なものです。人間は、何か分からないものに対して、「何となく怖そう」という印象を持ちます。
地方自治体の懸念を払拭して、提携を実現するためには、「NFTの法的課題」に対して高い関心を持って、その課題をどのように克服してきたかを積極的に発信することが必要です。
「NFT×地方創生」ビジネスで成功を収めるために、法的課題への理解は不可欠なのです。
第3章 「NFT×地方創生」ビジネスに関連する法的課題
では、NFTに関連してどのような法的課題があるかを、ご説明します。
1 NFTは「物」ではない!
NFTは、あくまでもデジタルデータであって、民法上の「物」ではありません。所有権や占有権のような「物」に認められる権利を観念することもできません。
そこで、NFTについては、NFT発行者やNFTマーケットプレイスにおいて「規約」を作成して、NFTの保有者が「どのような権利を持っているか」を明確に規定しておく必要があります。
2 著作物の取扱いについて規約での明確化を
NFTは、デジタルアートなどの著作物として、あるいは、著作物を閲覧する権利と紐付けて発行されることがあります。
地方創生ビジネスであれば、例えば、非公開の施設内部を探索できるVR動画や、地元企業と有名キャラクターがコラボした画像などが挙げられます。
このようなNFTにおいては、NFT発行者やNFTマーケットプレイスにおいて「規約」を作成して、NFTの保有者がその著作物をどこまで利用することができるのかを明確に規定しておく必要があります。
3 特典の利用条件について規約での明確化を
NFTは、デジタル会員証のような形で発行されて、保有者に対して特典が付与されることがあります。
地方創生ビジネスであれば、例えば、NFTの購入者に対してコミュニティへの参加権を与えたり、地元施設とコラボしてお試し利用権を与えたりすることなどが挙げられます。
このようなNFTにおいては、NFT発行者やNFTマーケットプレイスにおいて「規約」を作成して、NFTの保有者が、どのような条件で、どのような特典を受けられるかを明確に規定しておく必要があります。
4 利益分配の仕組みについて規約での明確化を
NFTでは、転売時に発行者に対して一定額の利益が分配される仕組みが採られていることがあります。
地方創生ビジネスであれば、例えば、地方出身のアーティストが楽曲をNFT化して、その楽曲が転売される際に一定の収益が地域活性化プロジェクトに寄付されるような仕組みが考えられます。
このようなNFTにおいては、どのような条件で、利益の分配が発生するのか、NFT発行者やNFTマーケットプレイスが「規約」などで条件を明確化しておく必要があります。
5 景品表示法の規制への留意を
NFTは、サービスの利用者に対して無償で配布されることがあります。地方創生ビジネスであれば、例えば、地元施設とコラボして、利用者に対してNFTを無償配布する取組みなどが挙げられます。
このようなNFTは、「景品類」に該当し、景品表示法の規制が問題になることがあります。
景品表示法によれば、顧客を誘引するための手段として、自社の商品販売・サービス提供に付随して提供する経済的利益は、「景品類」に該当し、一定の価額を超えたものを提供することが禁止されています。
NFTの場合、そもそも市場価値の算定が難しい場合や、市場価値の変動が大きい場合がよくあるため、一定の価額を超えている/いないの判断が難しいことがあります。
消費者庁によれば、景品類が非売品の場合における算定方法について、「入手した価格、類似品の市価等を勘案して、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入することとしたときの価格を算定し、その価格による」という基準や、「類似品も市販されていない場合は、仕入価格や、景品類の製造コスト、景品類を販売することとした場合に想定される利益率などから、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入することとしたときの価格を算定し、その価格による」という基準を示しています。
NFTの場合、その発行までに要したコストや、希少価値などを踏まえて、価格を算定することになると思われますが、実際にどうやって算定すればよいかは、なかなか難しい問題です。景品表示法への抵触が問題になりうるNFTを発行する際には、消費者庁から公表される最新情報をチェックしたり、弁護士に相談したりすることをおすすめします。
6 金融商品取引法・資金決済法に抵触しないための工夫を
NFTは、金融商品取引法・資金決済法への抵触が問題になるケースがあるため、十分に注意が必要です。
(1) 金融商品取引法への抵触
NFTは、購入者から集めたお金でプロジェクトを立ち上げて、その結果得られた収益を購入者に還元する仕組みに利用されることがあります。
地方創生ビジネスであれば、地域活性化プロジェクトの立ち上げのために、NFTを活用することなどが挙げられます。
ただ、このようなNFTは、集団投資スキームをデジタル化したトークンに該当するとして、金融商品取引法が適用されるおそれがあります。そして、このようなNFTを取り扱うマーケットプレイスは、金融商品取引法上の登録が必要になります。
他方、NFTの購入者に対してプロジェクト成功時に御礼品をお渡しするだけで、収益に応じた利益が還元される仕組みになっていなければ、金融商品取引法は適用されないものと考えられます。また、NFTの購入者に対して、プロジェクトに参加したり、プロジェクトの進め方について投票権を与えたりする場合も、同様です。
金融商品取引法への抵触を回避すれば、地域活性化プロジェクトの実現のためにNFTを活用することは、有効な手段であると思います。
(2) 資金決済法への抵触
NFTは、プリペイドカードのように購入数量に応じてサービス提供を受けられる仕組みで発行した場合、「前払式支払手段」に該当します。地方創生ビジネスであれば、地元の商店街でプリペイドカード代わりに使えるデジタル証を、NFTで発行するようなケースが挙げられます。
また、NFTを決済手段として発行した場合は、「電子決済手段」に該当します。地方創生ビジネスであれば、一定のエリアで使うことができるデジタル地域通貨をNFTで発行するようなケースが挙げられます。
このようなケースでは、資金決済法が適用されますので、注意が必要です。
第4章 「NFT×地方創生」ビジネスの成功のために弁護士ができること
「NFT×地方創生」ビジネスは、NFTの法的課題を十分に理解すれば、業法規制を回避し、参入ハードルを下げることができます。
そして、スタートアップ企業でも、地域の魅力を理解して、斬新なアイデアを存分に活かせば、「NFT×地方創生」ビジネスの業界に参入することができます。はじめはスモールスタートであっても、話題性が出れば、ビジネスを拡大し、最終的には地方自治体との提携も目指すことができます。
私たち弁護士は、ビジネスで成功する斬新なアイデアをご提供することはできませんが、お持ちのアイデアに対してどのような法的課題があるかを整理し、その課題を克服するためのご提案を差し上げることはできます。
また、ビジネスの立ち上げにおいて必要な規約の整備や、トラブルへの対応、さらには、他企業・地方自治体と提携する際の契約書レビューなど、多方面でバックアップすることができます。
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