コラム

オンライン学習塾の特商法対応について弁護士が解説

目次

第1章 学習塾のオンライン化が進む
第2章 特定継続的役務提供についての法律知識
1 特定継続的役務提供とは?
2 オンライン学習塾は特定継続的役務提供に該当する
3 概要書面と契約書面
4 関連商品の販売
5 クーリング・オフ
6 中途解約のルール
第3章 契約書面の作り方(特定継続的役務提供)
1 契約書面の体裁面での留意点
2 契約書面に記載しなければならない事項
第4章 概要書面の作り方(特定継続的役務提供)
1 概要書面の体裁面での留意点
2 概要書面に記載しなければならない事項
第5章 概要書面や契約書面をオンラインで交付する手続(特定継続的役務提供)
1 契約者への事前の説明
2 契約者に対する事前の確認事項
3 承諾の手続
4 承諾を得たことについての文書の交付
第6章 通信販売の法律知識
第7章 おわりに

第1章 学習塾のオンライン化が進む

最近、学習塾をオンラインで開講する事例が増えています。新型コロナの流行をきっかけに、学校でもオンライン授業が導入され、小中校生にとって、オンラインでの学びが抵抗感のないものになっています。また、オンラインで開講する学習塾は、地域を選ばず全国に高品質なサービスを提供することのできるメリットがあります。オンライン学習塾は、アフターコロナ時代となったこれからも、普及していくことが期待されます。

オンライン学習塾を始める際に気をつけなければならないのが、特定商取引法への対応です。オンライン学習塾は、特定商取引法上、「特定継続的役務提供」「通信販売」に該当しますので、これらの形態の取引において遵守しなければならない事項を知っておかなければなりません。

今回のコラムでは、オンライン学習塾を始める際に知っておくべき特定商取引法の知識について解説します。

第2章 特定継続的役務提供の法律知識

1 特定継続的役務提供とは?

エステ、英会話、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚相手紹介サービスなどは、実際に利用してみないと質の善し悪しが分からないうえに、契約期間が長期的になる傾向にあるため、消費者トラブルが多い業界とされています。そのような問題から、特定商取引法は、このような類型のサービスを「特定継続的役務提供」として、規制対象にしています。

具体的には、クーリング・オフ中途解約についてのルール、契約時の書面交付についての義務などが、特定商取引法において定められています。

2 オンライン学習塾は特定継続的役務提供に該当する

特定継続的役務提供に該当するものは、特定商取引法施行令の別表第4に掲げられています。このうち、次に該当するものは、オンライン学習塾は、「家庭教師等」(別表第4の4号)に該当します。

四 ・・・学校(幼稚園及び小学校を除く。)、・・・専修学校若しくは・・・各種学校の入学者を選抜するための学力試験・・・に備えるため又は学校教育(・・・学校(幼稚園及び大学を除く。)における教育をいう。・・・)の補習のための学力の教授(同項に規定する場所[役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所]以外の場所において提供されるものに限る。)

要するに、入試対策の授業や小中高の授業の補習のための授業を提供し、授業のための教室がないサービスは、「家庭教師等」(別表第4の4号)に該当します。

特定継続的役務提供には、「学習塾等」(別表第4の5号)という類型がありますが、これに該当するものは教室で授業を行うサービスに限られます。つまり、オンライン学習塾は、「学習塾等」(別表第4の5号)ではありません。

「学習塾等」(別表第4の5号)と「家庭教師等」(別表第4の4号)とは、中途解約時の違約金の上限額に違いがありますので、きちんと区別しておく必要があります。

ただし、契約でサービス提供が約された期間が2か月以内であれば、特定継続的役務提供には該当しません(特定商取引法施行令11条1項、特定商取引法41条1項1号)。このことから、お客様の都合で、いつでも、すぐに、違約金なくやめることができる月謝制を採用している場合は、原則として特定継続的役務提供には該当しません。ただし、1年間の使用を前提とした教材をはじめに購入させる場合など、実質的に2か月を超えるサービスの提供が前提になっている場合には、それをもって特定継続的役務提供に該当するものと評価されることがあります

また、契約において支払わなければならないとされる金額が5万円以下の場合も、特定継続的役務提供には該当しません(特定商取引法施行令11条2項、特定商取引法41条1項1号)。ただし、この金額は、契約期間の授業料のほか、入学金や施設利用料、教材費などを含んだ総額で考えますので、前述したような月謝制でない限り、要件を満たさないケースが多いと思います。

柔軟なサービス提供を行えるようにするためには、特定継続的役務提供に該当しないための方法を考えるよりも、むしろ、特定継続的役務提供に該当することを前提にした対策を講じることが望ましいように思います。

3 概要書面と契約書面

特定継続的役務提供の特定商取引法上の規制についてまず押さえておくべきことは、概要書面と契約書面の交付義務についてです。

まず、概要書面とは、契約を締結する前に交付しなければならない書面で、契約の概要を記載するものです。また、契約書面とは、契約締結後遅滞なく交付しなければならない書面で、契約の内容を記載するものです。単に契約書を作成して交付すればよいのではなく、契約締結前に別途概要書面を交付し、2段階の書面交付をしなければならない点は、留意が必要です。このような2段階の書面交付によって、契約者が契約内容を誤解することを防ぐとともに、契約時における言った言わないをめぐるトラブルを防ぐ仕組みになっています。

オンライン学習塾の場合、契約の手続も対面ではなくオンラインで行われることが一般的です。概要書面と契約書面の交付を不備なく行うためには、次のような流れを採用することが適切です。

(1) お問い合わせをしたお客様に概要書面を交付する。
(2) 概要書面をお手元に置いていただきオンラインで担当者が契約内容を説明する。
※ 法的義務ではありませんが、契約内容への誤解を防ぐためにはこのような対応が望ましいものと思います。
(3) お客様が契約を希望する場合には、契約書の取り交わしを行って、最終的にその契約書や、契約内容を記載した書面を送付する。
※ 契約書や契約内容を記載した書面がお客様のもとに到達したタイミングが、クーリング・オフの起点となりますので、書面を確実にお客様の手元に交付することが重要です。
※ これらの書面は、契約締結後遅滞なく交付することが義務づけられていますので、お客様との契約成立後、迅速に交付の手続を行える体制を整える必要があります。

なお、令和5年6月に施行する特定商取引法改正で、概要書面や契約書面について、書面(紙の文書)ではなく、電子データとして交付することができるようになります。ただし、電子データとして交付する際には様々な要件がありますので、留意が必要です。詳しくは、後ほど説明します。

また、契約書面や概要書面の書き方については、別の章で説明します。

4 関連商品の販売など

特定継続的役務提供に該当するオンライン学習塾のサービスを受けるために必要な書籍教材や電子教材のうち、自社で販売・有償貸与したり、あるいは、他社と提携して販売・有償貸与したりしたものは、特定商取引法上、関連商品として位置づけられています。サービスを受けるために必須の教材ではないとしても、学習効果を上げるために有用であることを勧誘したうえで販売した教材などは、関連商品に該当します。

関連商品の販売・有償貸与については、契約書面に記載する義務があり、クーリング・オフや中途解約に関するルールが適用されます。

5 クーリング・オフ

特定継続的役務提供には、特定商取引法上、クーリング・オフを認めなければならないルールがあります。クーリング・オフとは、いったん契約の申込みをしたり、契約を締結したりした後に、一定期間(原則として、クーリング・オフについて記載した契約書面を交付してから起算して8日間)、契約の申込みを撤回したり、解除したりする機会を消費者に与える制度です。

クーリング・オフを消費者に行使されると、開講後であっても入学金や授業料などを全額返金しなければならず(特定商取引法48条6項・7項)、損害賠償や違約金の請求をすることもできません(同条4項)。

クーリング・オフは、特定継続的役務提供契約だけではなく、関連商品の販売契約・有償貸与契約にも適用されます。つまり、オンライン学習塾との契約者は、入塾だけではなく、教材の購入についても、クーリング・オフを行使することができます。

オンライン学習塾の提供者は、契約者からクーリング・オフを行使された場合には、入塾金や既払の授業料・教材代などを返金しなければなりません。

契約書面にクーリング・オフについてどのような記載をしなければならないかについては、別の章で取り上げます。

6 中途解約のルール

オンライン学習塾の受講者が、他のサービスに乗り換えたいと考えたり、途中で受験を断念したりと、途中でサービスを辞めたいと考えることはしばしばあります。オンライン学習塾のような特定継続的役務提供契約については、特定商取引法上、中途解約のルールが定められています。

まず、特定継続的役務提供契約については、クーリング・オフを行使することができる期間が経過した後も、中途解約(中途解約権の行使)を契約者に認めなければなりません。また、中途解約があった場合の損害賠償や違約金について、上限が定められています。

オンライン学習塾(家庭教師等)の場合、損害賠償や違約金の上限額は、次のとおりです。

(1) サービスの提供を開始する前
[上限額]2万円(初期費用)

例えば、入塾契約は締結したものの、開講前の段階で契約者が中途解約をした場合には、入塾段階で発生する入学金などのうち、2万円を超える部分を返還しなければなりません。

(2) サービスの提供を開始した後
[上限額]①2万円(初期費用)+②[提供済みのサービスの対価相当額]+③[5万円/1か月分のサービスの対価相当額(低いほうの額)]

例えば、入塾契約を締結した後、開講後に契約者が中途解約した場合には、(1)入塾段階で発生する入学金など(2万円が上限)と、(2)すでに授業を実施した分の授業料など、(3)5万円か1か月分のサービスの対価相当額のいずれか低い額については返還義務が生じませんが、それを超える部分の授業料などは返還義務が生じますので、留意が必要です。

(3) 関連商品を販売・貸与していた場合

教材などの関連商品を販売・貸与していた場合には、その販売契約・貸与契約についても中途解約を認めなければなりません。

中途解約の時点で教材などの関連商品を契約者に届ける前の段階であれば、契約時の印紙代や郵送費などの実費以外の損害賠償金や違約金を請求することはできません

中途解約の時点で教材などの関連商品を契約者に届けた後の段階であれば、契約者に関連商品の返還義務があるかどうかで、損害賠償金や違約金の上限が変わります。返還義務がない場合には、商品の販売価格以外の損害賠償金や違約金を請求することはできません。一方、返還義務がある場合には、一般的なレンタル料相当額以外の損害賠償金や違約金を請求することはできません

第3章 契約書面の作り方(特定継続的役務提供)

1 契約書面の体裁面での留意点

契約書面は、契約が成立した後、契約者が契約内容を確実に把握するために重要なものです。そのため、特定商取引法では、契約書面の体裁についてルールを定めています。

まず、契約書面は、「この書面を十分に読んでください」といった注意喚起の記載を赤字でしたうえで、赤枠でその記載を囲んでおかなければなりません

また、文字の大きさについては、JISの8ポイント以上と定められていますので、あまり小さい文字にならないように留意しなければなりません。

さらに、クーリング・オフの記載については、目立つように、赤字にしたうえで、赤枠でその記載を囲んでおかなければなりません

2 契約書面に記載しなければならない事項

特定商取引法上、契約書面に必ず記載しなければならない事項が決められています。オンライン学習塾のような特定継続的役務提供に該当する事業をスタートする際には、以下の事項について検討のうえ、漏れなく契約書面のひな形に記載しなければなりません(特定商取引法42条2項)。

(1) 事業者の氏名・名称等

事業者の氏名・名称等として、次の事項を示さなければなりません(特定商取引法施行規則93条2項1号)。

[個人の場合]事業者の氏名、住所、電話番号
[法人の場合]事業者の名称、住所、電話番号、代表者の氏名

(2) 提供するサービスの内容

オンライン学習塾の場合に最低限示さなければならない事項は、次のとおりです(特定商取引法施行規則93条1項)。

ア オンラインの形式で個別授業(又は複数人の受講生が参加する授業)を提供するサービスであること
イ 授業を提供する回数(週何回か等)や1コマの時間数

(3) サービスの提供を受けるために支払わなければならない金銭

入塾金や授業料等を項目ごとに記載して、さらに、必要な料金の総額も示さなければなりません。
教材等の商品を購入しなければならないのであれば、その金額も示します。

(4) 購入しなければならない商品

書籍教材や電子教材等、購入しなければならない商品がある場合は、その商品名や、数量、代金を示さなければなりません(特定商取引法42条2項1号、特定商取引法施行規則95条2項4号)。

[※]商品を提携事業者が販売するのであれば、その事業者について(1)と同様の事項を示さなければなりません(特定商取引法施行規則95条2項6号)。

(5) 金銭の支払の時期と方法

銀行振込みのほかクレジットカードでの支払を認めるか(認める場合には対応しているクレジットカードの種類)、一括払のほか分割払を認めているか(認めている場合にはその条件)を示します(特定商取引法42条2項3号)。

(6) サービスの提供期間

4月1日から翌年3月末日まで等、サービスの提供期間を示します(特定商取引法42条2項4号)。

(7) クーリング・オフに関する事項

クーリング・オフに関する事項については、記載すべき事項が詳細に定められています(特定商取引法42条2項4号、特定商取引法施行規則96条1項)。また、クーリング・オフに関する事項は、赤字で記載し、赤枠で囲まなければなりません(表示の都合上、下記の記載例は赤枠で囲んでいません)。記載例は、次のとおりです。

(1) ご契約者は、本契約の成立後、本書面を受領された日から起算して8日以内(受領日を含みます。)に限り、書面又は電磁的方法(当社宛(メールアドレス:***@****)にメールでご連絡ください。) にて、当社宛に、本契約を解除し、又は、本契約の申込みを撤回する旨を通知することにより、無条件で本契約を解除することができます(以下、「クーリング・オフ」といいます。)。クーリング・オフの効果は、当該書面又は当該電磁的方法を発した時点で発生します。
(2) 当社は、クーリング・オフを理由に、ご契約者に対し、損害賠償又は違約金を請求することはありません。
(3) 当社は、クーリング・オフが成立した場合には、速やかに、すでに受領している利用料のすべてを返還し、新たに利用料を請求することはありません(すでに本サービスの提供を開始している場合も含みます。)。
(4) ご契約者は、不実告知による誤認又は威迫による困惑によってクーリング・オフをすることができなかった場合には、当社から改めてクーリング・オフに関する説明を記載した書面を受領した日から起算して8日以内(受領日を含みます。)に限り、クーリング・オフをすることができます。
[教材等の関連商品も販売した場合]
(5) ご契約者は、クーリング・オフをする場合には、教材等の関連商品についての販売契約も解除することができます。当該販売契約の解除の手続及び効果については、(1)と同じです。当社は、当該販売契約の解除が成立した場合には、その商品代金の全額を速やかに返還し、ご契約者に対して損害賠償又は違約金を請求することはありません。すでに当該関連商品をお渡ししている場合は、着払にて、当社(宛先・・・)までご返送ください。

(8) 中途解約権に関する事項

オンライン学習塾のような特定継続的役務提供契約の場合、クーリング・オフの期間が経過した後であっても、中途解約権を契約者に認めなければなりません。契約書面には、中途解約権を行使した場合における料金の返還や損害賠償・違約金について明確に示しておく必要があります。また、特定商取引法上、中途解約権に関する事項として、次のことを表示しなければなりません(特定商取引法42条2項4号、特定商取引法施行規則96条1項)。

(1) ご契約者は、クーリング・オフをすることができる期間を経過した後も、将来に向かって本契約を中途解約することができます。
(2) ご契約者は、当社に書面又は電磁的方法(当社宛(メールアドレス:***@****)にメールでご連絡ください。) にてご通知いただくことで、本契約を中途解約することができます。この場合には、次のとおり計算した違約金を、当該通知を当社が受け取った日から**日以内にご請求します。ご契約者は、当該請求日から**日以内に、当該違約金の全額をお支払いいただく必要があります。・・・[以下省略]・・・
(3) 中途解約の場合において当社がご契約者に支払を請求することができる額は、特定商取引法上、本サービスの対価、並びに、中途解約によって通常生ずる損害の額又は本契約の締結・履行のために通常要する費用の額及びこれらに対する遅延損害金の額の合計が上限です。
(4) ご契約者は、(2)と同様の手続により、当社が販売した教材等の関連商品に関する契約も中途解約することができます。この場合において、当社がご契約者に支払を請求することができる額は、特定商取引法上、当該商品の通常の使用料に相当する額(当該商品の販売価格相当額から当該商品の返還時点の価格を控除した額が通常の使用料に相当する額を超えるときは、その額)、当該商品の販売価格相当額又は契約の締結・履行のために通常要する費用の額及びこれらに対する遅延損害金の額の合計が上限です。

(9) 割賦販売法に基づく抗弁権の接続

ローンでの授業料の支払を認めている場合等では、割賦販売法に基づく抗弁権の接続が認められることを表示しなければなりません。

(10) 前受金についての保全措置に関する事項

授業料等の前払を受けている場合に、その保全措置(万一倒産した場合等において契約者を保護するような措置)を講じているかどうか、講じている場合にはその内容を表示しなければなりません。もっとも、保全措置を講じること自体が義務づけられているわけではなく、保全措置を講じていなければそのことを表示しておけば足ります
※ 実際のところ、ほとんどの事業者が保全措置を講じていない状況にあります。

(11) 特約がある場合にはその内容

オンライン学習塾のような特定継続的役務提供契約の場合、契約上のルール等の特約は、すべて契約書面上にまとめて表示しなければなりません

(12) 契約締結担当者の氏名・年月日

社内で契約締結の手続を担当した従業員・役員の氏名や、契約を締結した年月日を表示しなければなりません。

第4章 概要書面の作り方(特定継続的役務提供)

1 概要書面の体裁面での留意点

概要書面は、顧客が契約を締結するかどうかを判断する際に重要な意味のあるものです。そのため、特定商取引法では、概要書面の体裁についてもルールを定めています。

(契約書面と同様に)概要書面についても、「この書面を十分に読んでください」といった注意喚起の記載を赤字でしたうえで、赤枠でその記載を囲んでおかなければなりません

また、文字の大きさについては、JISの8ポイント以上と定められていますので、あまり小さい文字にならないように留意しなければなりません。

概要書面において記載すべき事項は、契約書面と重なるものが多いです。そのため、作成順序としては、先に契約書面を作成したうえで、それをベースに概要書面を検討することが、スムーズであると思います。

2 概要書面に記載しなければならない事項

特定商取引法上、概要書面に必ず記載しなければならない事項は、契約書面とおおむね同じです。ただし、関連商品に関する事項は、記載する必要がありません。また、料金については、概算額の表示で足ります。

第5章 概要書面や契約書面をオンラインで交付する手続(特定継続的役務提供)

概要書面や契約書面は、これまで紙の書面での交付が義務づけられていましたが、令和5年6月に施行した特定商取引法改正で、新たに、オンライン上でのデータ交付が認められるようになりました。データ交付に当たっては、次のルールを守らなければなりません。

1 契約者への事前の説明

データによって概要書面や契約書面を交付するためには、あらかじめ、契約者からその承諾を得なければなりません。承諾を得る際には、あらかじめ、次の事項を説明しなければなりません。その方法としては、お申し込みフォーム上で、次の説明を分かりやすく表示することが考えられます。

(1) 当社からのご説明・ご確認を受けて、概要書面・契約書面のデータ交付をご承諾いただかない場合は、概要書面・契約書面をデータではなく、書面(紙)で交付します。
(2) 概要書面・契約書面には、特定商取引法でご契約者に表示することが義務づけられている事項が記載されていますので、ご契約者にとって重要なものです。
(3) 契約書面のデータ交付をご承諾いただいた場合は、契約書面を、契約成立後にご契約者のメールアドレスにお送りします。契約書面がご契約者のメールアドレスに到達した後、その日を含めて8日を経過すると、クーリング・オフによってお申し込みを撤回することができなくなります。
(4) 4.5インチ以上の画面サイズのあるPC・スマートフォン・タブレット等を日常的に使用され、これらの機器をご自身で操作してファイルを保存することができる方でない場合は、データによる交付についてご承諾いただくことはできません。この場合は、概要書面・契約書面をデータではなく、書面(紙)で交付します。
(5) 概要書面・契約書面を、PDF形式(バージョンXX)で、ご契約者の指定する電子メールアドレス宛にお送りします。

2 契約者に対する事前の確認事項

1の説明の後、さらに、次の事項を確認しなければなりません。確認の方法としては、確認事項を画面上に表示して、1つ1つ契約者にチェックを求めるようなことが考えられます。

(1) 4.5インチ以上の画面サイズのあるPC・スマートフォン・タブレット等を日常的に使用し、これらの機器を自身で操作してファイルを保存することができること
(2) 当社から交付されたファイルの閲覧に使用する機器には、サポート期間の終了していないブラウザを使用する等、情報セキュリティ対策を実施していること
(3) 契約者以外に対しても電子メールで概要書面・契約書面を送信することが必要な人がいる場合は、その人の電子メールアドレス

3 承諾の手続

承諾の手続は、単に「承諾します」というチェックボックスにチェックを求めるだけではなく、氏名の入力を求める等、能動的な行動を求めなければなりません。

4 承諾を得たことについての文書の交付

承諾を受けた後に、「概要書面・契約書面を電子メールでデータによって交付することを*年*月*日にご承諾いただきました」といった事項を記載した文書を、電子メール等で送らなければなりません。

第6章 通信販売の法律知識

オンライン学習塾は、インターネット上で非対面で契約締結を進めることが一般的ですので、特定継続的役務提供に該当するほか、特定商取引法上の「通信販売」にも該当します。「通信販売」に関する特定商取引法上のルールについては、オンラインビジネスに必要な法律知識を弁護士が徹底解説で詳しく解説しています。

第7章 おわりに

Web Lawyersでは、特定商取引法対応をはじめ、オンラインで新規サービスを展開される事業者様をサポートする様々なプランをご提供しています。初めてのご相談は無料(60分)、全国対応いたしておりますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。

ケーススタディでわかるオンラインサービスのスタート法務

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