コラム

求人情報のスクレイピングと令和4年改正職業安定法について弁護士が解説

弁護士・社会保険労務士 石田 優一

1 求人情報のスクレイピングとは

「スクレイピング」(Webスクレイピング)とは、他社が運営するWebサイトに掲載された情報をクローリングして抽出することをいいます。最近では、様々な求人情報サイトに掲載された求人情報をスクレイピングして、検索しやすい形でユーザーに情報提供するサービスが増えています。

これまで、職業安定法が適用される求人情報サイトは、求人企業からの依頼で情報を掲載するものに限定されていて、求人情報のスクレイピングについては(求人企業からの依頼によらずに情報を掲載することから)職業安定法の適用対象外とされていました。しかし、不正確な求人情報が提供されたり、求職者の個人情報が適切に取り扱われなかったりすることでの問題は、従来型の求人情報サイトでも、求人情報のスクレイピングを利用したサービスにおいても、同様に生じうるものです。

このような観点から、令和4年改正職業安定法により、求人情報のスクレイピングをするサービスについても、従来型の求人情報サイトと同様に、「募集情報等提供事業者」に該当するものとして、新たに規制対象とされることになりました。

また、令和4年改正職業安定法においては、「募集情報等提供事業者」についてのルールが厳格化され、求職者の情報を収集するケースにおける届出制度も新設されています。

2 「募集情報等提供事業」とは

令和4年改正職業安定法においては、次のいずれかに該当する事業は、「募集情報等提供事業」として規制対象になります(同法4条6項)。

(a) 求人者の依頼を受けて求人に関する情報を求職者に提供したり、あるいは、求職者の依頼を受けて求職者に関する情報を求人者に提供したりする事業
(b) 求職者の職業の選択を容易にする目的で求人情報を収集して求職者に提供したり、あるいは、求職情報を求人者の必要とする労働力の確保を容易にすることを目的として収集して求人者に提供したりする事業

このうち、(a)については、従来から「募集情報等提供事業」として職業安定法の規制対象とされていました。今回の改正で、新たに、(b)について、「募集情報等提供事業」に含められることとなりました。(b)は、求人情報・求職情報のスクレイピングを実施して求職者・求人者に提供するサービスを想定しています。

3 令和4年職業安定法改正で「募集情報等提供事業」のルールはどう変わるか

これまで、募集情報等提供事業に対して職業安定法上課せられるルールは、努力義務のみでした。しかし、令和4年職業安定法改正で、新たに、求人情報等の的確な表示、個人情報の適切な取扱い、求職者からの報酬受領の禁止、秘密保持などについて、新たに義務化されることになりました。

また、「労働者になろうとする者に関する情報」を収集して行う募集情報等提供事業については、「特定募集情報等提供事業」として、新たに厚生労働大臣への届出が義務づけられることになりました。

「労働者になろうとする者に関する情報」とは、必ずしも、求職者の個人情報とは限りません。例えば、求職者がどの求人情報を閲覧したかを収集する場合も、「労働者になろうとする者に関する情報」の収集に該当します。

詳細については、人材マッチングサービスを始めるための法律知識を弁護士が解説で詳しく解説していますので、そちらも合わせてお読みください。

4 まとめ

求人情報のスクレイピングを利用したサービスについては、令和4年職業安定法が適用されることに注意が必要です。法的対応にお困りの場合は、Web Lawyersにお問い合わせください。初回無料にて、弁護士がご相談を承ります。

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