コラム

テレワークモデル就業規則のポイントを弁護士が解説

弁護士 石田 優一

第1章 はじめに

1 テレワーク導入のために就業規則の変更は必要か

この度の緊急事態宣言の発令に伴って、急遽、テレワーク(在宅勤務)を導入された企業は、かなりの数に上ります。ただ、緊急事態宣言前にテレワークをあまり活用していなかった企業の多くは、就業規則の変更までは実施せず、これまでの就業規則のままで、テレワークの導入を進めたのではないかと思います。

たしかに、テレワークを導入するために、就業規則を変更することは必須ではありません。テレワークについて就業規則に特別な規定がなくても、企業側が一方的に労働者の就業場所を変更することが就業規則上で可能であるか、あるいは、企業側が労働者に対して在宅勤務を奨励して労働者がそれに応じる(合意する)形をとることによって、テレワークを実施することは可能です。

ただ、テレワーク導入のために就業規則を変更しないことには、特に大きな2つの問題があります。

第1に、オフィスで勤務をする労働者と、テレワークで勤務をする労働者との労働時間・業務遂行の管理を、同じ方法で実施しなければならないことです。しかし、テレワークでは、上司が近くで部下の勤務状況を把握したり、その場で指示を出したりすることができないため、オフィスの場合と同様に労働時間・業務遂行の管理を実施することはやりづらいです。

第2に、テレワーク特有の情報セキュリティに対応することが難しいことです。テレワークの場合、オフィスで仕事をする場合とは様々な環境が異なりますので、テレワーク特有の情報セキュリティ対策が必要です。情報漏えい等の原因になる労働者の行為に対して、就業規則で禁止ルールを明確にしておかなければ、違反者に対して懲戒処分を課することができません。これでは、情報セキュリティ対策が不十分なものになってしまいます。

ですから、テレワークを導入すること自体に必ずしも就業規則の変更は必須ではありませんが、テレワークを円滑・安全に導入するためには、極力、就業規則を変更すべきです。

2 感染症のまん延や震災、台風などの事態に備えてテレワークの導入を

今回、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、多くの企業において、テレワークを導入することを余儀なくされました。このような事態は、決して「今回限りのこと」と考えてはいけません。新型コロナウイルスの感染拡大がいったん収束してから再びまん延する可能性は否定しきれませんし、今後、その他の感染症が国内でまん延することも想定されます。

テレワークを必要とする状況は、それだけではありません。

例えば、オフィスが所在する地域で震災が発生して、オフィス内での業務やオフィスへの通勤が困難になった場合には、復旧までの間、テレワークによって業務を継続することが考えられます。たとえオフィスが全壊したとしても、データをクラウド上で管理していれば、被害を受けなかった労働者がテレワークで業務を継続し、営業損失の発生を防ぐことができます。

また、大型の台風の影響で、一時的に通勤が困難になった労働者に対して、テレワークでの業務を指示することも考えられます。

このように、テレワークを導入することで、様々な緊急事態に備えることができます。

3 就業規則の見直しのタイミングは

感染症や災害がいざ発生した時点で、就業規則をテレワークに対応させようとしても、すぐに実施することはなかなか難しいです。なぜなら、就業規則の変更に当たっては、違法な不利益変更に該当しないかを検討したうえで、労働者側の代表者(あるいは労働組合)の意見を聴取して、労働基準監督署長に届出をしなければならないからです。

就業規則のテレワーク対応は、感染症や災害が実際に発生した後ではなく、むしろ、感染症や災害が発生する前に行うべきです。現時点において就業規則のテレワーク対応を実施していない企業は、ぜひ、緊急事態宣言が解除された後に、就業規則の見直しを検討してください。

なお、就業規則の見直しを専門家に依頼した場合の費用は、働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)の助成対象となりえますので、ご検討ください。


 

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